320:ミミチチソーギ・ズワム-2
本日二話目です
『で、どうするでチュか?』
「とりあえずはクールタイム明けまで後10秒、耐えるわ」
まずはズワムの放った怪光線に対する考察。
アレは放つと同時にズワムに入っている状態異常のスタック値が下がったことから考えて、状態異常攻撃に対するカウンターの類であることは間違いないと思う。
威力についてはこちらの『禁忌・虹色の狂眼』が呪法を重ねたことによって法外な威力となったために、カウンターの威力も高まったとみるのが妥当だろう。
「ーーーーーー!」
「む……」
ズワムが咆哮すると同時に、ズワムの全身にある虹色に染まった目から、同色の光球が生じる。
ズワム本来の目の色が赤であり、『禁忌・虹色の狂眼』を受けて虹色に染まったことを考えると、これから行われる攻撃もまた『禁忌・虹色の狂眼』に対するカウンターの一つになるだろう。
後はズワムがこちらの位置を把握しているかだが……これについては微妙なところだ。
私は今現在ズワムに薙ぎ払われ、他の個体によりかかるように倒れた熱拍の樹呪の陰に居る。
そして、周囲ではズワムの攻撃によって熱拍の樹呪の樹冠の高さにまで届く規模で飢渇の泥呪が舞い上がっており、物理的に視界が悪い。
その上で、私はズワムを直視せず、眼球ゴーレムの視界を介して様子を窺っているのだから、こちらの位置はまず掴まれていないだろう。
となればだ。
「ーーーーー!」
『チュアッ!?』
「まあ、こうなるわよね」
来るのは必然的にランダムかつ広範囲に及ぶ攻撃。
私の予想通り、ズワムの眼球から生じた光球は徐々に震えだし、やがて四方八方へとランダムに放たれた。
放たれた光球はその進路上にズワム以外である程度以上に大きいものがあると、ぶつかると同時に爆発。
虹色の爆炎を周囲に撒き散らす。
その威力は避け切れなかった毒頭尾の蜻蛉呪が一撃で撃墜された上に、付与された各種状態異常によって再生することも叶わなかったほど。
そして、そんな威力の光球が数千、しかも既に、一度放った目から次の光球が放たれ始めている。
先ほどの怪光線で大いに荒れた『熱樹渇泥の呪界』が更に荒れ狂っていく。
「さて、上手くいくといいのだけど……『灼熱の邪眼・2』」
私は樹呪の陰から姿を現わすと、周囲を飛び交う虹色の光球を避けつつ、右目一つだけで『灼熱の邪眼・2』をズワムへと打ち込む。
ダメージ的には微々たるものでしかないが、効果は劇的だった。
ズワムの全身の目が紅色に染まって、放たれる光球の色も変化する。
変化はそれだけに留まらず、ぶつかった時の爆発の威力が目に見えて抑えられると共に、普通の炎しか生じなくなっている。
やはりカウンターの一種、直前に受けた邪眼術の模倣と言うところか。
つまり、これで状況は大きく改善される。
『拙いでチュよ、たるうぃ!』
「げっ」
「ーーーーー!!」
が、私の姿を捉えたズワムは動きを大きく変える。
宙を這って、こちらへと真っ直ぐに向かってくる。
おまけに紅色の光球を周囲へ撒き散らしつつだ。
「逃げるわよ! ザリチュ!!」
『言われなくても分かっているでチュ! 全力で飛ぶんでチュよおぉ!』
私は落下による加速を利用しつつ、高速での飛行を開始。
幸いにしてズワムは小人の状態異常の効果によって、幅は3メートルほどになっており、その分だけスピードも落ちている。
これならば『死退灰帰』の効果で異形度24になっている今の私が全力で飛行すれば、十分攻撃を避けられる。
なお、長さは10分の1のサイズになってもなお1,000メートルくらいあるように見えるが、それは戦いに利用されない限り無視する。
「ーーーーー!」
『それで! ここから! どうするんでチュか!?』
問題はもはや弾幕としか言いようのない紅色の光球だ。
目一つ分『灼熱の邪眼・2』を模倣している状態の光球は火炎属性のダメージと灼熱の状態異常を付与する効果になっているので、私の装備ならば直撃しても大したダメージはない。
だが、やはり数千と言う数は多すぎる。
全方位から無秩序に飛んでくる光球と、私を噛み砕こうとするズワムの体を避けるのには相応の集中が必要になる。
