305:トライアルスノウ-2
「森の中だと変化が分かり易いですね」
「そうね。ここまで明らかだと、検証がし易くて助かるわ」
さて、森のセーフティエリアを出発した私は『呪圏・薬壊れ毒と化す』の検証をしつつ、北の雪山に向かって移動している。
で、背後には私が森のセーフティエリアに現れたと聞きつけて、急いでやって来たストラスさんが居て、ストラスさんの後方50メートルから100メートルくらいのところには、何故か普通のプレイヤーたちが居る。
なお、私もストラスさんもお互いに許可を出して、現在はライブ配信中である。
それと、『熱樹渇泥の呪界』は昨日ほどではないが、今日も荒れ狂っている。
「最小範囲は半径10メートルくらいですか」
「残念ながらこれ以上は無理ね。気を抜くと直ぐに広がるし」
では、『呪圏・薬壊れ毒と化す』について。
まず効果範囲、これは最小で私を中心として、半径10メートルほど。
私の呪詛支配能力が不足している為か、これ以上縮めることは出来なかった。
呪詛濃度21の空間は私の周囲1メートル以下にまで抑えられるのに、不思議な話である。
逆に最大は私を中心として、半径2キロメートルほど。
どうやらその気になれば、私の呪詛支配圏全てに効果が及ぶらしく、支配範囲をアメーバのように動かせば、効果範囲を割と細かく調整できるようだった。
「あ、また回復アイテムが一つ有毒化しましたね」
「今回の検証用に用意された回復アイテムだったわね」
「はい、その通りです。ですので、お気になさらず。タル様は元々警告も出していましたし」
効果内容としては、HP、満腹度、状態異常を回復するアイテムの破壊、または有毒化が一定時間ごとに起きる。
ただし、有毒のアイテムは効果の対象に選ばれないので、既に有毒化したアイテムが破壊されたり、私のフェアリースケルズや斑豆は影響を受けないので、微量の毒を含んだ回復アイテムならば大丈夫と言う抜け道がある。
また、傾向として植物素材または回復の水を使ったアイテムの方が対象に選ばれやすいようだ。
が、そうでなければ、プレイヤーの持ち物だろうが、そこら辺に生えている薬草だろうが関係なく効果の対象に選ばれる。
「後ろのプレイヤーたちは、タル様の毒草を回収して何かを考えているようですね。後で検証班の仲間を向かわせて、話を聞いておきます」
「お願い。私も気にはなるから」
その証拠に先ほどストラスさんのアイテムが一つ有毒化したし、私が近寄った草花は次々と枯れるか、毒々しい色合いのものに変化している。
此処まで変化が激しいと、今後は『呪圏・薬壊れ毒と化す』の完全制御が叶わない限りは、サクリベスには間違っても近づくべきではないだろう。
安易に近づいたら、必ず大惨事になる。
「ん? 少し寒くなってきましたね。『試練・雪山への門』まではまだまだ遠いはずなんですが」
「そうね。対策をしておきましょうか」
少しだが周囲の気温が下がってきている。
私は熱拍の幼樹呪の懐炉札を毛皮袋から三枚ほど取り出すと、チョーカーに挟み込む形で一枚、胸で挟む形で一枚、包帯服の腰部分で挟み込む形で一枚、肌に接触させる。
「タル様、雪山対策のアイテムなのは分かりますけど、流石にそれは色々と拙い気が……」
「そうかしら? でも、手で持っているわけにはいかないし、こればかりは仕方がないと思うけど」
『見た目と言うか周囲にどう見えるかと言う話なんでチュけどねぇ』
「ああ、そう言う。まあ、どうでもいい話ね」
これで寒さ対策はたぶん大丈夫だろう。
まあ、私の氷結属性への耐性は酷い事になっているので、害意を持って攻撃されたら、これでも酷いことになりそうだが。
「……。ルート間違っていないわよね。私」
「間違っていませんね。最新の検証でも正しいルートです」
で、更に雪山に近づいたわけだが……うん、明らかに吹雪いている。
私の周囲でだけ。
幸いにしてカイロ3枚でダメージや状態異常は防げているが、対策が無かったら今頃は氷漬けだろう。
そして正規ルートでこれなのだから、正規ルートから外れたら瞬殺されるだろう。
「これはアレかしらね。森のセーフティエリアでサイレンが鳴ったのと同じで、私がカース化したことによって『試練・雪山への門』からの妨害が激しくなっているとか、そんな感じの奴」
「可能性は高いと思います。検証班で調べた限り、各方角の試練は外からやってくるカースに対抗するためのものであるようですし、それならばカースとなったタル様に対して激しい反応を示しても、何もおかしくはないと思います」
なお、私のカース化についてはセーフティエリアに私が現れた時の反応からバレバレだったので、既にストラスさんには話してある。
これについては、他プレイヤーの前に姿を現わした時点でやむを得ないだろう。
