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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
6章:『呪われた戦場の悪夢』
360/1000

360:3rdナイトメア4thデイ-3

ザリア視点です

「せいっ!」

「ぐおおっ!」

 私の細剣が黒陣営のプレイヤーの短剣を押しのけて胸を貫き、仕留める。

 だが、その代償として突きが終わると同時に、私の細剣は根元から折れてしまった。


「ザリアさん」

「大丈夫よ。予備の武器は一応用意しておいたから」

 こうなってしまったら、修理にはDCだけではなく素材も必要になる。

 黒陣営の奇襲を退ける事に成功したら、生産職に頼んで、修理をしてもらおう。

 いや、使う材料の量と質を考えたら、いっそイベント後に新調してしまうのもありだろうか?

 予備の武器もイベントすら乗り切れない程弱いわけではないし。

 とりあえずインベントリから予備の細剣を取り出して、腰に提げておく。


「アカバベナさん戦闘は?」

「はっきり言って苦手ですね。私はバックアップ専門で、情報の精査、各種アイテムの取引が専門です。戦闘は使い捨てのアイテムによる後方支援が精々です」

「分かったわ。なら、私の後ろに居て」

「分かりました」

 私はアカバベナさんを連れて、白の本営の中を走っていく。

 基本は戦闘音がする方へ、ただし、通路の角や扉の前などの不意打ちが想定される場所では、相応の動きをしてクリアリングをしていく。


「それにしても黒陣営も思い切ったものね。川の上にある中央砦三つを捨てて、その隙に白の本営へ奇襲を仕掛けるだなんて」

「ですが、戦略的には常道な部類に入るとは思います。要するに、敵の戦力を前線に引きつけつつ、大将首を奇襲で狙う。と言うものですから」

「ちなみにこっちの戦力は?」

「最低限は残してあります。なので、団長の位置が割れていて、最初からそこへ全兵力を投入。団長を仕留めると言う流れでなければ、最終的には競り勝てるかと」

「なるほど」

 アカバベナさんの言葉が正しいことを示すように、剣戟の音は徐々に大きくなりつつも、発生している場所の数自体は減っているような気がする。

 と、白と黒のプレイヤーが戦っている場所に来たので、黒陣営のプレイヤーを後ろから不意打ち。

 頚部切断によって即死させる。


「予想される被害で深刻なのは、むしろ非戦闘系プレイヤーへのショックかもしれません」

「攻撃されると思ってなかった生産職が被害を受ける。か。確かにショックは大きいかもしれないわね」

「本当はここに食料や資材への被害もあるのでしょうが……」

「そっちはタルのせいで、被害を受ける先が元から無い、と」

 その後も私はアカバベナさんを連れたまま、白の本営中を駆け回り、潜伏を試みていたものも含めて、黒陣営を片っ端から切り伏せていく。


「さて、気になるのは二点ね」

「侵入経路と侵入方法ですね」

「ええ、その二つが分からないと、何度だって同じことが起きるわ」

 やがて前線からの死に戻り組が本営の状況を察してくれたのか、私の後ろに続くプレイヤーの数が増えていき、状況は白陣営の側に大きく傾いていく。

 この時点で私は自分の行動方針を、敵の発見と迎撃ではなく、敵がどうやって来たのかを調査する方向に切り替えた。

 勿論、敵を発見したら切り殺すので、正門の上で門の開閉装置に小細工をしようとした黒陣営は即座に切り伏せた。


「此処が敵の侵入経路ね」

「まさか地下道とは……でもどうやって……」

 私たちが見つけた敵の侵入経路は、地下の倉庫の片隅に掘られた小さな穴だった。


「そう言えば黒陣営にはアルマと言う戦場の環境を整えるのに特化したプレイヤーが居たわね。それと同系統の呪術を使えるプレイヤーが複数人居て、協力し合えばこういう事も出来るんじゃないかしら」

「なるほど……これは完全に私たちの手落ちですね」

 穴は小さく、普通のプレイヤー一人がやっと通れるくらいだったが、床面の凹凸が極めて少なかったりと、出来はとても良いものだった。

 穴の先は白の本営近くの藪の中であり、藪の外からでは確認できず、踏み込んでもそう簡単には分からないように偽装工作も施されていた。

 きっと穴を掘ったプレイヤーは初日の時点で此処に辿り着き、今日までに掘り抜いて見せたのだろう。

 見事としか言いようがない。


「……。と言うかタルはこれを知っていたと言う事よね。あのタイミングで教えてきたと言う事は」

「後で団長に秘匿するべき情報がどうなっているのかの確認をしておきます」

 なお、こうして見事な掘削と隠蔽の技術を見せられたからこそ、タルの恐ろしさは更に際立つ。

 と言うか、今回の黒陣営の奇襲はタルが裏で糸を引いていて、私を向かわせる事でどちらにも被害を出すと言う感じのマッチポンプを画策した物なのでは……いや、流石に考え過ぎだろう。

 考え過ぎと言う事にしておこう。

 こちらの作戦も筒抜けになっている可能性が高いので、警戒は必須だが。


「穴埋めのためにもとりあえず戻りましょうか」

「そう……」

 なんにせよ、まずはこの穴の処分から。

 そう考えた私たちは白の本営から穴の警備をするプレイヤーが来るのを待って、白の本営に戻ろうと考えた。

 だがその時だった。

 爆音が二か所から響いてきた。


「門が……」

「くっ、やられたわね……」

 一か所目は白の本営の正門からで、門が内側から爆発によって吹き飛ばされていた。

 どうやら黒陣営の中に爆発を扱えるプレイヤーが居て、止められなかったようだ。


「「!?」」

 そしてもう一つは北西の方角から、つまり北の山の方から聞こえてきた……いや、響いて来たと言うのが正解だった。

 猛烈な振動を伴い、まるで地震のようだった。

 そして何が起きたのかと言えば……。


「き、北の山の方から報告がありました……。北の山全体が崩落したそうです……」

「天変地異ってどういう事なのよ……」

 聞いた自分の耳を疑うような出来事だった。

12/19誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[一言] 北の山全体が崩落ww なお十中八九タルが原因。 これって下手したら1万人以上のプレイヤーが崩落に巻き込まれてタルのポイントなったんじゃないかな。
[一言] やったぞ!さしものタルも生き埋めにあっては生きられまい!(フラグ)
[一言] >「攻撃されると思ってなかった生産職が被害を受ける。か。確かにショックは大きいかもしれないわね」 逆に考えるんだ。タルに襲撃されなかっただけまだマシだと考えるんだ(手段次第でSAN値直葬なの…
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