345:3rdナイトメア2ndデイ-2
ザリア視点です
「て、敵だぎゃあああっ!?」
「挽き潰せええぇぇ!」
私たちは道中遭遇したプレイヤーたちを鎧袖一触にしつつ、北上していく。
倒したプレイヤーの中には私たちが出てきた砦に向かっていたであろうプレイヤーも居れば、先ほど中央砦の前で倒した覚えのあるプレイヤーも居た。
うん、これで他の白陣営プレイヤーも少しだけ楽になるだろう。
「アレは……」
「輸送隊だ!」
「うっしゃあっ! 潰せ!!」
そうして北上していき、中央北砦の前にまでやってくると、ちょうど中央北砦から出てきたと思しきプレイヤーの集団が私たちの目の前に居た。
勿論潰す。
いや、他のプレイヤーを無視してでも潰す。
何故ならばだ。
「言われなくても!」
「ひひひ! 一人も見逃さないぜ!」
「……」
私たちの集団の誰かが言っていたが、彼らはまず間違いなく輸送隊だ。
私たちが今後中央北砦を奪取する事に成功しても、資材については最低限しか手に入らないようにするべく、物資の移動をしておくためのプレイヤーたちである。
これについては白陣営も中央砦で既にやっているので、黒陣営もやっていて当然だろう。
「ぎゃあっ!」
「さて、どう動くかしら?」
今回のイベントでは、戦場で倒れたプレイヤーはリアル時間1分後に、味方拠点からリスポーンする。
当然持っていたアイテムもそのままだ。
なので、私たちの行動が輸送の邪魔を出来た事にはならないだろう。
が、ポイントは稼げているので問題はないし、私たちが此処にいるのは意味がある。
「ふむ。黒陣営は……門を開けて、プレイヤーを出してきたな」
「表との連携は?」
「掲示板を見る限りでは出来ています」
中央北砦の黒陣営が表の白陣営ばかりを気にして、私たちを無視するなら好都合。
門を無理やりぶち抜いて、裏取りを仕掛けてやればいい。
そして今回のようにこちらへ兵力を割くのであれば……力の限り暴れるのみである。
「よろしい。では全員、戦えるだけ戦った上で、出来るだけ相手を引きつけつつ、北へと逃げるわよ」
「「「イエッサー!」」」
「……。そこはイエスマムじゃないんですか?」
「「「イエスマム!!」」」
シロホワのツッコミに返事が変わる。
本当にノリがいい。
いい事だ。
「奴らをとっとと潰すぞ!」
「「「おおおおぉぉぉ!!」」」
「突撃ぃ!」
「「「ヒャッハアアァァッ!!」」」
私たちと中央北砦の黒陣営がぶつかり合う。
数はほぼ同数。
実に都合がいい。
私たちの側に戦力が回されれば、それだけ表の白陣営に回せる手が減るのだから。
「ふんっ!」
「ぐばぁっ!?」
私は当たるを幸いに敵を切り裂いていき、とにかく数を減らしていく。
呪術も使って大量の出血を付与、爆破する事で、怯ませもする。
敵の攻撃は避けれるものは避けて、避け切れないものは剣で弾く。
空気が陽炎のように揺らめくのが見える中、私たちは戦い続ける。
「ザリア! 北西砦からの援軍だ!」
「中央北砦からの援軍も来てます!」
「ちっ、退くわよ」
そうして戦っていると、やがて敵の援軍が出て来る。
勿論都合はいい。
黒陣営の戦力が削られていくのだから。
とは言え、流石に数が多いし、こちらの戦力は削られてきて、残り30人ほどだ。
これで援軍とマトモにやり合ったら、時間も稼げない。
「逃がすな! 追え!」
「此処までやられて黙っていられるか!」
「ヒャッハァ! にっげろおぉ!」
だから私たちは躊躇いなく逃げだし、北の山へ向かっていく。
だがただ逃げるのではなく、私は針で、カゼノマは風で、他プレイヤーたちも遠距離攻撃を持っているなら撃ち込んで、嫌がらせをしつつ逃げ出す。
川沿いを駆けていき、付かず離れずを保って、人数を減らしつつも距離を稼いでいく。
「さあて、こっちに居るといいのだけど……」
「入れ食いだぁ!」
「「「ギャアアァァッ!?」」」
「ビンゴ」
と、ここで川から鮫型のスライムが出てきて、黒陣営に襲い掛かる。
赤陣営のクカタチだ。
「お姉ちゃんたちにも襲い掛かるけどね!」
「でしょうね!」
クカタチはこちらにも、触手のような物を伸ばして攻撃を仕掛けてくる。
が、これについては私が剣で弾くことによって、防ぎ、距離を取る。
「クカタチそこまでだ!」
「おっ、マナブだ」
黒陣営のマナブが到着。
クカタチへ攻撃を仕掛ける。
よし、クカタチへの対処はマナブに任せよう。
どうにもクカタチ対策を考えたメンバーで来ているようだし、どちらが勝つにしても私たちは困らない。
「それにしてもクカタチが北側に、ねぇ」
北の山のふもとにある森の中に入った私たちは、そこまで熱心に追いかけてきてくれた少数の追っ手を退けると、そこで一時休憩を取る。
気が付けば満腹度は大きく減り、装備品の耐久度は大きく減っていた。
私自身は気が付いていなかったが、どうやら今日の戦いは昨日よりも遥かに激しいものであったらしい。
死に戻りしたら、補給が必要になりそうだ。
「それがどうした?」
「いえ、もしかしたらなんだけど、この北の山の何処かに赤陣営の拠点があるんじゃないかと思ったのよ」
「それは……あり得るだろうな。赤陣営の拠点が一つもないと言うのは考えづらい」
残りのメンバーは……18人ほどで、全員疲れているようだ。
いつものメンバーは残っているから、連携は何とかなるかな。
「で、此処からはどうするので?」
「この北の山には赤陣営のレライエが隠れているのは確か。黒陣営の一部が裏取り目指して中に入ってきているのも確か。なら、狙うのはその辺でしょうね」
「なるほ……」
私は今後の方針を告げ、それを聞いた一人が返事をした。
「ど?」
「「「!?」」」
が、言い切るよりも早く、そのプレイヤーの頭を長く巨大な矢が貫いて、即死させた。
「そう、早速なのね」
レライエの仕業だ。