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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
5章:『熱樹渇泥の呪界』
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298:ザリチュゴーレム-3

『一時間でチュ。『眼球(ザリチュサイト)』のチャージを始めるでチュよ』

「案外早かったわね」

 熱拍の幼樹呪の木材を半分ほど削ったところで、ザリチュから話があった。

 これでようやく渇砂操作術がどういう物か見れる。


『『眼球(ザリチュサイト)』と違って、今作っているのは時間がかかっているでチュね』

「まあ、目玉よりも造形が複雑だし、こればかりは仕方がないわ」

 と言うわけで、現状では大きなこけしのようになっている木材をその場に置くと、私は『取り込みの砂(ザリチュメモリ)』にも使った飢渇の泥呪の砂……黒い砂の前に立つ。


『チャージ、完了したでチュ』

「分かったわ。では、『眼球(ザリチュサイト)』」

 詠唱キーを発して渇砂操作術が発動すると同時に、私の最大HP、最大満腹度、干渉力が減っていく。

 それに合わせて目の前の砂の一部が集まっていき、高さ5センチもない小山を作り出す。


『成功でチュ』

「へぇ、こうなるのね」

 砂の小山の中から『取り込みの砂』で取り込んだ型そっくりのゴーレム……四本足のカップの上に乗った目玉と言う、モンスター以外の何物でもない姿のゴーレムが出てきた。

 そんなゴーレム……眼球ゴーレムは事前に設定した可動域通りに四本の棘のような脚を動かして、私の方に近づいてくる。

 カップの上に乗った目玉は活発に動き回り、周囲の様子を窺っている。


「黒一色の砂から白や虹色が出るのね」

『そこはまあ、呪術でチュから』

 眼球ゴーレムのカップ部分は元の砂通り、黒一色である。

 だが目玉部分は白目部分は白く、虹彩部分は私と同じように虹色だ。

 どうやらカラーリング設定は事前に決めておけば、元の砂の色に関係なく着色されるらしい。


『では、そろそろ本題に行くでチュ。視界をリンクさせるでチュよ』

「分かったわ」

 眼球ゴーレムが私の顔へと瞳孔を向ける。


『リンクでチュ』

「ふむふむ。これは面白いわね」

 そして、ザリチュの言葉と同時に、眼球ゴーレムが見ている光景……他の目とは別角度から見た私の顔が、私の視界に割り込んでくる。


『問題はなさそうでチュかね?』

「ええ、問題ないわ」

『数は増やせそうでチュ?』

「んー。ある程度……そうね、7は増やせると思うわ。ザッピングする前提なら幾らでも増やせるでしょうけど。それはまた別の話よね」

『流石でチュねぇ。ざりちゅはたるうぃの素の目だけで限界でチュから、視覚情報の処理はたるうぃに任せるでチュよ』

「分かったわ」

 どうやらザリチュよりも私の方が視覚情報の処理は出来るらしい。

 まあ、そういう事なら視覚情報の処理は私がやるとしよう。


『続けて、眼球ゴーレムの体の操作権を渡すでチュ』

「分かったわ」

 さて、ゴーレムを操る上で、もう一つ重要事項がある。

 それは体の操作だ。

 これまで眼球ゴーレムがしてきた動きは、全てザリチュが命じた通りであった。

 今からは、それを私がやる事になる。


『渡したでチュ』

「……」

 そうしてザリチュから眼球ゴーレムの操作権を渡された瞬間、眼球ゴーレムはその場でへたれこんだ。


『駄目そうでチュか?』

「あー……んー……駄目ねこれは」

『呪詛の塊を操る感覚とそう変わらないと思うんでチュが……』

「感覚としては確かにそうね。けれど、複雑さがまるで別物ね。呪詛の塊を操るのは、なんだかんだでシンプルだし」

 私は眼球ゴーレムの足を動かして、どうにか立たせる。

 が、立った眼球ゴーレムの足はプルプルと震えているし、その震えが示すように私は現在必死で眼球ゴーレムの動きをコントロールしている。

 これほどの苦戦は『CNP』に初ログインして、空中浮遊を御そうとした時以来だろうか。


『んー……眼球ゴーレムを増やすでチュよ』

「分かったわ。『眼球(ザリチュサイト)』」

 眼球ゴーレムの数が二体に増える。

 そうして眼球ゴーレムの数が増え、視界も増えた瞬間に私は悟った。

 うん、これ無理だと。


『見事に混線したでチュねぇ』

「私には無理ね、これ。とてもじゃないけど、個別に動かす事なんて出来ないわ」

『ざりちゅには簡単に出来る事なんでチュけどねぇ』

 私は眼球ゴーレムの操作権をザリチュに渡す。

 するとザリチュは二体の眼球ゴーレムを操って、全く別のダンスを踊らせる。

 完全に別の動きをさせることが出来ている。


「これ、画像処理は私が。動きはザリチュが担当するのがよさそうね」

『でっチュねぇ』

「眼球ゴーレムだけを遠くに派遣して映像を見る事は可能よね?」

『可能でチュ。けど、眼球ゴーレムは動きが鈍いでチュからね。遠くへ派遣するなら、足になる別のゴーレムなり、方法なりを考える必要があるでチュね』

「まあ、そうなるわよね」

 これで眼球ゴーレムについて確認することは一通り出来たと思う。

 ザリチュの言う通り、足になるゴーレムについてはいずれ作っておくとしよう。

 そして足さえ出来ればだ。


「ふふふ、楽しみねぇ……特にイベントの時とか」

『ああ、次のイベント内容的に各地で戦闘が起きるのは確定でチュもんねぇ。たるうぃとしては……』

「ええ、どれも見逃したくないわ」

 次のイベントで私が見たいものを見たいだけ見れるようになるだろう。

 うん、実に楽しみだ。


「とは言え今日はもう時間ね。こっちの処理をしましょうか」

 さて、渇砂操作術については、今日はここまでにしておこう。

 で、ログアウト前に三種の危険なカース素材を合わせた物の処理をするとしよう。

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