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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
4章:『呪術師が導く呪詛の宴』
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223:2ndナイトメアアフター-2

「では、インタビューを……」

「……」

「イベントお疲れさまでした。タル様、ストラス様」

 そう、私とストラスさんは確かに二人で部屋に入った。

 だが部屋の中には私、ストラスさん、そして執事服姿の男性、C7-096の姿があった。


「あ、貴方はいったい……」

「私、C7-096と申しまして、『CNP』の管理、運営を補助するAIの一体でございます」

「管理AI、それがどうしてここに……」

「単刀直入に申し上げれば、お二人のインタビューの手伝いでございます」

 C7-096はそう言うと静かに一礼。

 その後、何処からともなく取り出した赤いランプを私に手渡す。


「タル様。『CNP』内の事柄について幾つかイメージをしてみてください」

「イメージ?」

 言われたとおりに私は『CNP』内のアレコレについてイメージする。

 するとザリチュ、『ダマーヴァンド』、ハルワ、ザリアと言ったものを思い浮かべた時にはランプは何の反応も示さなかったが、『七つの大呪』、仮称アジ・ダハーカ、『禁忌・虹色の狂眼(ゲイザリマン)』を授けた蘇芳色の蜥蜴と言ったものを思い浮かべた途端に赤いランプは激しい警告音と共に強く輝いた。


「ああなるほど。喋ってもいい事柄と喋ってはいけない事柄、と言う事ね」

「そういう事です。『CNP』は呪いを扱うゲームです。故に双方の許諾があろうとも、話してはいけない、話せばペナルティが課せられる事柄も存在します。そして、このようなインタビューでペナルティが課せられるのは、誰にとっても不幸な事でしょう」

「そうですね」

「まあ、そうね」

「しかし、ユーザー自身が積極的かつ良い方向にゲームを盛り上げようとしてくれているのに、その手助けをしないと言うのも、運営としてはどうかと思うのです。そういう訳で、妥協点として今回に限り、そちらのランプを貸し出したいと思います。ランプが反応した時点でストラス様にタル様の言葉は届かなくなりますので、どうぞご自由にお話しくださいませ」

「分かったわ。だいぶ話すのが楽になるでしょうし、ありがとう」

「運営に感謝を申し上げさせていただきますね」

「いえいえ、これも運営の仕事ですので。では、私はこれにて失礼」

 うん、これは便利アイテムと言っていいだろう。

 間違ってNGワードを言ってしまい、悲惨なことになる事がなくなるのだから。

 ぶっちゃけ、イベントが終わっても欲しいくらいだ。

 同様の効果があるアイテムが作れないか、少し試してみてもいいかもしれない。


「ではタル様。改めてインタビューを始めさせていただきます。よろしくお願いします」

「ええ、よろしくお願いするわね」

 では、インタビュー開始である。


「早速ですが、今回のインタビューの目的は『ダマーヴァンド』の斑豆作成についてです。あのアイテムは呪いによる品種改良と言う新たな技術が用いられた事もそうですが、呪術習得用アイテムと違って後追いに成功したプレイヤーが現状居ないために、色々と言われています」

「ええ、分かってるわ」

 まずは状況説明。

 どうやら、品種改良の後追いはまだいないらしい。


「まず作成理由は何だったのでしょうか?」

「食糧事情の改善ね。ウチの白豆は満腹度回復はよくても、味は微妙だった。赤豆はその逆ね」

「なるほど。素材に二種類の豆以外にも垂れ肉華シダの葉、カロエ・シマイルナムンの灰、『ダマーヴァンド』の毒液を用いているのは?」

「毒液はいつもの水気代わりだけど、葉と灰はフレーバーテキストを見ての事ね。品種改良に大量の呪詛が必要なことは明らかだったから」

「ふむふむ」

 ここまではランプの反応なし。

 恐らくだが、後追いプレイヤーたちもここまでは自分で調べて理解していると思う。

 自分なりの工夫として、同様の効果を持つ別アイテムだって試しているだろう。


「呪怨台で生物は呪えないのに、よくやろうと思ったな、と言う質問もありますね」

「呪怨台で生物を呪えない……ああ、すっかり忘れてたわ」

「忘れてたんですか」

「いやぁ、そのちょっと前にクカタチがモンスターの死体をそのまま利用していた事もあったから、ちょっと忘れてたわ」

「そう言えば、タル様はクカタチ様に色々と教えたという話もありましたね。もしよろしければ、後でそちらの内容についても改めて伺ってもいいですか? もしかしたら高異形度プレイヤーたちにとって重要な話になるのかもしれないので」

「別に構わないわよ。まあ、後でね」

 呪怨台の件は……すっかり忘れていた。

 確かに非生物限定とか書かれていた気がする。

 とは言え、垂れ肉華シダの苔が普段は生物扱いなのに、壁や天井から剥がすとアイテムになる事からして、『CNP』のその辺の判定は案外曖昧であるし、上手くいったなら問題はないだろう。


「話は戻しますが、呪怨台ではどのように呪ったのですか?」

「んー……大気中の呪詛に干渉をして、『大気中の呪詛に含まれている反魂や再誕と言った『七つの大呪』を利用した』……って、奇麗に隠れたわね」

「そのようですね。つまり、表に出せない手法を用いたと言う事ですか」

「表に出せないと言うか、現時点では知るべきでない情報と言うべきかも。私はこれまでの道のりのおかげで知ることが出来たけれど、本当はもっと後に得る情報なんじゃないかしら」

「なるほど」

 まあ、この世界の根幹に関わる事なので、開示できないのは当然である。


「つまり、その情報さえ得られれば、他のプレイヤーが同様の事を行う事は可能なのですね」

「可能なはずよ。私は特別な道具や技術の類を使った気はない。道具も技術も模倣は可能であるはずよ」

「なるほど。ありがとうございます」

 なんにせよ、品種改良が私だけの技術でない事だけは確かな事実である。

 だから、これだけは他よりも力強く言った。


「では、品種改良についてはこれくらいにしておくとして、クカタチ様に教えた事柄について、話せる範囲で構いませんから、教えていただけますか?」

「ええ、いいわよ」

 その後、私はストラスさんにクカタチに教えたのとだいたい同じ話をした。

 こちらについては、別にまとめておくとのことだった。

 他にも、折角だからと言う事で、今回のイベント中に私が使った幾つかの技術についてや普段のプレイについてもインタビューを受けて、語っておいた。


「ありがとうございました。タル様。このお礼は必ず」

「検証班にはいつも世話になっているから、そんなに気にしなくても大丈夫よ?」

「いいえ、それでも必ずです」

 で、インタビュー終了後。

 ストラスさんはインタビューの動画を掲示板に上げた。

 そして、私とストラスさんは分かれ、そのままイベントも終了となった。

08/25誤字訂正

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