322:ミミチチソーギ・ズワム-4
本日四話目です
「竜巻!?」
ズワムから放たれた熱砂の柱は、天高く打ち上げられた後に、『熱樹渇泥の呪界』各地へと降り注ぎ、そこで竜巻に変化した。
勿論、ただの竜巻ではなく、火の粉が舞うほどに熱せられているし、飢渇の泥呪を吸い上げる事で乾燥と物理的な破壊を吸い込んだ物へと与えられるようになっている。
既に近くに居た炎視の目玉呪や毒頭尾の蜻蛉呪が何匹も竜巻に巻き込まれ、殺されている。
『たるうぃ! 巻き込まれたら命はないでチュよ!』
「言われなくても!!」
頭の再生を終えた私は竜巻から逃れるために全力で羽ばたく。
竜巻の数は現時点で既に百本以上。
生じた竜巻は破壊を撒き散らしながら移動して、暫くしたら消えるのだが、消える度にズワムが追加しているので、数が減る事はない。
そして、ズワムの全身の目から放たれる光球は相変わらずの数と勢いと威力である。
「ちっ、これはただ飛ぶんじゃ駄目ね」
私は光球と竜巻を避けつつ、ズワムに接近しようとした。
だが、直ぐにその判断を改めた。
光球を避けつつ、竜巻への対処をしていたら、ズワムに接近するほどの余裕はない。
『たるうぃ!?』
だから竜巻を利用した。
敢えて竜巻に吸い寄せられる事で加速し、吸い寄せている竜巻の内側に入る前に、勢いを生かして別の竜巻の勢力圏に突入、さらに加速。
本来の私では絶対にありえない速さにまで加速して、ズワムが居る方向に向かっていく。
「ちっ、急いだほうがいいわね」
『マジでチュかぁ……』
そうしてズワムに向かっていく私に対して、偶々ズワムの近くに居た眼球ゴーレムが厄介な情報を送ってくる。
それはズワムが私から距離を取るべく動き出しつつ、熱拍の樹呪の葉を食らう事で傷ついた自分の体を治療していく姿だった。
勿論、熱砂の柱を吐き出して竜巻を作り出す事も、光球を放つ事も止めていない。
時間が来れば怪光線も放ってくるだろう。
うん、どの程度のペースで回復が進むのかは分からないが、このまま放置して勝てる可能性はない。
だが、ズワムの下に辿り着くまで、何もしないと言う選択肢はない。
「ザリチュ。ズワムの居る位置は分かっているわね」
『分かっているでチュ。まあ、中継していけばやれると思うでチュよ』
「よろしい。じゃあ行きましょうか」
私は呪詛の槍を作り出すと、ズワムに向かって射出する。
今現在の私とズワムの間にある距離は3キロメートル以上ある。
だが、『熱樹渇泥の呪界』の構造と、これまでの戦闘で熱拍の樹呪の多くがなぎ倒されたおかげで、視界は開けており、射線は通る。
問題は呪詛の槍を命中させることだけ。
だから、眼球ゴーレムの視界を介して、呪詛の槍を今の私よりもさらに速く……音速を超えるような勢いで飛ばしていく。
「ezeeerf『灼熱の邪眼・2』」
「ーーーーー!?」
私の目が紅色に輝くと同時に、ズワムの咆哮が響き渡る。
これで火炎属性ダメージと灼熱が入って、多少だが回復のペースが落ちると同時に、ズワムにこちらの事を警戒させる事が出来るだろう。
「このまま撃ち込みつつ突っ込むわよ」
『カウンターはどうするでチュか?』
「放置。この距離なら光球の密度はたかが知れているわ」
私は『呪法・貫通槍』を乗せた『灼熱の邪眼・2』を放ちつつ、ズワムへと接近していく。
だが接近するほどに光球の密度だけでなく、竜巻の密度も上がり、接近するペースは下がっていく。
するとズワムは再び回復を図るべく、熱拍の樹呪の葉を食らおうとする。
が、今度はさっきとは結果が違った。
「ーーーーー!?」
「ん?」
熱拍の樹呪の葉を食らったズワムが、食べた物を吐き出し、何かに苦しむような姿を見せたのである。
食あたりだろうか?
『『呪圏・薬壊れ毒と化す』だと思うでチュ』
「あ、なるほど」
言われてみれば、私とズワムの距離は2キロメートル以内にまで近づいていた。
『呪圏・薬壊れ毒と化す』の効果範囲内だ。
どういう仕組みでズワムの回復阻害に繋がったのかは分からないが、好都合である。
「よし、このまま接近を……」
「ーーーーー!!」
「させてくれそうにないわね」
『地道に接近するしかないでチュね』
まるで食あたりの怨みを晴らすように、ズワムが怪光線を放ってくる。
私はそれを避け、竜巻と光球も避け、攻撃の隙間を縫うように『呪法・貫通槍』を乗せた邪眼術を撃ち込んでいく。
「地味に熱い……!」
『乾燥も厄介でチュね……!』
問題もある。
竜巻を利用した加速は、竜巻の位置に影響を受ける事であり、その竜巻を放っているのがズワムであるため、ズワムの周囲を何周もしながら、少しずつ距離を詰めていくことになっている事。
竜巻の密度が上がったためか、時々だがHPを削られるようになっている事。
他にも、巻き上げられた飢渇の泥呪の海の波を躱したり、一般のカースたちが私に向かってきたりと問題は色々とある。
「ーーーーー!」
だがそれでも地道に詰めていくしかないだろう。
私の接近を感じてか、ズワムの吐き出す熱砂の柱が上空に向けてではなく、私目掛けて直接放つようになってきている。
この状況下で一直線に進むのはただの自殺行為だ。
そして、この距離を保つのも良くない。
少しずつだが、熱砂の柱が竜巻になってからの軌道が、私の逃げ場を塞ぐように変化し始めている。
距離を取るのは論外。
回復されて詰みだ。
『残り1,500メートルでチュ』
「分かったわ。このまま地道に詰めて、竜巻を封じましょう」
故に私は少しずつズワムとの距離を詰めていく。
無数の光球、熱砂の柱と竜巻、怪光線を放つズワムと、呪詛の槍を放って邪眼術を撃ち込む私の弾幕戦は少しずつ状況が変化していく。
「ーーーーー!!」
『残り500メートルでチュ!』
「そろそろ……」
そうして距離が500メートルにまで近づいた時だった。
私自身の目でも見えるようになったズワムの口が私に向けられていた。
そして、これまでにない感じの叫び声を上げたと、肌の震えから感じた。
直後。
「っう!?」
『ーーーー!?』
私の聴覚が消え失せた。
ザリチュの声すらも聞こえない。
表示された状態異常は聴覚喪失(125)。
聴覚を奪うだけの状態異常だったが、この状況では厄介だった。
「ズワムの声が……聞こえない!?」
ズワムの攻撃の前兆は動きよりも叫び声の方が分かり易いからだ。
私自身の声は私が発しているからなのか分かるが、ザリチュの警戒を促す声が聞こえないのも拙い。
「それでも……近づくほかない!」
それでも私は視覚をフル活用して、ズワムへの接近を試みた。
そうして残りの距離が100メートルにまで近づき、ズワムが竜巻を撃てなくなった時だった。
「がぼっ!?」
ズワムの口から放たれた何かが私の胸を貫き、全身を貫くような衝撃によって私のHPを全損させてきた。




