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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
5章:『熱樹渇泥の呪界』
245/1000

245:アドン・エンハンス-5

本日より一話更新に戻ります。

ご了承ください。

「『毒の邪眼・1(タルウィベーノ)』」

「ーーー!?」

 熱拍の変異樹呪との戦闘は幸いにして上手くいっている。

 炎の腕の攻撃は一撃受ければただでは済まないし、熱拍の変異樹呪のサイズだとただの体当たりでも脅威である。

 しかし、どちらの攻撃も事前に察知すれば避ける事は十分に可能であり、それどころか反撃として、『呪法(アドン)増幅剣(エンハンス)』を乗せた邪眼術を撃ち込むチャンスになっている。


『これで毒は1,346。恐怖は972でチュ』

「そう、最悪後は逃げ続けるだけでもよくはあるのかしらね」

「ーーーーー!」

 熱拍の変異樹呪が震える炎の腕をがむしゃらに振り回す。

 私は距離を取る事でそれを難なく避けると、熱拍の幼樹呪について少しだけ考える。


「熱拍の幼樹呪は熱拍の樹呪の幼体。これは間違っていないわよね」

「『名前からして間違っていないと思うでチュ』」

「つまり、熱拍の幼樹呪を放置していると、熱拍の樹呪に成長する。となると熱拍の変異樹呪は、その名前の通りにイレギュラーな成長になるのかしらね」

「『たるうぃと言う外敵に対応する為の成長であり、変異でチュからねぇ。それで間違っていないと思うでチュよ』」

 熱拍の変異樹呪は動きを止めて、こちらの様子を窺っている。

 何か大技を仕掛けてくるかもしれない。

 警戒をしておいた方がよさそうだ。


「取れるアイテムに変化はあると思う?」

「『んー……変化している可能性はある……。と言うより、変化は確実にしていると思うでチュよ。あの歯や目は熱拍の幼樹呪から取れる可能性が存在しないと思うでチュから』」

「そう言えばそうね。回収する価値はありそうね。まあ、実際に回収するのはまた今度に……」

 熱拍の変異樹呪の脈打ち方が激しく、短くなっていく。

 私に炎の腕が出てきている穴を向けている。

 これは……そういう攻撃が来そうだ。

 そこまで考え、私は『気絶の邪眼・1(タルウィスタン)』の準備をしておく。


「ーーー!」

 熱拍の変異樹呪は大量の熱を砲弾のように放とうとした。

 なので私は砲弾が放たれる直前に『気絶の邪眼・1』を撃ち込んだ。

 そして……


「!?」

「なったわね」

『でっチュねぇ』

 熱拍の変異樹呪は内側から大爆発して、木っ端みじんに砕け散った。

 熱拍の変異樹呪の体が四方八方へと勢いよく飛び散っていくと同時に、熱波も吹き荒れた。

 線や点ではなく、面による攻撃であるため、この熱波を防ぐことは出来ない。

 熱波の熱量は私を即死させるのに十分な量を持っている。

 こうなると、私としてはもう諦めの境地に入るしかない。


「作っておいてよかった身代わり人形」

『燃えるのはゴメンでチュからねぇ』

 が、熱波が私に触れると共に、腰に提げておいた身代わり人形が発火。

 数秒かけて燃え尽き、その間に熱波は問題のないレベルにまで落ちついていた。


「はぁ。今日はもう切り上げましょうか」

『樹皮の回収をしなくていいんでチュか?』

「先にインベントリを更新して容量を増やしましょう。で、まずは熱拍の幼樹呪をまとめて回収して、それを一通り加工して準備を整えてから、変異樹呪の回収を目指しましょう」

 身代わり人形については、後で作り直しておこう。

 熱拍の変異樹呪の素材については、先ほどの喰らったら即死が確定するような攻撃を止めるのではなく、避けながら戦い、倒さなければならない事を考えると、少し後回しにした方が妥当だろう。

 と言うわけで、私たちは今回『熱樹渇泥の呪界』に入った時に使った熱拍の幼樹呪に移動すると、配信を切り上げてから『ダマーヴァンド』へと帰還した。

 今日の成果は僅かな量の赤樹脂と、毒頭尾の蜻蛉呪の死体がまるごと一つか。

 まあ、十分いい成果だと思っておこう。



----------



『メールがー、来てるでチュよー。あ、二件あるでチュよ』

「二件?」

 さて、『ダマーヴァンド』に戻ってきた私は、早速毒頭尾の蜻蛉呪の死体を昨日と同じように解体していく。

 死体が完璧に近い状態であるためか、今回は新たに目玉が取れた。

 が、カースと言う生物のように見えても生物でない存在であるためか、これ以上の新規素材はなさそうだった。



△△△△△

毒頭尾の蜻蛉呪の目玉

レベル:20

耐久度:100/100

干渉力:110

浸食率:100/100

異形度:15


毒頭尾の蜻蛉呪が持つ目玉。

空中での戦いにおいては彼我の距離を正確に把握することは重要である。

そのため、焦点を合わせた相手との距離を正確に測れる力を有している。

▽▽▽▽▽



『スクナとストラスからでチュね』

「珍しい二人からねぇ。内容は……」

 とりあえず毒頭尾の蜻蛉呪の目玉は望遠鏡の改良に使おう。

 純粋にパワーアップ出来そうだ。


「スクナのは営業メールね。これ」

『ちょうど良いんじゃないでチュか?』

「まあ、元から見学には行きたいとは思っていたし、丁度よくはあるわね」

 さて、二件のメールであるが、どうやら私の呪限無探索配信を受けてのものであるようだ。

 どうやらスクナは、私の『呪法・増幅剣』の為に操る呪詛の剣の動きを見て、もっと動きを磨く余地があると判断したらしい。

 そこで、自分の道場に見学に来ないかと営業のメールを送ってきたらしい。

 7月、8月、9月の見学可能日も明記されている。

 実に都合がいい。


「8月の前半中に訪ねる気はあります。そう、返しておきましょうか」

『分かったでチュ』

 とりあえず、明日辺りにザリアと相談して、以前に話した通り、可能ならクカタチを含めた三人で訪れてみてもいいだろう。


「ストラスさんからのメールは……呪法の検証協力のお願い。対価は地上の第二マップに移動出来るようになるための試練攻略への協力、ね」

『どうするでチュか?』

 明々後日、日曜日に検証と攻略か。

 まあ、悪いお誘いではない。

 検証班の助力によって私の移動可能範囲は楽に広がる。

 私から情報を得る事によって、検証班の検証は進む。

 正しくwin-winの関係だ。

 あ、よく見たら先日のインタビューのお礼もしたいと書いてある。

 気にしなくていいと言ったんだけど、まあ、受け取れるなら受け取っておくか。


「受けましょうか。第二マップと言う未知の場所に行けるようにしておくのは悪い事じゃないわ」

『じゃあ、そう返しておくでチュねー』

 こんな感じに私は二件のメールに返信した。


「さて、今日得た物で色々と作りましょうか」

『分かったでチュ』

 では、次に移るとしよう。

09/09誤字訂正

09/10誤字訂正

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