306:トライアルスノウ-3
「『灼熱の邪眼・2』」
「「「ーーー!?」」」
私は『呪法・増幅剣』を乗せた『灼熱の邪眼・2』を敵モンスター三体の頭部に放ち、その一撃のみで仕留める事に成功する。
やはり、2になった邪眼に、呪法とネツミテの強化を乗せた上で、頭部狙い撃ちによる確定クリティカルを出せば、一体につき目四つでも確殺のようだ。
「流石はタル様。圧倒的ですね。ところで『灼熱の邪眼』ですけど、そちらも強化されましたか?」
「あー、流石に分かるわよね。そりゃあ」
「幾ら弱点属性で、他にも色々と上乗せしているとは言え、三体同時に一撃と言うのは、それまでの『灼熱の邪眼』ではあり得ないはずですから」
はい、と言うわけで『試練・雪山への門』の攻略は順調に進んでいる。
モンスターについては氷雪人と言う雪女、雪男のようなモンスターが居て、他の試練と同じように装備品によって行動が分かれる。
特徴としては攻撃の属性が氷結属性に大きく偏っていて、私が攻撃を受けるとかなり危険な事。
耐性が、氷結属性に強く、火炎属性に弱いと言う耐性で、これまた極端な物になっている事が言えるだろうか。
よって先手必勝、『灼熱の邪眼・2』で即死させるのが正解なのだが……まあ、別にバレても困るものでもないし、どうでもいいか。
「ちなみに私個人としては、タル様が今使っている懐炉のようなアイテムの方が気になっています。たぶんですけど、それなりに持続性のある使い捨ての耐性強化アイテムの類ですよね」
「ええそうよ。詳細は教えられないけどね」
おっと懐炉札の効果が切れかけている。
寒さと戦闘で動き回っているせいか、効果量が高まる代わりに効果時間が短くなってしまったようだ。
私は毛皮袋から新しい懐炉札を取り出すと、今までに使っていたものと交換する。
「あ、今更言うまでもないけど、ストラスさんが得た情報は好きにしていいわよ。この場で使っている時点で、明かしても問題ないと私が判断したって事だから」
「そうなんですけど……存在を示唆するくらいになりそうですね。検証班はタル様から情報を貰いすぎですし、現状ではタル様以外には入手不可能でしょうから。ここで検証班が自分で得たからと無暗に情報を明かしてしまうと、問題になる気がしますね」
「そうなの。まあ、明かさないのも含めて好きにすればいいわ」
『試練・雪山への門』の構造としては、他の試練と変わりはない。
足元がコンクリートか丸太かの二択だったり、異様に気温が低かったり、罠として寒風が吹いたり、つららが落ちてきたりと、この場の雰囲気に合わせて変化しているぐらいだ。
ぶっちゃけ、未知が足りない。
「タル様。ボス戦についてですが、私は付いていかない事にしようと思います」
「いいの?」
「はい。試練はクリア済みですし、私が居たらタル様が出せない攻撃手段もあると思いますので」
「そう、だったら一人で行かせてもらうわ」
そうこうしている内にダンジョンの最深部、ボス戦に繋がる広間に到達。
ただ、これまでの二つの試練と違って、人影は疎らだった。
どうやらこの寒さもあって、人気は微妙であるらしい。
では、とっととボス戦を終わらせてしまおう。
ボス戦を始めてから終わらせるまでの時間と言う情報が検証班に渡るだろうが、それがどうしたと言う話だし。
あ、ライブについてはしっかり切っておく。
「では早速……」
ちなみにこのダンジョンのボスは身に着けている装備品の数で戦闘能力が変化するらしい。
これは装備品の素材や加工にもよるが、多くの装備品を身に着けている方が、寒さに強くなる事から、そういう設定になっているのではないかとの事。
そして、身に着けている装備の数によっては装備品の耐久度を削ってくる攻撃をボスがしてくるようになるようだ。
私の『呪圏・薬壊れ毒と化す』がほぼ回復関係のアイテム限定であることを考えると、厄介な攻撃である。
今回は使用中の懐炉札が装備品扱いだったり、私のカース化の影響を受けたりがなければ、使われることはないだろうが。
『あ、やる気満々でチュね』
「そりゃあそうよ。誰の目もないんだから」
さて、白い霧を抜けてボス戦の通路に入った私は、通路に入ってから25秒ほど経ったところで、右手の近くに呪詛の星を、左手の近くに呪詛の種を作り出す。
生み出された呪詛の星は周囲の呪詛を吸って、強化されていく。
呪詛の種も氷雪人と言う条件で問題なく生成できた。
これで『呪法・破壊星』と『呪法・感染蔓』の準備は完了である。
「ezeerf、eci、dloc、redloc、tsedloc……」
ボス戦開始まで残り10秒ほどのタイミングで詠唱を開始。
