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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
6章:『呪われた戦場の悪夢』
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343:3rdナイトメア1stデイ-4

ザリア視点です

「もうすぐ寝ないといけない時間だし、状況を整理しましょうか」

「そうですね。明日も激しくなりそうですから」

 イベント開始からはや12時間。

 私たちは門を閉める事によって、外敵の侵入を著しく難しくした中央砦、その一室に集まっていた。


「白陣営の砦は5つ。黒陣営の砦は5つ。無所属が1つ。無所属の砦については夜間に動きがあるかもしれないな」

「あるでしょうね。マントデアを倒した後に戦力が拮抗して、今も戦いが続いていると聞いていますから」

 全体の戦局は一進一退と言うところだろうか。

 ブラクロを倒した後、私たちは中央砦を取っては取られて取り返して、死んでは殺し殺されてを繰り返していた。

 最終的にこの砦は私たちが完全な占拠に成功。

 黒陣営側の門を閉じる事によって、こちらの拠点にすることが出来た。

 が、陣営を変えて同様の事がスクナが居た砦でも行われ、白陣営のプレイヤーは砦の前に木材と土による簡易の砦を築いて、警戒をしている。


「装備品や消耗品については?」

「問題ない」

「同じくです」

 装備品、消耗品、満腹度については現状では問題があるレベルではない。

 装備品の耐久度は砦内の資材と共用の呪怨台で回復できたし、消耗品の補充も済んでいる。

 満腹度も有志のプレイヤーが作った美味しい料理を食べたので、問題なし。

 これが七日間続くとなると多少の不安を覚えるが……今のペースが続くなら大丈夫だろう。

 なお、回復の水の残量については、砦内の特定スペースに行くと、ゆっくりと回復していく仕様になっている。


「……。睡眠は最低6時間だったか、ザリア」

「その通りよ。理想を言うなら、7時間は眠るべきでしょうね」

 今回のイベントは私たちの主観で七日間ぶっ通しとなる。

 その為、プレイヤーの健康を鑑みて、毎日6時間以上の睡眠が義務付けられており、これを守らないと、場合によっては戦場から死に戻りした際の待機エリアに移動させられた上で強制的に眠らされる場合もあるらしい。

 勿論、無駄に死ぬ意味はないし、緊急時の対応を考えるならば、戦場で寝られるなら、寝た方がいい。


「明日は黒陣営の側に攻め込むことになるわね。北上あるいは南下して、川の上の砦を裏から攻めるか、それとも西に進んで、黒陣営の砦に攻め入るか。他のプレイヤーとも相談だけど、これが妥当なところかしら」

「順当に行けばそうなるな。ただ、どう動くにせよ、まずはこの砦を出てすぐの場所に構えられた黒陣営の簡易砦を落とす事にはなるだろう。アレを放置することは出来ない」

「砦の城壁から見た感じだと、殆どただの壁と穴でしたよね。アレ」

「つまりは野戦になると言う事か」

 明日の動きについては特に問題なし。

 まあ、私ぐらいの立場では、高度な柔軟性を保って対処する以外の動きは出来ない。

 作戦を考えるのは、後方のプレイヤーの役目である。


「さて、問題は赤陣営ね」

 検証班曰く、赤陣営は七人居るらしい。

 これは黒陣営の検証班との情報交換……と言うか人数をすり合わせた事で判明、ほぼ確定した情報である。

 黒陣営にしても赤陣営は厄介すぎるので、正確な人数が割り出せたようだ。


「兄……ブラクロは撃破済みで、復活は早くても72……いえ、60時間とちょっとくらいですか」

「スクナとマントデアについても同様だったか」

「クカタチは未撃破。ただ、川の中に居る事を考えると、普通のプレイヤーでは手を出せないでしょう」

「森の中で弓による狙撃を陣営問わずに受けたと言う話がある事から、レライエも赤陣営が濃厚であると掲示板には出ているようだ」

「つまり確定しているのは四人、ブラクロ、スクナ、マントデア、クカタチ。ほぼ確定が二人、レライエとタル。姿が一切見えていないのが一人、と」

 赤陣営への対処は……正直どうすればいいのか分からない。

 戦い方そのものは人型のダンジョンボスを参考にすればいいのだろうが、はっきり言って1PTで対処できるようなスペックではない。

 そして数でごり押すのも、そう簡単な事ではない。

 それは今日の戦いから明らかだ。


「タルが表立っては何もしていないのが怖いわね……」

「そうなんですか?」

「そうよ。そっちの方が面白いことになると言うのなら、黙って見ている可能性はあるけど、絶対に何か裏で作業を進めているわ」

 タルの赤陣営入りについては、ほぼ確定している。

 ブラクロが使っていた見覚えのない短剣はどう見ても、真っ当な代物ではなく、現状ではタルしか行けないはずの『熱樹渇泥の呪界』の素材で作られた可能性が高いからだ。

 また、タルが黒と白のどちらかについたらバランスを大きく崩すと言うのも、根拠として挙げられる。

 その程度にはタルの力は圧倒的であると私は踏んでいる。


「裏で何かねぇ……具体的には?」

「それが分からないから余計に不気味なのよね。遠くから邪眼術による狙撃を受けたと言う報告はないし、恐ろしく濃い呪詛の霧の塊の目撃証言もない。となれば、誰の目にも触れない場所に居る事になるのだけど、それだと私たちの姿を見る事も出来ない事になるのよ。となると……」

「まさかとは思いますが、監視カメラの類でも持っているのでしょうか?」

「無いとは言い切れないのが怖いところね……」

 だからこそ姿がないのが恐ろしい。

 その圧倒的であるはずの力を敢えて表に出していないことになるのだから。

 それだけではなく、こうして姿を出さない事で恐怖を煽る事こそが、疑心暗鬼に陥らせる事こそが目的ではないかとも、考えさせられる。

 本当に厄介極まりない。


「上の方にはタルが監視カメラの類を持っている可能性があるとだけ伝えておきましょう」

「……。それが妥当か」

 だが結局のところは、出たところ勝負しかない。

 たった一人のプレイヤーを手掛かりもなく探し出すには、この戦場は広すぎる。

 私はそんなことを考えつつ、武器を抱えた状態で眠り始めた。

12/02誤字訂正

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― 新着の感想 ―
[一言] >満腹度も有志のプレイヤーが作った美味しい料理を食べたので、問題なし 美味しい料理か…。 例の物が仕込まれてないと良いね。 まあこのタイミングで口にしてたなら寝てる間に異形度上がりそうだけど…
[一言] ≫死んでは殺し殺されてを繰り返していた わぁ、蠱毒みたいだぁ
[一言] 何もしなくても何も起きないことで疑心暗鬼になるとか、タルは信頼されてるなあw(≧▽≦;)
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