309:トライアルシー-3
「此処が海ね……」
『荒れているでチュねぇ』
さて、ダンジョンから脱出した私は、直ぐに港の外に出た。
目的は言うまでもなく海のアイテムを何でもいいから回収する事である。
で、肝心の海だが……
△△△△△
E2 皆湿らしの海
全てを水底へ、何もかもを引きずり込んで、自分のものだと唾つける海。
海は今も手を伸ばしている。
呪詛濃度:5
[座標コード]
▽▽▽▽▽
「うん、私がこの先に行くのは当面ないわね」
『当然でチュねー』
船体が半分ほど沈んだ船が水平線までに何十隻とあり、その中にダンジョンがあるようだった。
が、検証班によると浜辺から見える水平線の向こうからは、沈みかけの船も島もないとかで、最低でも拠点に出来るような船は必須のようである。
うん、恐らくだが、船の中にあるダンジョンで素材を集めて、自分の船を作って外洋に繰り出すのが正規ルートなのだろう。
なお、私は海と言う環境が嫌いなので、頼まれない限りはいかないだろう。
『あ、海底の方はどうなっているんでチュか?』
「海底と言うか海面下の方は、浅瀬と深い場所が入り混じっていて、海上と同じようにダンジョンがあるらしいわね。ただ、元から水中特化であるか、相応の装備を整える必要があると言う事で、人気は低めみたいね」
海面下にもダンジョンはある。
こちらはこちらで色々とあるようで、恐らくだが海のもう一つの正規ルートとして、海底探索をする道もあるのだろう。
まあ、水中呼吸が出来るようなアイテム、装備、呪術に心当たりはないので、こちらも頼まれない限りはいかないだろう。
「じゃ、帰るわよ」
『分かったでチュ』
とりあえず適当な容器に海水を汲んで、私はセーフティエリアを後にした。
そしてお守りを作成した。
△△△△△
海のお守り
レベル:15
耐久度:100/100
干渉力:100
浸食率:100/100
異形度:4
E2 皆湿らしの海に蔓延する呪いを免れる事が出来るようになるお守り。
注意:制作者であるタル以外が所有していても効果はない。
▽▽▽▽▽
『この後はどうするでチュか?』
「そうねぇ……『熱樹渇泥の呪界』は落ち着いているのよね」
『落ち着いているでチュね』
お守りを作成した私は『ダマーヴァンド』に帰還。
眼球ゴーレムを使って『熱樹渇泥の呪界』の様子を確認。
『熱樹渇泥の呪界』は落ち着いていて、熱拍の樹呪の果実を取る前と変わらない状態に戻っている。
「じゃあ、行ってきましょうか。あの巨大ワームを倒すための情報収集を始めるわ。後は……毒頭尾の蜻蛉呪の死体を一つくらい回収しておきましょうか。たぶん必要になるから」
『熱拍の幼樹呪、炎視の目玉呪、この辺の回収はいいんでチュか? 特に熱拍の幼樹呪の素材はだいぶなくなってきているでチュよ』
「んー……小さめの熱拍の幼樹呪が居たら回収しておきましょうか。熱拍の幼樹呪の素材はあってもあるだけ使えるし」
『分かったでチュ』
と言うわけで私は『熱樹渇泥の呪界』に移動。
巨大ワームを探す間に遭遇した毒頭尾の蜻蛉呪と熱拍の幼樹呪を始末すると、死体を丸ごと回収した。
で、巨大ワームは……見つけた。
「ーーーーー!」
「今日も元気ねぇ……あの巨大ワームは」
『まったくでチュね』
巨大ワームは飢渇の泥呪の海からその身を出して、進路上にいた毒頭尾の蜻蛉呪を丸のみにしつつ、飢渇の泥呪の海の中へと帰っていく。
やはり速く、大きい。
マトモに相対したら、攻撃を避ける事は絶対に出来ないだろうし、逃げる事も不可能、相手がこちらに気づいていない状態で掠るように当たったとしても、即死するだろう。
『分かっていると思うでチュが、鑑定を行った時点で敵対は確定でチュからね』
「分かっているわ。でも、名前、レベル、耐性を知れるのは大きいわ」
『HPは?』
「あのサイズだと???表示以外ないでしょ」
私は熱拍の樹呪の陰から巨大ワームを鑑定できるように位置調整。
その上で左手に望遠鏡、右手に『鑑定のルーペ』を持ち、距離がある状態でも素早く鑑定できるようにした。
「では……鑑定!」
そして私は鑑定した。
鑑定結果が表示される。
△△△△△
『路削ぎの蚯蚓呪』ミミチチソーギ・ズワム レベル30
HP:???/???
有効:小人
耐性:灼熱、気絶、沈黙、出血、干渉力低下、恐怖、乾燥
▽▽▽▽▽
「!?」
『気づかれたでチュよ! たるうぃ!!』
「これは……」
鑑定を行った直後、私は熱拍の樹呪の陰に隠れるように落下して、素早く移動する。
そして直ぐに先ほどの鑑定結果を見直し、考える。
うん、やはり鑑定をしたのは正解だった。
相手の耐性が見えたおかげで、僅かにだが勝ちの目が見えた。
これならば、ギリギリにはなるだろうが、ソロでも行ける可能性がありそうだ。
だが、私がズワムの討伐についてこの場で考えられるのは、此処までだった。
「ーーーーー!」
「げっ」
『終わったでチュ』
ズワムの頭が先ほどまで私が居た場所を勢いよく通り抜けていく。
そして直ぐに方向転換し、熱拍の樹呪の陰に居る私の姿を捉える。
それも一つや二つの目ではなく、十を超える目で私の事を捉えながら。
私は一瞬にしてズワムに呑み込まれ、抵抗の余地もなく死に戻りとなった。
「うんまあ、こうなるわよねぇ……」
『でっチュねぇ』
死に戻りによって『ダマーヴァンド』に戻された私は、自分の状態、『ダマーヴァンド』と呪限無の石門の状態、『熱樹渇泥の呪界』の様子を順々に確かめていく。
これはアジ・ダハーカに殺された時に干渉力低下を受けたという経験、カロエ・シマイルナムンが食い殺した相手の異形度を上げる能力を持っていたと言う知識から、ズワムも殺した相手に何かできると踏んでの事である。
そうして確かめた結果、私の身に異常が生じていた。
「レベル低下(1)。レベルドレインとはやってくれるわね……」
『一時的な物でチュけど、これは厄介でチュねぇ』
表示された状態異常はレベル低下(1)。
どうやら表記通りに、私のレベルが1下がった扱いとなり、今の私のレベルは21で扱われているようだ。
だが幸いにして、下がったのはレベルだけで、HPや干渉力に影響はない。
また、装備品のレベル不足によるペナルティついても、『超克の呪い人』の称号を得る程度には慣れていたおかげで、そこまで問題になるような物ではない。
「はあ、とりあえず今日は回収してきたアイテムの処理を終えたらログアウトしましょうか。ズワム討伐の準備は明日からよ」
『分かったでチュ』
私は毛皮袋から熱拍の幼樹呪の死体を出すと、一通りの分解をした。
前回と違って腕ゴーレムが居るので、作業は実に楽だった。
そして毒頭尾の蜻蛉呪の死体については、敢えて解体をせず、垂れ肉華シダの蔓で覆う事で呪詛の吸収を阻害、復活できないようにして、今日のところはログアウトした。
11/03誤字訂正




