375:3rdナイトメア7thデイT-4
新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
本日は四話更新となります。
こちらは一話目です。
「今現在の砦の保有数は赤3、白4、黒5。とは言え、黒陣営がブラクロとスクナによって荒らされていて、マトモに対処できなくなっている事を考えれば、ほぼほぼ対等と言うところかしら」
「そうだな。一応は対等だな」
「つまりここからが問題でチュ」
さて、残り時間は10時間ほど。
私たちによって砦を取られた白陣営は復活を終え、態勢を整えた上で、こちらに向かって来ようとしている。
その数は5,000以上、間違ってもたった三人に向ける数ではない。
これほどの数となると、どうやら黒陣営と協定を交わし、自分たちの側に居る赤陣営を倒すまでは、お互いに組織だった攻勢には出ないことを決めたようだ。
まあ、黒陣営とも戦っている余裕がないとも言えるので、前向きにとらえよう。
「ふむ……流石は『光華団』にザリアたちね。私対策を分かっているわ」
「と言うと?」
「邪眼術だけだと手数が足りないようにされたわ」
では、私たちもこちらに集中しよう。
各所に仕掛けた眼球ゴーレムからの情報を見る限り、白陣営は10人から20人程度を一グループとして、塊同士の距離をある程度離した上で、全員一斉にこちらへと突撃しようとしている。
これは私の魅了対策であると同時に『呪法・感染蔓』対策でもある。
こういう配置をされると、一人二人魅了した程度では周りの魅了されていないプレイヤーによって普通に抑えられてしまうし、『呪法・感染蔓』はよくて数グループ巻き込んだところで、次の感染先を見つけられずに停止する事だろう。
うーん、『呪法・感染蔓』を二回も見せたのは失敗だったかもしれない。
「ま、それならそれで手はあるのだけど」
流石に第二回イベントの予選のような火計は仕掛けられない。
この規模のプレイヤーを仕留めるだけの火計を仕込む時間はなかった。
だから別の手を使う。
「ふんっ」
「おおっ、一気に霧が濃くなったな……」
「呪詛濃度24でチュね」
私はネズミゴーレムを介してクカタチたちに連絡をした上で、今回のイベントマップ全域に広げていた呪詛を、私の呪詛支配領域に集める。
そうして出来上がるのは直径2キロメートル、呪詛濃度24の領域で満たされた球体である。
『馬鹿……な……』
『24とか……アホじゃねえのぉ……』
『たわらば!』
ようし、7割方落ちた。
どうやら、呪詛濃度20ぐらいまでなら浄化術や装備などで対処できていたようだが、呪詛濃度24は対処出来る範囲外だったらしい。
そして呪詛濃度24とは、視覚の判定が異形度14のプレイヤーだと50メートル先までしか見えない距離。
視覚の判定が異形度4なら、25メートル先まで。
しかも、これはギリギリ見える距離なので、実際に見えると言えるのはその半分程度。
真っ直ぐ進む事すら困難になるだろう。
だが、コンパスの類を持っているプレイヤーも居るようで、この霧の中でも真っ直ぐに進むプレイヤーたちが居る。
「追加よ」
では、追加要素その一。
原始呪術『風化-活性』によって、私の呪詛支配領域の大気中に存在している風化の呪いを強化。
効果はすぐに表れ始め、砦の城壁の角が削れたり、周囲の草木が枯れたり、霧の中を歩くプレイヤーが異常を感じ始める。
『なんだ、妙に喉が渇くぞ……』
『うおっ!? いきなり武器が……!?』
『急げっ! タルが何かを仕掛けてきているぞ!!』
具体的には耐久度が減っていたアイテムや装備品が壊れたり、喉の渇きを覚えたり、乾燥に弱いプレイヤーに至ってはダメージを受けたりもしているようだ。
「タル。俺にもダメージが来ているんだが……」
「あら、ごめんなさい。ザリチュは……」
「問題ないでチュよ」
私も見える範囲では問題なし。
自分は無意識的に効果の対象外に置いていると言う事だろうか。
とりあえず意識する事で、マントデアも『風化-活性』の効果対象外に置く。
「さてついでに……」
では、マントデアをちゃんと対象外にしたところで、ダメージを加速させよう。
原始呪術『不老不死-活性』の要領で各プレイヤーの『不老不死』の呪いに干渉し、それを抑制する方向で操作。
「っ!?」
「どうした?」
「敵でチュか?」
「いえ、違うわ。まあ、色々と納得がいったわね……」
したが、直ぐに止めた。
理由は単純で、『不老不死』の呪いを抑制し始めた途端に、私の呪詛親和度……レベルあるいは累積経験値が抜け落ちていくような感覚がしたのだ。
≪呪術『不老不死-抑制』を習得しました≫
「……」
習得扱いにもなったが、確認などは後回しで。
とりあえずこれで分かった。
原始呪術を使うと、活性の時点では経験値の取得にマイナスの補正がかかり、抑制までしてしまうと経験値が減っていくのだ。
これは私のレベルアップが遅い原因の一つではありそうだ。
「詳しい事は分からないが、まあ、『七つの大呪』がノーリスクで扱えるわけはねえよな」
「あら、マントデアは知ってたの?」
「一応な。自分の呪いの転写をした石を色々と調べていく内に、アレがヤバいものだと気付いてな。最近になって北の雪山での拠点としてダンジョン経営で色々と弄っている内に……まあ、知った」
「なるほど。ちなみに私は第一回イベントの直後くらいに知ったわ」
「タイミングの差がひでぇ……一月半は差があるって事じゃねえか……」
マントデアが『七つの大呪』について知っていたのはいい事だ。
今後の相談相手が増える。
まあ、それはそれとして、今は目の前の相手に対処しなければいけない。
「ではザリチュ。プランBよ」
「おいそれって……」
「あ、ちゃんと考えた上でのBだから安心するでチュよ」
「ならいいが……」
私たちは砦の各所に移動。
そしてプランBを発動した。
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