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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
1章:『ネズミの塔』
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26:ダングルファーン-3

「酷い目に遭った……」

『チュウウゥゥ……』

 何と言うか数の暴力と言う物を見せつけられた気分である。

 セーフティーエリアに死に戻った私は、もはや死に戻り恒例の大の字で浮く姿勢となって、反省点や改善点を考える事にする。


「とりあえず対策が整うまでは、垂れ肉華シダの花には近づかないようにしておきましょう。現状の手札じゃどうしようもないわ」

 死に戻りする前にも分かっていたことだが、あの数を相手に私は無力である。


 『毒の魔眼・1(タルウィベーノ)』の効果対象は単体であり、例え小さなネズミたちの体力が見た目通りで、目一つ分の邪眼で倒せるとしても、あの数相手ではどれだけ体力があっても足りないし、撃ち込んでいる間にネズミたちが集ってお終いである。

 どう足掻いても目の数が足りない。


 トゥースナイフによる攻撃も同様。

 こちらは線で攻撃できるだけマシになるかもしれないが、あちらは面であるので焼け石に水だろう。

 と言うか、トゥースナイフによる攻撃を行ったら、それだけ床に腕が近づくのだ。

 いったいその瞬間に何匹のネズミが齧りついて来るのか……想像するだけでも恐ろしい。


「んー、最低でも範囲攻撃。可能なら、踏み込んだ相手を片っ端から倒せるような設置型、持続系の攻撃手段が欲しい所ね……逃げずに戦うのならだけど」

 やはり現時点であの群れの打倒は不可能。

 飛ぶか蔓に掴まるかは別として、取れる手段は逃げ一択だ。


「よし、もう一度行きましょうか」

 なお、お付きの毒吐きネズミ対策については既に思いついているので問題ない。

 きちんと周囲の確認を怠らなければ、反応が遅れる事もない。

 と言う訳で、私は先程の死に戻りまでに手に入れた垂れ肉華シダの蔓と葉をセーフティーエリアに置くと、再び第三階層に向かう。



----------



「右よし、左よし。まずは端を目指してみましょう」

 第三階層に着いた私は周囲に警戒を払いつつ、探索を再開する。

 今回まず向かうのはこのフロアの端だ。

 呪いによって空間が拡張されているのは間違いないからこそ、端がどうなっているのかが気になるのだ。

 と言う訳で可能な限り直進。

 通路の関係で曲がる時も、次の曲がり角で直進していた方向に向かう。

 なお、垂れ肉華シダは2メートル程度の長さの物があれば、適宜回収していく。


「扉が無い?」

 そうして探索をしていると、私は幾つかの奇妙な事に気付く。

 例えば今私が触れている壁の向こう側。

 叩いた時の音の反響具合から、壁の向こうに空間は存在している。

 他の通路の配置からしても、部屋一つ分のスペースはあるようだった。

 だがしかし、折角だからと周囲を一回りしてみたが、壁の中の空間に繋がるような扉はない。


「毒噛みネズミしか見かけない」

 普通に探索をしている限りでは、何処からともなく現れた毒噛みネズミしか見かけないのも不思議な点だ。

 あの小さなネズミの群れは姿どころか鳴き声も聞こえないし、毒吐きネズミの姿も見かけない。

 一体どうなっていると言うのだろうか。


「食害もない」

 第二階層と違って第三階層は通路の壁や床に食害が一切見られないのも奇妙な点だ。

 垂れ肉華シダが齧られないのは貴重な食料であると同時に、蔓は噛みたくても噛めない強度だからと言う事で納得がいくが、それは壁や床が齧られない理由にはならないだろう。


「んー……せいっ!」

 私は試しに近くの壁にトゥースナイフを突き立てる。

 すると、少しだけ刃が入って、壁が欠けた。


「ああなるほど」

 そして、直ぐに欠片が元の場所に戻っていって、何事もなかったかのように直ってしまった。

 どうやら、第三階層にかかっている呪いは空間を歪めるだけでなく、迷路のような構造を維持する働きも持っているらしい。

 もしかしたら何処かには壊しやすい場所なり再生が遅い場所なりがあって、そこから壁の中に入れるのかもしれないが、今の私がそう言うのを考えるのは止めておいた方が良さそうだ。


