300:ザリチュゴーレム-4
「ログインっと」
『よく来たでチュ』
さて、火曜日のログインである。
今日は大学の日程の都合で、普段より少し長めに出来そうだ。
「ん? ああ、眼球ゴーレムは残ったままなのね」
『待機状態になっていただけでチュからね。壊れない限りは残り続けるでチュよ』
「へー、それは便利ね」
ログインした私は、直ぐに自分の視覚の異常に気が付いた。
どうやら昨日作った二つの眼球ゴーレムとの視覚リンクがそのままになっていたらしい。
で、少し気になる事があったので、『鑑定のルーペ』を眼球ゴーレムに……いや、眼球ゴーレムから眼球ゴーレムに向ける形で『鑑定のルーペ』を設置して、鑑定してみよう。
△△△△△
『眼球』ゴーレム レベル22
HP:10/10
有効:無し
耐性:毒、灼熱、沈黙、出血、小人、恐怖、乾燥
▽▽▽▽▽
「へぇ、こうなるのね。と言うかHPが低いわね……」
『見る事に特化しているんでチュから、耐久性の無さには目をつむってほしいでチュ。まあ、足の一本が折れる程度なら耐えると思うでチュよ』
「なるほどね」
鑑定は上手くいった。
まあ、見る事に特化したゴーレムなのだし、ザリチュの言う通り耐久度については気にしないでおこう。
耐性もしっかりとしているし、以前言われたように水気にさえ気を付ければ、たぶん大丈夫。
「じゃあ、昨日の作業を再開しましょうか」
『分かったでチュ』
私は彫りかけの木材を持ってくると、それを加工し始めた。
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「よし、上手くいったみたいね」
『たるうぃが拘るから、読み込み時間が随分とかかったでチュよ』
彫って、ザリチュが取り込んで、読み込んで、『取り込みの砂』のCT明けを待って、結局ゲーム内で3時間ほどかかってしまった。
まあ、『取り込みの砂』のCT明けを待つ間に飢渇の泥呪の砂を回収してきたり、回収してきた砂を加工して強化出来たりしたので問題はないが。
なお、『ダマーヴァンド』の毒液を十分に吸わせた上で『灼熱の邪眼・2』と『飢渇の邪眼・1』で乾燥させ、呪怨台で呪うと言う強化を経た砂のスペックはこんな感じである。
△△△△△
飢渇の毒砂
レベル:20
耐久度:100/100
干渉力:115
浸食率:100/100
異形度:19
飢渇の泥呪の砂を加工して作られた有毒の黒い砂。
触れたものを乾燥させ、毒で蝕んでいく。
注意:触れると乾燥(1)、毒(1)の状態異常が付与されます。
▽▽▽▽▽
ちなみに、ゴーレムに変えても、元の砂の性質は受け継ぐ。
よって、この砂で眼球ゴーレムを作ると、触れているものに乾燥と毒を与えるゴーレムになる。
うん、外に漏れると危険だと判断したので、第五階層に新たに渇砂操作術専用の部屋を用意して、今後はそこでゴーレムになっていない砂の管理、『取り込みの砂』の使用をすることにした。
「とりあえずスペック確認からね」
『でチュねー』
さて、そろそろ話を新たなゴーレムに移すとしよう。
△△△△△
『虹瞳の不老不死呪』・タル レベル22
HP:1,210/1,210
満腹度:136/150
干渉力:121
異形度:21
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊、呪圏・薬壊れ毒と化す、遍在する内臓
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・3』、『毒を食らわば皿まで・3』、『鉄の胃袋・3』、『暴飲暴食・3』、『大飯食らい・2』、『呪物初生産』、『呪術初習得』、『呪法初習得』、『毒の名手』、『灼熱使い』、『沈黙使い』、『出血の達人』、『脚縛使い』、『恐怖使い』、『小人使い』、『暗闇使い』、『呪いが足りない』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの創造主』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『蛮勇の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『2ndナイトメアメダル-1位』、『七つの大呪を知る者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『呪いを支配するもの』、『???との邂逅者』、『呪限無を行き来するもの』、『砂漠侵入許可証』、『火山侵入許可証』、『虹瞳の不老不死呪』、『生ける呪い』
呪術・邪眼術:
『毒の邪眼・2』、『灼熱の邪眼・2』、『気絶の邪眼・1』、『沈黙の邪眼・2』、『出血の邪眼・1』、『小人の邪眼・1』、『淀縛の邪眼・1』、『恐怖の邪眼・3』、『飢渇の邪眼・1』、『暗闇の邪眼・2』、『禁忌・虹色の狂眼』
呪術・渇砂操作術-ザリチュ:
『取り込みの砂』、『眼球』、『腕』
呪法:
『呪法・増幅剣』、『呪法・感染蔓』、『呪法・貫通槍』、『呪法・方違詠唱』、『呪法・破壊星』
所持アイテム:
呪詛纏いの包帯服、熱拍の幼樹呪の腰布、『渇鼠の帽子呪』ザリチュ、『呪山に通じる四輪』ドロシヒ、鑑定のルーペ、毒頭尾の蜻蛉呪の歯短剣×2、喉枯れの縛蔓呪のチョーカー、毒頭尾の蜻蛉呪の毛皮袋、フェアリースケルズ、タルの身代わり藁人形、蜻蛉呪の望遠鏡etc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール、呪限無の石門、呪詛処理ツール設置
