367:3rdナイトメア6thデイ-2
ザリア視点です
「腹減った……」
「メシィ……メシをくれぇ……」
「満腹度がヤベえよう……」
私たちは食料確保に向けて動き出した。
動き出したが……正直厳しい。
そもそもとして今回のイベントでは野生動物が居ないので、狩猟によって食料を得ることが出来ないのだ。
農業はタルによって潰されてしまった。
となると残りは採取なのだが……穀物や果実の類は見られず、雑草しか見当たらない。
「草食うか? モグモグ」
「自分は人間なので雑草は無理です……」
「俺、犬だから草は消化できないなぁ……」
「くっ、こういう時に草食動物系って強いよな」
牛頭のプレイヤーが適当に雑草を食べて、反芻をしている。
どうやら草食動物としての能力を呪いによって得ているプレイヤーならば、今の状況でも満腹度に問題を来たさないようだ。
なお、彼は既に自分の手持ち食料の中で普通の物は他プレイヤーに渡している。
「ああ、光が美味い……植物って素晴らしいな」
「お前果実とか実らせられないのか?」
「それは無理」
「そう言えばザリアさんは光合成出来るんですか?」
「一応出来るわ。ただ、満腹度の消費を1割から2割程度抑えられるぐらいね」
満腹度消費が抑えられているプレイヤーの中には、私を含めて植物系の能力を得ているプレイヤーも居る。
ただ、どの程度抑えられるかは個人差が大きく、食事不要のプレイヤーから、私のように消費が少なくて済む程度までで幅広い。
「調子はどうですか?」
「おっ、ゾンビ馬。そう言えばゾンビでも肉なんだから……」
「私のゾンビを食ったら確実に腹を壊して、よくても満腹度減るけど?」
「デスヨネー」
あ、運搬人員のネクロマンサーの人が来た。
まあ、ゾンビ馬を食うのは無理だろう。
見た目上は何の問題もないように見えるが、実際には有毒物の塊だろうから。
「……。こうなったらもうマトモかどうかとか気にしているわけにはいかないかもね」
「つまり?」
「木の皮、植物の葉っぱ、草、球根、とにかくこの辺をかき集めて、まとめて煮ましょう。プレイヤーは不老不死の呪い持ちなんだから、腹を壊しても死ぬだけで済むわ」
うん、草の根をかき分けてもマトモな食べ物は見つからない。
だったら、もうマトモな食べ物を食べる事を諦めた方が早い。
「マジか……」
「正気かよ……」
「ザリア隊長もタルの友人なんだなって……」
「いやでもほら、ヨモギっぽい植物とかもあるし、何とかなるんじゃね?」
「よし、せめて山菜とか新芽っぽいのとかを探そう。出来る努力はするべきだ」
と言うわけで、元が柔らかく、煮れば食べれそうなものを中心に掻き集めて行く事にした。
味とかはもう度外視する。
「草うまー」
「光うまー」
「土うまー」
「鉱物食まで居るのかよCNP!?」
「チクショウ、今ばかりは肉食主体の体が恨めしい……」
その上で普通の食事が必要ないプレイヤーには、それで今を凌いでもらおう。
それとだ。
「とりあえずアレよ。満足に食事をとれなかった怨みは最終日に敵にぶつけましょう。その方が色々と前向きだもの」
「うすっ」
「だなっ」
「おうっ」
幸いと言うべきか、怒りのぶつけ先は明確に存在している。
そう、こうなった原因はタルにあるので、タルにぶつければいいのだ。
タルが食事に毒を混ぜなければ、食糧庫に火を点けなければ、と言う話なのだ。
まあ、もう少し私たちが警戒しておけばと言われたらそれまでかもしれないが。
「ん? あれ?」
さて、そろそろ喉が渇くだろうから水を……ん?
「どうかしましたか?」
「……。ねえ、全員に確認なんだけど、今日の満腹度消費のペースってどうなってる?」
「……。異常なし……いや、少ないか?」
「昨日までより少ないな」
「そうだな。飯が少なくて回復もしてないからアレだが、消費量自体はそんなに……」
私は嫌な予感がしたので、草刈りをしている他のプレイヤーへ少し確認を取る事にした。
結果は少ないと言う返答。
「今日の草刈りって戦闘より楽ではあるでしょうけど、はるかに楽?」
「「「……」」」
「まさか……」
満腹度の消費は激しい戦闘をすれば、呪術に伴う消費を除いても、激しい分だけ早く消費する。
だが、戦闘と寝続けるのを比べるならばともかく、戦闘と草刈りでそこまで差が出るものなのだろうか?
「満腹度への直接攻撃が何処かでされていた?」
「消費を早める攻撃とか?」
「いやいや、いくら何でも突飛すぎるだろ」
「そうだぞ。流石にこれは疑心暗鬼の類だって」
「でも、やったとしたら、下手人はあのタルだぞ」
「「「……」」」
掲示板を使って検証班に確認をしてみる。
返信はすぐにあった。
どうやらイベントだからと満腹度の消費が激しくなる仕様はないらしい。
が、それだけだと計算が合わないのが判明したらしく……現在確認中との事。
「タルの掌の上過ぎて泣けてきた……」
「これもう初日からタル本人も何か仕掛けてただろ……」
「タルが黒幕過ぎて何も言えねぇ……」
「……。困った時はだいたいタルのせいか」
「あながち間違いでもないから猶更ツラい……」
頭が痛くなってきた。
本当に今回のイベント、白、黒、赤の三陣営でバランスが取れていたのだろうか?
未だに直接戦闘はしていないとは言え、タル一人だけで他の全プレイヤーの相手を出来ているのではなかろうか……。
「そう言えばタルさんって今は……」
「タルの事だからたぶん今も私たちの事を見ているわね。その上で、赤陣営の……そうね、ブラクロ辺りはこんなことを言っているんじゃないかしら? 『パンがなければケーキを食べればいいじゃないか』とか」
こうなってくると、果たして、明日の私たちはタルたちとマトモに戦うことが出来るのだろうか?
もはや不安しかないのが本音である。