「それにしても端に着かないわね……」

 私は壁の向こう側を知ることを諦めると、フロアの端を目指して探索を再開する。

 しかし、既にゲーム内で小一時間は歩き回っていると思うのだが、それでも端に着く様子は見られない。

 こうなってくると、第三階層全体がループ構造のようになっている可能性も考えるべきだろうか。


「その内、地図を作ってみるべきかしらね」

 もしも本当にループ構造を含む迷路であるならば、厄介なことこの上ない。

 第三階層の壁や床は傷つけても、直ぐに修復される性質を持っているのだから、各所に傷跡を残して、一度通った場所かどうかを記しておくことも出来ないのだから。


「後はもう一つの階段を登ってみるのと、天井に開いていた穴からの侵入も考えるべきか」

 加えて第二階層には私が登ってきたのとは別にもう一つ階段があったし、天井に穴が開いている部分もあった。

 もしも、あれらからしか侵入できないエリアが存在しているとなったら、いったい第三階層の踏破にはどれくらいの時間がかかるのやら、と言うところである。

 とてもプレイヤーが最初に来ていいダンジョンとは思えないが……そこは何があっても受け入れる誓約書の範疇か。


「と、小部屋ね」

 此処で私は部屋の入口を見つける。

 扉はなく、ネズミの鳴き声の類も聞こえない。

 また、周囲には垂れ肉華シダの蕾や花も確認できない。

 なので私は扉の脇の壁に背を貼り付けると、右手の目だけを出して、部屋の中を覗き込む。


「登り階段か……」

 部屋の中にあったのは登り階段が一つ。

 敵影は無いし、危険物も見当たらない。


「第三階層を探るのは時間がかかりそうだし、一度第四階層を見ておきましょうか」

 私は部屋の中に入り、階段を上る。

 そして、踊り場で一時停止。

 登り切った先に壁が殆どないのと、ネズミの鳴き声が複数ある事、それと……


「呪いが少しだけ薄い?」

 感覚的にだが、呪詛濃度が低くなったのを感じ取った。

 勿論、感覚的にでしかないので、『鑑定のルーペ』できちんと調べてもおく。



△△△△△

ネズミの塔


呪いによって異形と化した大型のネズミたちが徘徊する塔型のダンジョン。

彼らは目に付くもの全てに食らいつき、呪い、蝕み、胃に納めるまで止まらない。


呪詛濃度:10

▽▽▽▽▽



「やっぱり下がってる。ああなるほど……そう言う事なのね」

 私の感覚通り、呪詛濃度は下がっていた。

 同時に一つの推測が立った。


「『ネズミの塔』の中心は第三階層の何処かに存在しているのね」

 『ネズミの塔』は如何なる方法を用いてかは分からないが、恐らくは周囲の呪詛を集め、留めることによってダンジョンとなっている。

 となれば必然的に中心部ほど呪詛が濃くなるはず。

 つまり、最も呪詛濃度が濃い場所こそがダンジョンの中心であり、ネズミたちを指揮している何者かが居る場所である可能性が高いと言う事だ。


「うん、それならまずは第四階層の探索ね」

 ならば第三階層の探索は後回しでいい。

 まずは第四階層を調べて、何かないかを探ってからにしよう。

 きっとそれからの方が、第三階層について深く知れるはずだ。

03/07誤字訂正

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― 新着の感想 ―
ダンジョンクリアしちゃったら常に濃度足らずにリスキル状態になる可能性があるってことでいいのかな? それともダンジョンは永続なのかな
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