呪怨台
呪怨台弐式・呪術の枝
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△△△△△
『腕』
レベル:20
干渉力:110
CT:60s-120s
トリガー:[詠唱キー]
効果:周囲の砂を操って腕型ゴーレムを一体作成する。
腕の形をした作業特化ゴーレムを作成する。
セーフティエリア、マイルーム、非戦闘時に運用する場合、HPへのダメージ量が著しく低下する。
注意:CTはザリチュが処理するが、トリガーは着用者が引く必要がある。
注意:使用する度に着用者に最大HP低下(10)、最大満腹度低下(1)、干渉力低下(1)が付与される。
▽▽▽▽▽
「ふむ、カタログスペックには問題なし。ザリチュ」
『準備は完了しているでチュよ』
「よろしい。では、『腕』」
私がトリガーを引くことで、新たな種類のゴーレムが現れる。
飢渇の毒砂が集まって、私の右腕の肘から先の部分を模したゴーレムになる。
これが三つ目の渇砂操作術、『腕』である。
「うん、いい感じね」
腕ゴーレムは見た目はただの黒い腕だ。
だが、手は指の先端から手首に至るまで、何処もやすりのようにざらついている。
関節は砂であることを利用して、前後それぞれに向けては140度近く曲げられるし、左右への回転は自由かつ高速で回転できるようになっている。
きちんと指示を出せば、どんな角度であっても固定することが出来、指示を変えない限りは絶対に動かない。
関節が良く曲がるおかげで、右腕だけでなく左腕としても使える。
重量がそれなりにあって、動かすには多少力を入れる必要がある。
私が事前にザリチュに頼み込んだとおりだ。
そう、腕と言う名称であり、見た目も腕そのままだが、これの本質は腕ではないのだ。
「ふふふ」
『ちゅっちゅっちゅっう』
私は実際に使った時の感覚を確かめるべく、動き出す。
腕ゴーレムを何本か作り出すとそれをマイルームに運び込んだ。
そして、正方形の平たい形に加工した熱拍の幼樹呪の木材の角を、腕ゴーレムの指に当て、当てている部分の指を高速回転させた。
「うーん、いい感じね」
その途端、甲高い音と共に熱拍の幼樹呪の木材の角が削れた。
その結果に私は思わず笑顔になる。
「ザリチュ」
『分かっているでチュ』
そう、先ほども言ったとおり、腕ゴーレムは形こそ腕であるが、その本質は腕ではない。
「万能工具ZARICHU-ARMを全力で稼働させ、生活水準を一気に上げるわよ!!」
『ヒャッハー! やってやるでチュよおおぉぉ!!』
これは工具。
それも固定も削りも、きちんとした道具さえ持たせれば切断も穴あけも可能な万能工具である!
そして、私の手元には熱拍の幼樹呪の木材と言う優れた木材も、熱拍の幼樹呪の赤樹脂と言うちょうどいい塗料も、眼球ゴーレムと言う別角度から正確にものを見れる目もあった。
これらが組み合わさればどうなるのか?
決まっている。
「ふぅ……」
『やり切ったでチュ……』
机や椅子は勿論のこと、皿、カップ、フォーク、お椀などの普通の飲食に使う道具、試験管のように少量の液体を入れておくための筒などを作れる。
それどころか、熱拍の幼樹呪の木材が持つ熱耐性を利用すれば、ヤカンやフライパン、鍋と言った調理器具まで作ることが出来た。
そう、私が思い描く通りの道具を作り出すことが出来るのである。
よって、私の所有する各種機材のアップグレードに成功である。
うん、この結果には大満足である。
「あ」
『どうしたでチュか?』
一つ想定外だったのは……。
「もうログアウトの時間になってる」
『うんまあ、物作りが楽しかったから仕方がないでチュね』
あまりにも楽しすぎて時間が経つのを忘れるほどだったことだろうか。
まあ、仕方がない。
これは必要な事だった。
と言うわけで私はログアウトした。
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『腕』ゴーレム レベル22
HP:327/500
有効:無し
耐性:毒、灼熱、沈黙、出血、小人、恐怖、乾燥
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なお、腕ゴーレムは一番使った個体でも、半分も損耗していなかった。
そして壊れても呪術ですぐに作り直せる。
耐久度含めて、正に万能工具ZARICHU-ARMである。
で、実はこういうものも作っていた。
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『鼠』
レベル:20
干渉力:110
CT:60s-120s
トリガー:[詠唱キー]
効果:周囲の砂を操って鼠型ゴーレムを一体作成する。
鼠の形をしたゴーレムを作成する。
食料を与える事で、簡単かつ単純で食事以外の命令であれば、普通の鼠のように振る舞いつつこなせる。
腹の中は空洞になっており、口から様々な物を入れられる。
注意:CTはザリチュが処理するが、トリガーは着用者が引く必要がある。
注意:使用する度に着用者に最大HP低下(30)、最大満腹度低下(2)、干渉力低下(2)が付与される。
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まあ、こちらについてはきっとイベントで散々使うことになるので、詳しい事はその時までおいておこう。
10/25誤字訂正




