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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
6章:『呪われた戦場の悪夢』
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346:3rdナイトメア2ndデイ-3

「……。強いな」

「そうですね。流石は赤陣営と言うべきでしょうか」

「黒陣営も狩ってくれているのが幸いね」

 レライエ。

 赤陣営のプレイヤーであり、『CNP』では極めて珍しい超長距離狙撃を用いるプレイヤー。

 基本的にはソロで行動しており、私たちの記憶の中で彼の活動を見た覚えがあるのは、第二回イベントの本戦でタルと戦った姿くらいだろうか。


「残りは……6人くらいですか?」

「そうね。私、カゼノマ、ロックオ、シロホワ、それに野良の二人だけね」

「ういっす。肉盾一号っす」

「肉盾二号ですわ。まあ、このクラスだと肉盾になれるかも怪しいが」

 戦った感想としては……強い、としか言いようがない。

 詳しく述べるなら、レライエは姿を見せず、僅かな風切り音しかしない必殺の攻撃を、森の中であるにもかかわらず、こちらへと正確に撃ち込んでくる。

 そして、狙撃を受けて、矢が飛んできた方向に向かっても、レライエは既に姿を隠している。

 気が付けば、私たちは大きな被害を受けていた。


「いや、アンタらだけじゃないぞ」

「誰?」

「く、黒陣営です。でも、敵意はないです」

 と、木の陰に隠れ、周囲の様子を窺う私たちに声をかけてきたプレイヤーが二人、頭から角を生やした男女で、男性は全身金属鎧に大剣持ち、女性は全身入れ墨で斧持ち、何処かで顔を見た覚えが……ああ、第二回イベントの予選におけるタル被害者の会だ。

 確か名前はおっくんとアルマだったか。


「単刀直入に言う。赤陣営のレライエを倒すまで、互いに攻撃しないと言う約定を交わしたい。地の利を得た赤陣営は、黒と白で争っている状態で倒せるとは思えないんでな」

「互いに攻撃しない、ね。いいわ。受け入れましょう。レライエを倒すメリットは色々とあるわけだし」

≪赤の陣営、クカタチが討伐されました。赤の陣営のプレイヤーが復活できるのは72時間以上経過後、一回だけです≫

 おっくんの提案を私が受け入れている間に、クカタチが討伐されたと言うアナウンスが流れた。

 マナブが上手くやったのは確かとして、さて何処で倒されたのやら。

 まあ今はレライエだ。

 レライエを倒せば、北の山経由での裏取りが出来るようになる。

 それは黒陣営にとってもメリットだが、白陣営にとってもメリットだ。


「うおっと!」

「……!」

「一体どうやったら二本の矢が同時に着弾するのやら……」

 と、ここでおっくんが大剣を盾のように構えて、何処かからか飛んできた矢を防ぐ。

 同時に、山なりの軌道を描いて飛んできた別の矢をロックオが盾で防いだ。

 そして二人によって防がれた矢は、地面に落ちると同時に葉のついた木の枝に変化した。

 これについては、恐らくだがレライエが周囲の物質から簡易の矢を作れる呪術を保有しているのだと思う。

 二本の矢が同時に着弾するのは……たぶんレライエ個人の技能だろう。

 赤陣営の他メンバーを考えると、それくらいは出来ても不思議ではない。


「さて、ここで素直に追っても追いつけないんだよな……」

「あまり先に進み過ぎると、大量の罠がお出迎えってのも厄介な話だよね」

 おっくんとアルマの言う事は正しい。

 ここで追って追いつけるなら、さっきまでの私たちが追いつけている。

 罠については白陣営の北の山攻略班による掲示板への書き込みで、山の中心に進むにつれて罠が仕掛けられている場所が増えると言うのはあったはず。

 レライエが罠を仕掛けているのだと思うが……迂闊には動けない。


「ザリア。次の横撃ちに合わせて仕掛けましょう」

「……。分かったわ」

 だが、何時までも此処で足止めをされているわけにはいかない。

 中央北砦の戦いはそれなりに拮抗していると言う話だし、出来ればそちらにも行きたい。


「……!」

「うおっ!?」

「うぐっ!?」

 三本の矢が全く同時に地面と水平に飛んできた。

 二本は防ぐことに成功したが、防げなかった一本は私たちの仲間の一人の腹に突き刺さり、彼はそのまま死に戻りしてしまった。


「風よ! 彼のものを守り給え! ワールウィンド!」

「土よ! 駆ける道を生み出せ! ペイヴメント!」

 同時に私が木の陰から飛び出し、カゼノマが遠距離攻撃から身を守るための呪術を発動。

 合わせて、アルマが地面に斧の刃を叩きつけて、矢の出所に向かってまっすぐ伸びる上に舗装された道を生み出す。

 いい呪術だ、そんなことを思いつつ、私はその道に乗ると、全力で駆け出す。


「居たっ!」

「……」

 レライエから撃たれた矢が風によって逸れていくのを認識しつつ駆ける事100メートルほど。

 カゼノマの呪術が切れたタイミングで、私は森の中に姿を眩ませようとしているレライエの姿を目撃。


「見える距離で受けるものですか!」

「ちっ」

 目撃されたことで逃げるのを諦めたのか、レライエは私に向かって矢を射る。

 が、不意打ちされたならともかく、真正面から撃たれたなら、一発二発ぐらいは前進しつつ避けられる。


「せいっ!」

「!?」

 十分に距離が詰まったところで先ずは針を投擲。

 命中し、沈黙の状態異常を付与すると同時に、針が光ってその位置を周囲に知らせる。


「さあ、ここからはこっちの番よ」

 そして、見せつけるように細剣を構えて、レライエの注意を引く。


「チュ」

「……」

「ちいっ! あばあぁっ!?」

 が、何かしらの方法で私の仲間の接近を感じ取ったらしい。

 私とは別方向から来た白陣営プレイヤーの攻撃は避けられ、ゼロ距離で頭に撃ちこまれた矢は容易にそのHPを奪い取った。


「だが、追い詰めたのは事実だ」

「そうですね」

「……倒す」

「残り六人だけど、勝たせてもらいます」

「我らに良き戦う場を。バトルフィルド」

「ええ、ここで仕留めさせてもらうわ」

「……」

 しかし、その一人への攻撃の間に、包囲網は完成した。

 私たち六人がレライエの周囲に居るのもそうだが、アルマの呪術によって、レライエの周囲には姿を隠せるだけの大きさを持った岩が幾つも生み出され、地面も平らで安定したものに変化し、木と木の隙間も移動しやすいだけの広さになっている。

 囲えていない方向も切り立った崖となっていて、まず登れないようになっている。

 レライエの持ち味である長距離狙撃も、森への隠密も難しい状況だ。

 本当にいい呪術を持っている。


「行くわよ! 赤陣営レライエ!」

 そうして準備が整ったところで、先ずは私が切りかかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] >タル被害者の会  名誉会長がザリアなら……  ハルワ「あの、なんかこちらに出席するようにいわれてきたのですが?」  聖女ちゃんはきっと名誉顧問かなあ……。 
[一言] ふと思いましたが赤陣営の選考条件に他プレイヤーからのヘイトを気にしない精神性が有りそう。 というか実力以上に重要では?
[一言] >> 「チュ」 他の人の感想を見て、330話で第4階層で行方不明になった子ネズミか?
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