ただ、話してあるのは私がカース化したことと、カース化に伴って鑑定に対するカウンターが出来るようになったこと、カース化にはキャラロストの可能性がある事だけであり、私の正確な異形度やカース化する方法については黙っている。
ストラスさんもその辺は分かっているもので、詳しく尋ねるようなことはしなかった。
≪称号『超克の呪い人』を獲得しました≫
「あっ」
「どうかしました?」
「称号が手に入ったわ。移動しつつ確認するわね」
と、此処でまさかの称号獲得である。
それも字面からして強力そうな称号だ。
△△△△△
『虹瞳の不老不死呪』・タル レベル22
HP:1,210/1,210
満腹度:117/150
干渉力:121
異形度:21
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪圏・薬壊れ毒と化す、遍在する内臓
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の名手』、『灼熱使い』、『沈黙使い』、『出血の達人』、『脚縛使い』、『恐怖使い』、『小人使い』、『暗闇使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『超克の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『七つの大呪を知る者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『???との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』
呪術・邪眼術:
『毒の邪眼・2』、『灼熱の邪眼・2』、『気絶の邪眼・1』、『沈黙の邪眼・2』、『出血の邪眼・1』、『小人の邪眼・1』、『淀縛の邪眼・1』、『恐怖の邪眼・3』、『飢渇の邪眼・1』、『暗闇の邪眼・2』、『禁忌・虹色の狂眼』
呪術・渇砂操作術-ザリチュ:
『取り込みの砂』、『眼球』、『腕』、『鼠』
呪法:
『呪法・増幅剣』、『呪法・感染蔓』、『呪法・貫通槍』、『呪法・方違詠唱』、『呪法・破壊星』
所持アイテム:
呪詛纏いの包帯服、熱拍の幼樹呪の腰布、『渇鼠の帽子呪』ザリチュ、『太陽に捧げる蛇蝎杖』ネツミテ、『呪山に通じる四輪』ドロシヒ、鑑定のルーペ、毒頭尾の蜻蛉呪の歯短剣×2、喉枯れの縛蔓呪のチョーカー、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、フェアリースケルズ、タルの身代わり藁人形、蜻蛉呪の望遠鏡etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール設置
呪怨台
呪怨台弐式・呪術の枝
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『超克の呪い人』
効果:レベル不足ペナルティの軽減
条件:レベル不足のアイテムを累積で一定時間以上になるまで使い続ける。
資格など不要。手助けなど不要。私自身の技術を以って振るえばいいだけの事。
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「『蛮勇の呪い人』の上位互換称号だったわ」
「なるほど。それだけでもタル様がどれだけの無茶をしてきたかがよく分かりますね……」
レベル不足ペナルティの軽減。
そう言えば『太陽に捧げる蛇蝎杖』ネツミテなどは必要レベルにまるで足りていないのに、多少重い程度だった。
どうやら私はレベル不足の状態に慣れ過ぎてしまっていたらしい。
まあ、困る事でもないから、気にしないでおこう。
「と、見えてきたわね」
さて、そうこうしている内に私の視界に雪小屋と称すには少々立派で大きすぎる建物が見えてくる。
あれが『試練・雪山への門』だろう。
そして、『試練・雪山への門』に近づくにつれて、吹雪は少しずつ収まっていく。
「無事到着ね」
「ですね。このまま挑む感じですか?」
「勿論、そのつもりよ」
こうして私は無事に『試練・雪山への門』に到着。
セーフティエリアの登録を済ませると、そのまま試練へと向かった。
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『試練・雪山への門』
森と雪山の境界にある雪小屋。
この地の呪いは近寄るものを見定めると、惑わし、凍えさせ、帰還か死を求める。
例外は雪小屋の主が敵でないと認めたものだけである。
呪詛濃度:10
[座標コード]
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