前へ、後ろへ、上下へ、左右へ、縦横無尽に飛び回って、体に光球を掠らせつつも避け続ける。
だからと言って安易な反撃あるいは『気絶の邪眼・1』による反撃を行えば、待っているのは確実な死である。
「此処ね。etoditna『毒の邪眼・2』」
『チュア!?』
「ーーーーー!?」
だからこうする。
光球に紛れさせるように放った呪詛の星がズワムの体に重なったタイミングで、12の目による『毒の邪眼・2』を発動。
『呪法・方違詠唱』と『呪法・破壊星』込みの『毒の邪眼・2』が発動したことで、ズワムの毒のスタック値は20,815。
同時にズワムの全身についている目が深緑色に染まり、同色の光球を放とうとし始める。
『た……』
「せいっ!」
「ーーー!?」
その前に動作キーによって発動した目一つ分のただの『灼熱の邪眼・2』を撃ち込んで、ズワムの目の色を紅色に戻し、光球の色も紅色に染め直す。
よし、上手くいった。
『……。かなりぎりぎりになるでチュよ?』
「大いに結構。でなければ勝ち目なんてないわ」
そう、直前に使った邪眼術に合わせてカウンターをしてくるならば、その性質を逆利用するだけの話である。
「ーーーーー!」
「ははっ! 来なさい!!」
私はそれから何度も、『毒の邪眼・2』の直後に『灼熱の邪眼・2』を単発で撃ち込むことによって削りを入れていく。
本音を言えば、ターゲットから外れる時間も終わったので『呪法・感染蔓』を乗せて撃ち込みたいが、明確なイメージを必要とする呪詛の種を作れるだけの隙は無い。
攻撃を受けないことを第一として、眼球ゴーレムの視覚による情報をフル活用し、詰まないように注意を払いつつズワム自身と光球を避けていく。
邪眼術の使用によって減ったHPは周囲の呪詛を取り込むだけでなく、体内の『不老不死』の呪いを活性化させることによって効率よく回復。
満腹度についても、装備の効果で消耗を抑えつつ、適度に斑豆を使って補給。
「ーーーーーーー!!」
「そう、時間によっても使ってくる感じかしらね」
『次からカウントしておくでチュ』
そうしてズワムの攻撃を避け続け、戦闘開始から10分ほど経ったところで、ズワムの状態異常のスタック値が半減する。
続けて口の中から、深緑色と紅色を主体とした光が漏れ始める。
怪光線だ。
属性は恐らくほぼ火炎属性だが、毒が混ざっているので、受けるのは止めた方がいい。
そして受ける必要もない。
「『気絶の邪眼・1』」
「!?」
『呪法・貫通槍』による強制付与を乗せた『気絶の邪眼・1』がズワムに突き刺さる。
ズワムの活動が強制的に一瞬停止する。
「ーーーーー!?」
「っ!?」
『チュア!?』
ズワムの頭部が大爆発を起こし、紅色と深緑色の爆炎に包まれる。
私は爆風に乗る事で、ズワムから距離を摂りつつ、飢渇の泥呪の海に向かって降下して、視認されづらくする。
直後、爆炎に包まれた状態のズワムの頭部から紅色と深緑色が混ざった怪光線が放たれ、自分の頭についていた爆炎も、進路上にある熱拍の樹呪も、飢渇の泥呪の海も切り裂き、爆散させていく。
そして、最初の時と同じように、当たるを幸いに『熱樹渇泥の呪界』中を薙ぎ払っていく。
いや、最初の時よりも酷い。
なにせ、ズワムの全身についている目からは今も光球が放たれ続けているのだから。
「どっかの海月とはまるで別物ね」
『全くでチュ』
だが、それでもズワムのその動きは隙だらけと言ってもよかった。
だから私は呪詛の種と呪詛の星を作り出し、それらを放った。
そして怪光線が終わると同時にズワムの前に一瞬だけ姿を現わし、12の目による『毒の邪眼・2』を放つ。
「ーーー!?」
深緑色の蔓が何度もズワムの体を突き刺し、毒のスタック値を一気に上げて行く。
毒による不快感の為か、ズワムはその身を捩る。
そして、『呪法・感染蔓』が終わるタイミングで、『灼熱の邪眼・2』を撃ち込んで、カウンターの弱体化を図る。
「さて次は……」
『たるうぃ、ズワムの小人のスタック値が120を切ったでチュ』
「じゃあそっちが優先ね」
「ーーーーー!!」
ズワムが再び私に向かって突っ込んでくる。
私はそれを避けると、『小人の邪眼・1』のチャージを開始する。
戦いは、まだまだ終わりそうにない。




