358:3rdナイトメア4thデイT-1
タル視点です
『チュアッハァッ! 弱い! 弱いでチュよう!!』
さて、ザリチュが新たに習得した渇砂操作術・『化身』の性能と、『化身』によって作られる化身ゴーレムの性能は鑑定したところこんな感じだった。
△△△△△
『化身』
レベル:20
干渉力:110
CT:600s-60s
トリガー:[詠唱キー]
効果:周囲の砂を操って化身型ゴーレムを一体作成する。
ザリチュの化身となるゴーレムを作成する。
ゴーレムの性能は着用者のステータスに依存する。
装備品を身に着ける事が可能であり、身に着けた装備品はゴーレムが破棄された際に一緒に消え、次回ゴーレム作成時に一緒に生み出される。
注意:CTはザリチュが処理するが、トリガーは着用者が引く必要がある。
注意:使用する度に着用者に最大HP低下(最大HPの30%)、最大満腹度低下(最大満腹度の30%)、干渉力低下(最大干渉力の10%)が付与される。この効果で付与された状態異常はこのゴーレムが存在する限り、スタック値が減少しない。
注意:このゴーレムはザリチュにしか操れない。
注意:このゴーレムは2体以上同時に存在できない。
▽▽▽▽▽
△△△△△
『化身』ゴーレム レベル24
HP:30,750/30,750
有効:無し
耐性:毒、灼熱、沈黙、出血、小人、干渉力低下、乾燥、魅了、石化
▽▽▽▽▽
『ギャアアァァッ!?』
『何だこの強さは!?』
『糞がぁ!? 8人目なんて聞いてねえぞ!?』
『違う! 8人目じゃなくてゴ……ビギャアッ!?』
性能を簡単にまとめてしまうなら、私の最大HPの50%を持つ上に耐性が割とガチガチな近接戦闘向けゴーレムを召喚して、色々とやれる、と言うところか。
なお、今の化身ゴーレムが身に着けている装備品は化身ゴーレムの為にイベント前に作ったアイテムで、剣と盾は言わずもがな、包帯服も私が使っている物には劣るが、それなりの品である。
今回は時間が足りなかったので包帯服だが……能力拡張のためにも、ズワムの素材を扱えるようになったら、もう少しきちんとした防具を作ってあげたいところだ。
ちなみに手足の毛皮はデフォルトで化身ゴーレムについているものである。
『せいっ!』
『当たらないでチュよ!』
では、肝心の化身ゴーレムの働きは?
化身ゴーレムとザリアたちが戦っている広間には十数体の眼球ゴーレムが仕込まれており、その目を介して私は現場を見ているのだが、一言で化身ゴーレムの働きをまとめればこうなるだろう。
凄まじい。
『ぎゃあっ!?』
『ぐげえっ!?』
『ウォ……ピギャッ!?』
『ど、毒が!? 近づいただけで毒が!?』
まず攻撃力。
剣を振るえば、鎧兜の隙間に差し込んで、的確に命を奪い取っていく。
盾を振るえば、相手の武器を吹き飛ばし、兜の上から意識を奪い、隙が生み出される。
尻尾が動けば、体の細い部分に絡みついて引き倒される。
蹴りが放たれれば、全身金属鎧のプレイヤーすら吹き飛んでいく。
おまけに体は飢渇の毒砂製なので、接近戦を挑めば剣に触れるまでもなく毒状態行きだ。
『畜生! 攻撃が当たらねぇ!?』
『この、ちょこまかと……』
『空中ジャンプ!?』
『違う! 背中の翼だ!!』
次に防御。
そもそもゴーレムで、倒されたところでこちらの損失がほぼない時点で最強に近い気もするが、それはさておきだ。
ネズミ特有の小回りの良さ、私が眼球ゴーレムを利用して集めて整理した情報、盾による攻撃を反らす防御、背中の翼による空中挙動、こう言った物に加えて、そう簡単には分からないようにだが、体が砂であることを生かしたスライドや関節の動きによって、殆ど被弾らしい被弾はない。
『ははは! この程度でカースとやり合おうなんて甘いんでチュよお!』
『くっ……』
『なんだよ、この無理ゲーは!?』
『来るな! 敵が強すぎる! 来るんじゃ……ギャアアアッ!!』
で、実を言えばだ。
私が持っている情報の殆どはザリチュも持っている。
それはつまり、私が今回のイベント中に見た、ザリア、スクナ、ブラクロ、マントデア、クカタチ、レライエ、I'mBox、熊です、オンドリア、マナブ、ヨシバル、マトチ、アルマ、おっくん、ストラスさんたち検証班、ライトリたち『光華団』、エギアズ・1たち『エギアズ』、その他見るべきものがあったプレイヤーたちの動き方は大体見ていると言う事。
そして、AIであるザリチュならば、原理の類がしっかりと分かっていて、思ったとおりに動かせる体さえあれば、私と違ってそれらの動きを再現する事は難しくはない。
「私が言うのもなんだけど、HPに超強化が入っている状態での化身ゴーレムは無茶苦茶な強さよねぇ……」
要するに、化身ゴーレムはHPこそ少々少ないが、他の赤陣営メンバーと同じくらいの強さを持っていると言う事だ。
『でも、このHPでも弱点を突かれたら一瞬でチュから、ざりちゅは内心ハラハラ物でチュよ。ぶっちゃけ』
「そういう化身ゴーレムは元気満々だけど?」
『半分以上のプレイヤーが呪詛濃度対策をしているから、はったりの一つでもかまさないと詰むんでチュよ』
「まあ、数で押し潰されるのは流石にきついわよね」
それにしても、私が呪詛濃度を18に上げた程度で呪詛濃度過多になり、倒れているプレイヤーは何がしたかったのだろうか?
私でなくとも、カースと戦うなら呪詛濃度20くらいの空間で戦う事を想定して欲しいのだけれど。
おっと、広間に仕込んであるネズミゴーレムの口を上手く動かして、次の犠牲者を呼び込むか。
「さて、何処まで稼げるかしらね?」
『そろそろ向こうも騒がしくなってくると思うんでチュけどねぇ。一度休みたいでチュ』
私は眼球ゴーレムを介して『気絶の邪眼・1』を使い、水や冷気を生み出す呪術を使おうとしたプレイヤーを潰しつつ、此処ではない別の戦場へと目を向ける。
なにせ、私の方へこれだけのプレイヤーが集まっていると言う事は、砦はそれだけ手薄になっていると言う事なのだから。