347:3rdナイトメア2ndデイ-4
ザリア視点です
「……!」
「回れ!」
正面から切りかかった私に向けてレライエが矢を放とうとする。
が、矢を放つ直前にカゼノマの呪術が発動し、レライエの体は見当違いの方向を向かされ、矢は遥か彼方に飛んでいく。
「せいっ!」
「おらぁ!」
「むんっ!」
「……!?」
その隙を突く形で私が切りつけ、おっくんが大剣を振るい、ロックオがシールドバッシュを仕掛け、崖に叩きつける。
普通のプレイヤーならこれで終わりだが、HPが大きく強化されている赤陣営相手ではトドメにはまだ遠い。
「咲き誇りなさい……!」
「……!?」
だから私は素早く接近すると、細剣の刃に呪術を乗せつつレライエを切り裂く。
刃が相手の体の中にある間に細剣の刃に乗っている呪詛を操作して、注ぎ込んでいく。
使っている呪術は斬撃に合わせて出血を付与する『咲けよ血の花』、合わせるのはその効果を十全に引き出すための『呪法・全注入』。
「『咲けよ血の花』……っ!?」
「チュウ」
そして付与した出血にボーナスを乗せた上で発動させる最後の一撃をレライエに放とうとした時だった。
レライエの懐に居た何かが紅色の光を放ち、その光を浴びた私は全身が燃え上がり、呪術も強制中断される。
火炎属性のダメージと共に表示された状態異常は灼熱。
「……」
「させん!」
「おらぁ!」
レライエの反撃はロックオが防いでくれた。
おっくんが攻撃を仕掛ける事でレライエの追撃を防ぎつつ、出血を起爆させ、大ダメージを与える。
「ザリアさん!」
「懐に何か居るわ! たぶんタルの仕込みよ!」
「……」
私の叫びにレライエが不機嫌そうな顔をしつつも、懐からそれ……紅色の目をしたネズミを出すと、肩に乗せる。
それはまるで、タルは関係なく、自分自身の力で得たものだと言っているようだった。
いや、今はレライエの思惑はいい。
「テイムモンスターだと!?」
「まさかのですね……」
問題はレライエが推定灼熱の邪眼持ちのネズミを連れていて、協力してくる事だ。
灼熱だけなら手数が倍に増えても問題はないだろうが、それ以外もやられると厄介なことになる。
「クールタイムが明けるよりも先に仕留めるわよ!」
「言われなくても!」
「……」
「チュウ」
私とおっくんが同時に突っ込む。
レライエは背中側の崖に向かって跳び、ネズミはレライエから離れて森の中へ消えようとする。
「土の檻よ!」
「チュアッ!?」
「……。くっ」
が、ネズミはアルマが生み出した土の杭にはね上げられ、そこにアルマの斧が叩き込まれてレライエの方へと吹き飛ばされる。
「ふん……ぐぼっ!?」
「ダウンバースト!」
レライエは三本目の足を使って、崖を蹴る事で大きく跳び上がろうとしたが、カゼノマの呪術によって強制的に叩き落される。
「せいっ!」
「おらぁ!」
私たちの攻撃がレライエに向かって振り下ろされるが、レライエは素早く転がる事によっておっくんの攻撃は回避し、私の細剣は浅めにしか入らなかった。
「くそっ……!?」
「沈黙再付与!」
「回復します!」
跳ねるように立ち上がったレライエに私の針が刺さり、一度切れた沈黙が再度付与される。
ネズミは……見当たらない。
今の一連の動きの何処かで逃げられてしまったようだ。
反撃の矢は私の脇腹を掠め、シロホワが素早く回復してくれる。
「急ぐわよ!」
「言われなくとも!」
「おうっ……」
「逃げ場は与えません!」
「即死だけはしないようにお願いします!」
「支援はお任せを!」
「……!? ……」
6対2と言う数の差、アルマによってもたらされる地の利、カゼノマによる大技潰し、シロホワの回復、そして私たち前衛三人による攻撃と防御。
ネズミによる妨害は最後まで潰せなかったが、こうなってしまえばもう大局は覆らない。
強化が入っていても、決着がつくまでにかかる時間はそう長いものではなかった。
「……。無念……」
「全員逃げなさい!」
「当たり前のように自爆しないでくださいよ!」
「ああこれが噂の……」
が、最後の手榴弾による自爆と燃える程に熱い黒煙の展開は防げなかった。
こうなってくると、赤陣営は最後の行動……ラストアクションの類が保証されているのかもしれない。
後で掲示板に上げておくとしよう。
≪赤の陣営、レライエが討伐されました。赤の陣営のプレイヤーが復活できるのは72時間以上経過後、一回だけです≫
「ふぅ、討伐完了だな。助かったわ」
「こちらこそです。いい火力と支援でした」
アナウンスが流れ、おっくんとカゼノマが握手を交わす。
「で、いい話として終わらせたいから、俺らとしては出来ればやり合いたくないんだが……」
「どうします? ザリア」
「いいんじゃないかしら。流石にここでの戦闘は無粋でしょ」
「助かります」
その後の戦闘もなし。
うん、これは奇麗な話で終わらせることが出来そうだ。
私がそう思った時だった。
「じゃあ、俺らはこれで失礼……」
おっくんが足を動かすと共に、カチリ、と言う音がおっくんの足元から響いた。
この場に居る全員の視線が音源である、地面に半分埋められた円盤状の物体へと向けられる。
直後。
「悪い。やっちまったわ」
「事故みたいなものよ……」
大爆発が起きて、私たち六人は見事に死に戻りした。
昨日のブラクロを倒した時も自爆に巻き込まれたし、私は爆発オチの何かに憑かれているのだろうか……?
いや、憑かれているのはむしろ赤陣営かもしれない。
赤陣営関係でばかり、こういう事になっているのだから。




