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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
1章:『ネズミの塔』
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34:プロセスファーン-2

「せーのっ、と」

 私は毒噛みネズミの頭蓋骨の内側に投入した垂れ肉華シダの葉に向けて、毒噛みネズミの骨を叩きつける。

 そして、何度か叩きつけたら、ゴリゴリとこすり合わせて、葉っぱを磨り潰していく。


『チュー?』

「本当に基本的なアイテムと言うか、薬になる予定なのよ」

 根気よく。

 とにかく根気よく。

 ひたすらに葉っぱを磨り潰していき、ペースト状にしていく。

 ある程度の量の緑色のペーストが出来上がったら、更に葉っぱを追加して、再び磨り潰していく。


「しかし、現代が如何に楽になっているかがよく分かるわねぇ……」

 少しずつ効率は上がっていると思う。

 しかし、根気良く、地道な作業を続けていることに変わりはない。

 リアルでならこんな作業はミキサー一発で終了。

 そうでなくとも、きちんと整えられたすりこ木とすり鉢によってもっと簡単に出来るのだろう。

 だが、原始的な道具すら無いこの場においては、ただひたすらに辛抱強く進める他無いだろう。

 道具を工夫するのにも、知識と道具が必要なのだから。


「とりあえず適当に鳴いて」

『チュッ?』

「んー、私が鼻歌を歌うから、それに合わせて適当に鳴けばいいわ」

『チュー』

 しかし、なんとなくだが毒鼠の三角帽子がどういう意図で鳴いているのかが分かるようになってきたのは何なのだろうか。

 私が慣れてきたのか、三角帽子の知能が上がってきたのか……うーん、色々と追加したい気持ちも湧いてきたが、今はまず目の前の作業に集中するとしよう。


「ふんふふーん」

『チューチューチュッチュッチュウ……』

 そうしてひたすらに衝いて擦って混ぜ合わせる事数時間。

 だいぶペーストの量が増えてきた。

 葉そのままで残っている部分は殆どない。

 と言う訳で、ペーストを少量手に取ると、指で摘まめるぐらいの大きさを持った団子へと丸めていき、出来上がった団子は別の頭蓋骨を器代わりにして置いておく。


「こうしていると、まるで料理みたいね。まあ、確実に味はヒドイでしょうけど」

『チュチュウ、チューチュウ、チュッチュヂュウ』

 なお、セーフティーエリアの内部に立ち込めている臭いについては、ネズミたちの毛皮から漂ってくる臭いと、垂れ流しになった後に染みついた血の匂い、それと垂れ肉華シダの葉が磨り潰された臭いが入り混じる事によって、相当ヒドイ物になっている。

 私はとっくの昔に慣れてしまったが、何も知らない人が嗅いだら、それだけで嘔吐ぐらいはするかもしれない。

 とは言え、セーフティーエリアの入り口の扉を開けっ放しにしておくことも出来ないしなぁ……消臭の手段が見つかるまでは無視するしかないか。


「これで10個、と。結構減ったわね」

『チャラチュラッチュッタ』

 やはり葉っぱの状態ではだいぶ嵩張っていたらしい。

 磨り潰して圧縮してしまえば、団子は20個ほどしか残っていない。

 なお、この状態でもまだ垂れ肉華シダの葉であるらしく、鑑定結果ではその名が示されていた。

 耐久度はかなり減っていたが。


「じゃ、一度黙って」

『チュ』

 私は団子の入った頭蓋骨を適当な大きさの毒噛みネズミの毛皮で包み、短い垂れ肉華シダの蔓で口を結ぶと、呪怨台に乗せる。

 すると、いつものように赤と紫と黒の霧に包まれていくので、念を込め始める。


「回復アイテムが出来ますように。回復アイテムが出来ますように。回復アイテムが出来ますように……」

 今回の製作が上手くいけば、垂れ肉華シダの葉が持つ周囲の呪詛を吸収して、自分の栄養にする性質を利用したアイテムが出来るのではないかと思っている。

 それは呪詛濃度が高い場所で活動するのが基本である私にとっては、確実に有用なアイテムだ。

 是非手に入れておきたい。


「よし出来た」

 霧が晴れ、見た目はそのままの袋が現れる。

 とりあえず何かは出来たと言う事で、私は鑑定を行う。



△△△△△

垂れ肉華シダの葉団子

レベル:1

耐久度:100/100

干渉力:100

浸食率:100/100

異形度:4


垂れ肉華シダの葉を団子状に加工した物。

食べると、周囲の呪詛濃度に応じて満腹度が回復する。

袋の中には現在20個入っていて、袋の中にある限り劣化することは無い。

注意:垂れ肉華シダの素材のみで作られた球体状の物体しか中には入らない。

▽▽▽▽▽



「まあ、回復アイテムには違いないわね……」

 とりあえず袋から緑色の団子を一つ取り出す。

 すると説明欄の数が一つ減った。

 どうやら垂れ肉華シダの葉団子を作ると一緒に、垂れ肉華シダの葉団子専用の袋まで作ってしまったらしい。


「満腹度を減らしてくる相手や、長期間食料を補給できない環境とかを考えたら、悪くは無いか」

 私は垂れ肉華シダの葉団子を口に含んでみる。

 特に乾燥などはさせていないので団子は柔らかい。

 そして味は……


「苦ッ!?」

 毒噛みネズミの肉など比べ物にならない程に不味いものだった。

 いや、ちょっとこれを常食するという選択肢はないかなぁ……一応私は『ゲテモノ食い・1』を持っていて、不味いと判断される食べ物の味が多少は良くなっているんだけど、それでもなおこの不味さと言うのはちょっと……。

 うん、食べるのはどうしてもと言う時にしておこう。

 満腹度の回復能力そのものは周囲の呪詛を栄養に変換しているのか、一個食べるだけで10程度回復するという優秀な物だし。


「あ、垂れ肉華シダの花を混ぜれば、多少は味も良くなるかも」

 あるいは団子を作る時に、あの上質な肉のような垂れ肉華シダの花を混ぜれば、味の改善を図れるだろう。

 きっと明日か明後日くらいにはセーフティーエリアの垂れ肉華シダも花を咲かすだろうし、相応の対処能力は要求されるだろうが、第三階層で探せばそちらで入手する事も可能なはず。


「よし、明日は第三階層を探索しましょう。そろそろ『ネズミの塔』の攻略も完遂してしまいたいところだし」

『チュー』

 残念ながら明日以降を考えたら、今日はもうログアウトの時間だ。

 私はセーフティーエリアと私自身に問題が無いことを確認すると、ログアウトした。

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