338:3rdナイトメア1stデイ-1
イベント中はザリアの視点が多くなります。
予めご了承ください。
ルールについては293話を参照してください。
≪貴方は白の陣営になりました≫
「イベント開始ね」
自分が白の陣営になったと言う知らせと共に私は周囲を見る。
どうやら白陣営の砦の一つに飛ばされたらしい。
≪役割を選択してください。……。ナイトが選択されました≫
「これでよし」
これならば事前の予定通りでいいだろう。
と言うわけで、開幕はナイトを選択。
戦争開始まで後30分ほどあり、戦争開始までは味方の勢力圏でしか行動できず、ポイントも入らないので、この間に今居る砦から前線になるであろう初期が無所属の砦までの道を把握しておく。
それと同時にいつものメンバーとの合流、掲示板が事前の通達通りに自分の陣営のものしか見れなくなっている事も確認する。
「拙いわね……」
「拙いって何がですか?」
そうして20分ほど確認したところで、幾つか分かったことがある。
まず、味方の数は21,430人。
参加者総数が42,867人であることを考えると、ほぼ等分されたと言っていいだろう。
事前の通達通りなら運営はバランスには気を使っているはずなので、戦力はほぼ同一であると言っていいだろう。
「厄介なプレイヤーの数が明らかに少ないわ」
そう、ほぼ同一であるはずなのだ。
通達通りなら。
「そうですね。掲示板で確認した限り、こちらに居る有名どころは私たち、『光華団』、検証班のストラス、カーキファング、ドージ等々。有名どころ……特に彼女などは姿を隠せるとも思えませんので、見つからないと言う事はそういう事なのでしょう」
「と言うか、兄が居ませんよね。他のメンバーはみんなこっち側なのに」
「クカタチ、マントデア、スクナも向こうか」
「妙だ……」
「隠れた実力者が居る。と言うにしてはちょっと無理があると思いますね」
だが実際には、有名なプレイヤーや集団の数が少ない。
『エギアズ』が居ないのはまあいい、『光華団』がこちらに居るなら、釣り合いを取るために黒側に『エギアズ』が居るだろうから。
掲示板を見る限りでは、検証班はほぼ二分、ここも問題ない。
他の有名と言っても、私たちと同程度のプレイヤーが居ないのも、黒側に居るで終わらせていい案件だろう。
だが、タル、ブラクロ、スクナ、マントデア、千華の五人が揃って黒側と言うのは明らかにおかしいと言うか、事実ならバランスが完全に崩壊している。
特にタルとブラクロの二人だ。
今回のイベントの仕様上、一騎当千級なのが確定している二人が分かれていないと言うのは、明らかにおかしい。
「ザリアさん」
「分かってるわ。シロホワ。たぶんだけど、第三陣営が出現してる」
となれば、イベント開始前から噂であった第三陣営……バランスブレイカーのプレイヤーだけを集めた少数精鋭の類が存在していると見るのが妥当だと思う。
おあつらえ向きと言っていいのかは分からないが、タルがカースだから、サプライズでカースと言う名のプレイヤーを出現させましたと言うノリでいけてしまう気がする。
となるとだ。
「最初の無所属の砦を奪う時から注意が必要かもしれないわね。場合によっては無所属と言う名の第三陣営所有かもしれないわ」
「はい」
「まあ、ありそうですよね」
「……」
「あるだろうなぁ。そう言うの」
「あるだろうね。ここの運営だし」
私は砦の外へと目を向ける。
この砦から中央の砦までの距離はおおよそ2キロメートルほど。
純粋に距離があるので、視覚制限を緩和してくれるゴーグル越しでも見えない。
「まあ、今回のイベントは倒されても相手にポイントが入るだけで、復活は直ぐに出来る。とりあえずは出たところ勝負でいいと思うわ」
私は掲示板を再度確認。
どうやら総指揮は『光華団』のライトローズさんが取る事になったらしい。
と言っても指示については必要になったら適宜出すと言うもので、まずは様子見に近いようだ。
なお、何をしたらいいのか分からない新人向けに、開幕は無所属拠点目掛けてのスタートダッシュ、その後は各自の判断で敵所属の拠点への攻撃をするようにとも書いてある。
えーと、他の情報としては……
砦を経由せずに敵陣に攻め込めるようになる重要箇所、北端と南端については、北端は有志によるルート探索の計画あり、南端は簡易砦による上陸防止作戦の予定あり。
生産については、各自必要な物を頼まれてから砦内にある呪怨台で制作、農耕系については七日間で間に合うのかは不明だが、初期砦と本営の間の土地を開墾する予定。
砦そのものや資材の警備も重要であり、敵陣に突っ込むだけがポイントを稼ぐ方法ではないと言う話もしっかりと流れている。
他にも、自分が何をしたいのかについて考えて、調べれば、どうすればいいかが出て来るように整えられている。
「目標は黒陣営に勝利する事でポイントに大きなブーストをかけること。けれど、それ以上に大きな目標はイベントらしく、楽しく終える事、ね。流石の『光華団』ね」
「ですね」
「ま、気楽に行きましょう。失うものは精々持ち込んだアイテムくらいです」
「……」
「ようし、やれるだけやってやる」
「うんうん、その調子です」
戦争開始のカウントダウンが始まる。
「では、最初の目標は中央砦。行くわよ!」
「「「おおおぉぉぉ!」」」
そして0になって戦争が始まった瞬間。
私たちは砦を飛び出して、中央の無所属砦に向かって駆け出した。
12/01前書き調整。