これで『呪法・方違詠唱』も乗る。
「ヒュアアァァ……」
ボス戦開始。
私は白いローブを纏い、長い杖を握った氷雪人の姿を認識すると、ボス部屋の中に踏み込みつつ、呪詛の星と種をボスに向かって飛ばす。
そして三つが重なったタイミングで……
「『灼熱の邪眼・2』!」
『灼熱の邪眼・2』を発動。
「ヒュア!?」
氷雪人の頭部が炎に包まれ、そこから13本の蔓が伸びて氷雪人の体を焼いて……
≪称号『雪山侵入許可証』を獲得しました≫
≪報酬はメッセージに添付してお送りいたします≫
「あー……ごぶぅ」
『想像以上に弱いでチュね』
それで終わってしまった。
完全なオーバーキルである。
『呪法・感染蔓』のペナルティで260ダメージが返ってくるのは想定内だから別にいいのだが、まさか2回目の効果発動で仕留めるとは思っても居なかった。
与えた灼熱の量を確認する暇すらなかった。
△△△△△
『虹瞳の不老不死呪』・タル レベル22
HP:817/1,210
満腹度:132/150
干渉力:121
異形度:21
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪圏・薬壊れ毒と化す、遍在する内臓
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の名手』、『灼熱使い』、『沈黙使い』、『出血の達人』、『脚縛使い』、『恐怖使い』、『小人使い』、『暗闇使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『超克の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『七つの大呪を知る者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『???との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』、『雪山侵入許可証』
呪術・邪眼術:
『毒の邪眼・2』、『灼熱の邪眼・2』、『気絶の邪眼・1』、『沈黙の邪眼・2』、『出血の邪眼・1』、『小人の邪眼・1』、『淀縛の邪眼・1』、『恐怖の邪眼・3』、『飢渇の邪眼・1』、『暗闇の邪眼・2』、『禁忌・虹色の狂眼』
呪術・渇砂操作術-ザリチュ:
『取り込みの砂』、『眼球』、『腕』、『鼠』
呪法:
『呪法・増幅剣』、『呪法・感染蔓』、『呪法・貫通槍』、『呪法・方違詠唱』、『呪法・破壊星』
所持アイテム:
呪詛纏いの包帯服、熱拍の幼樹呪の腰布、『渇鼠の帽子呪』ザリチュ、『太陽に捧げる蛇蝎杖』ネツミテ、『呪山に通じる四輪』ドロシヒ、鑑定のルーペ、毒頭尾の蜻蛉呪の歯短剣×2、喉枯れの縛蔓呪のチョーカー、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、フェアリースケルズ、タルの身代わり藁人形、蜻蛉呪の望遠鏡etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール設置
呪怨台
呪怨台弐式・呪術の枝
▽▽▽▽▽
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『雪山侵入許可証』
効果:『試練・雪山への門』の雪小屋から放たれる攻撃が無効化される。
条件:『試練・雪山への門』のボスを討伐
汝は力を示した。寒き世界へと足を踏み入れるといい。
▽▽▽▽▽
「これでよし」
『北側はこれで自由に来れるでチュね』
なお、その後は雪山で適当にアイテムを回収して、雪山のお守りを入手。
ログアウトした。
さて、明日には『熱樹渇泥の呪界』が落ち着いているといいのだが……どうだろうか?
ちなみに雪山関係の鑑定結果はほぼほぼテンプレである。
△△△△△
N2 皆凍り付きの雪山
荒れ狂う吹雪、あらゆる熱を奪い去り、鎮めて、静寂で満たそうとする雪山。
雪山は今も冷たくなっていく。
呪詛濃度:5
[座標コード]
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雪山のお守り
レベル:15
耐久度:100/100
干渉力:100
浸食率:100/100
異形度:4
N2 皆凍り付きの雪山に蔓延する呪いを免れる事が出来るようになるお守り。
注意:制作者であるタル以外が所有していても効果はない。
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