374:3rdナイトメア7thデイT-3
本日二話目です
≪砦3-1を赤の陣営が獲得しました≫
「はい、ご苦労様。死に戻りをプレゼントしてあげるわ」
「ぐぬぬ……覚えていなさいよ。タル……」
≪称号『魅了使い』を取得しました≫
私のフレイル……ネツミテを振るい、魅了によって体の制御権が奪われていたプレイヤーたちの頭を吹っ飛ばしていく。
そうしてザリア含めて魅了された全員を倒し、砦内の白陣営が一通り排除されて、赤陣営の物である事が確定したところで一息吐く。
「幾つか質問をいいか?」
「いいわよ。白陣営の反撃は、倒されたプレイヤーの復活、私たちの対策を講じる、それを実行できる状況に持っていく、この砦にやってくる、の四工程を合わせて考えれば、どんなに早くても一時間以上はかかるでしょうから」
「でも単独行動のプレイヤーが仕掛けて来る可能性が高いでチュから、ざりちゅは対処に行って来るでチュ」
で、HPと満腹度の回復を進めておく。
こう言うのはやれる時にやっておかないと、今回のようなイベントだと詰む。
「で、質問は?」
「魅了の延長をしなかった理由は? 与えた魅了の効果時間からして、延長し続けることぐらいは出来ただろう」
「その事ね」
ではマントデアからの質問に答えよう。
「まず単純につまらないから。魅了されたプレイヤーたちの動きには驚かされたけど、あの感じだと回数制限のある呪術とか、消費アイテムを組み合わせて放つ攻撃とかは使えない様だし、それを見れないのは私的には微妙だわ」
「それが第一な辺り、流石と言うか何と言うか……」
「たるうぃだから仕方がないでチュ」
モチベーションの維持と言う意味では重要だろう。
ぶっちゃけると、私が今日までに稼いだポイントの量は交換したいものを全部交換しても残る程度には桁違いなので、今日はポイントよりも欲求を満たす方が重要なのだ。
なお、ザリチュは化身ゴーレムを砦の外に向かわせたが、マントデアとの会話用にネズミゴーレムを残している。
「第二に、今回のイベントの仕様ね。睡眠や魅了、石化と言った強力かつ長時間の拘束が可能な状態異常はイベント全体でスタックさせられる量が制限されているのよ。普通のプレイヤーにとっては問題のない仕様なんだけど、私の使う魅了になるとね」
「ああなるほど。此処で延長してしまうと、この先もう一度という手が使えなくなるのか」
「そういう事。強力なプレイヤーへの魅了は切り札になるから大切にしないといけないわ」
この仕様については妥当だと思う。
魅了状態になったプレイヤーの体はAIが操作するのだが、その状態が今回のイベント中に何十時間もあったら、萎えるどころではないだろう。
ちなみにこのスタックさせられる量の制限については、プレイヤーAがプレイヤーBに対して状態異常Cを付与した量はどのくらい、と言う形で計測されているので、プレイヤーDがプレイヤーBに状態異常Cをかけたり、プレイヤーAがプレイヤーBに対して状態異常Eをかける、などのパターンは別カウント扱いになっている。
なので、理論上は七日間拘束し続ける事も不可能ではないように思えるが……そうなると今度は普段から存在している状態異常のスタック値やかかっていた時間、かけられた回数に合わせて上昇する耐性で防がれるようになるので、まあ、現実的には無理なのだろう。
「二つ目の質問、空を飛んで攻撃し続けないのは?」
「それもつまらないからがメインね。まあ、空を飛んで地上の爆撃だけをしていたら、此処の運営の事だから、何かしらのペナルティが飛んできそうな気もすると言うのもあるけど」
「人によっては舐めプとか言われそうだな」
「私が地上に居続ける事を舐めプだなんていう奴は、何をしても文句を付けて来るわよ」
勿論、つまらないと言うのは、未知の攻撃が飛んでこないからつまらないと言う意味である。
文句があるなら、私が飛ばざるを得ない状況に追い込んでから言ってほしい。
「じゃあ次の質問だが、俺と組んだのはドージ対策か?」
「正確には浄化術対策ね。周囲の呪詛濃度を把握していれば、浄化術の使い手を把握する事は難しくない。けれど、何時来るかが分かっても、攻撃が呪詛濃度に依存している私だとどうしても相性が悪いのよね」
浄化術対策は私には必須だ。
で、対処するならマントデア、ブラクロ、スクナの誰かに任せるのが早いのだが、それぞれの相性を考えると、マントデアと私で組むのが都合がいいのだ。
「それと。ざりちゅ対策なのかチラホラと水を持っているプレイヤーも見かけるんでチュよねぇ」
「あら、大丈夫なの?」
「この程度の連中に液体を浴びらせるほどざりちゅの動きは悪くないでチュよ。まあ、やられても作り直すだけでチュけど。で、話を戻すと、液体持ちへの有効な攻撃手段って昔から決まっているでチュよね」
「なるほど。電気か」
なにせ、マントデアは電気を使える。
電気を使えると言う事は、ザリチュが苦手とする水対策にもなると言う事だ。
呪いが関わっている以上、不純物があるのに絶縁されている水なんてものもあり得るかもしれないが、それは流石にピンポイントなので、別に対処を考えればいいだろう。
なお、床が水浸しになっていて、そこを強烈な電気が通っても、私は宙に浮いているので影響は少なく、化身ゴーレムは砂の体なので感電とは無縁であり、マントデアが遠慮なく電撃を撃てると言う意味でも相性はいい。
「とまあ、こういう理由で私とマントデアで組んだのよ」
「他にも最初の投擲とか、立ち回りとかの都合もあるでチュけどね」
「なるほどな……」
さて、マントデアに納得してもらえたところで、ちょっと他の赤陣営メンバーの様子を見てみるか。
えーと、アイムさんは順調に撃退中。
クカタチとレライエは奪取した川上の砦で工作中であり、もう間もなく施工完了。
ブラクロとスクナは……うん、砦を無視して暴れ回っている。
どれぐらい暴れ回っているかと言えば、平原で千人以上の黒陣営を薙ぎ払っているのだが、疲れる様子もダメージを受けている様子も見られない。
あの二人の相性がいいと思っていたからこそ、私とマントデアで組んだ面もあったのだが……これ、黒陣営は対処できるのだろうか?
敵ながら心配になってくる。
「さて、そろそろ動きましょうか」
「そうだな。そうするか」
では、白陣営の砦で復活したザリアたちが何かをし始めたようなので、こちらも次に備えるとしよう。
これにて今年の更新は終わりとなります。
一年間ありがとうございました。
来年も『CNP』をよろしくお願いします。
良いお年を。