222:2ndナイトメアアフター-1
「あ、これは当たりだわ」
箱の中身を確認するとともに、鑑定を行った私の感想はそれだった。
当の鑑定結果がこれである。
△△△△△
無限調味料・塩と砂糖
レベル:1
耐久度:100/100
干渉力:100
浸食率:100/100
異形度:1
尽きる事がない塩と砂糖が収められた箱。
ただし、他の食物と混ぜる形で使用しないと、一定時間で消滅する。
▽▽▽▽▽
「無限の塩と砂糖……」
「料理専用と言う感じですが……」
「いやー、ザリアと調理用アイテム一式は交換したのだけど、アレってあくまでも調理用の道具だけで、調味料はなかったから、実にちょうどいいわね」
うん、これは嬉しいものだ。
塩と砂糖が無限に手に入るならば、作れる料理の種類が一気に増える。
と言うかだ。
「これでその気になれば醤油と味噌も作れるわね。豆と小麦はあるんだし」
「「「!?」」」
醤油と味噌、理論上は作れます。
まあ、素人がネットを見ながらやることになるだろうから、上手くいく保証なんて何処にもないのだけれど。
「でも、タルさんが作ると有毒化しそう」
「あー、その可能性は否定しないわ。最低でも辛味は強まるでしょうね。まあ、こればかりは仕方がないし、自分で使う分にはそれを理解した上で使えば問題ないでしょ」
とりあえず後で一通り調べておこう。
後、さっきのライトリ以外の反応からして、サクリベスには醤油と味噌、ないのだろうか?
まあ、例えなくてもその内誰かが作るか。
『では続けて、アイテム交換の方も一挙にやってしまおうと思います。あ、今は目録だけで、実体化はメンテナンス終了後になりますので、ご了承ください』
「ふむふむ」
「目録が長い」
「『ダマーヴァンド』産の植物を一通り出したのよ」
アイテム交換会も行われたか。
今回私は『ダマーヴァンド』産の植物を一通り出している。
毒草、出血毒草、沈黙毒草と言った面々は言うに及ばず、小人の樹の葉も出しているし、干渉力低下の葉を生やすと共に引き抜くと恐怖の効果がある叫び声を上げる海月型のマンドラゴラモドキも出している。
勿論、いずれも乾燥させた状態なので、外で繁殖することはないが、上手く使えば状態異常を引き起こすことも防ぐことも出来るだろうし、使い捨てのアイテムだけでなく恒久的に効果が続く装備品にも出来るはず。
いや、上手くいけば呪術の習得にも繋がるかもしれない。
で、そうやって一通り出した成果は?
「あー……なんかハーブが中心ね……」
こちらはあまり芳しいものではなさそうだ。
セージやバジル、パセリと言った、個人的に安価なイメージがあるハーブに大半が変わっている。
後はジャガイモやニンジン、レタスと言った野菜類か。
確かに私視点では入手が難しい代物であるし、手に入れて損があるものでもない。
しかし、出来る事ならば、もっと珍しいアイテムが欲しかったのが本音である。
「ハズレ?」
「んー、料理の幅は広がると思うわ。乾燥させたものじゃなくて生のものが来ているから、上手くやれば『ダマーヴァンド』で増えるはず……」
『薬草。以前手に入れたのは全滅していたでチュねぇ』
「ああいや、駄目かもしれないわね。よくて有毒化かしら」
増やす事はたぶん出来る。
ハーブ類って繁殖力旺盛と言うか、他の植物を駆逐していくイメージすらあるし。
だが、無事に増えてくれるかと言うと……ザリチュの言う通り、怪しい気もする。
まあ、試してみるしかないか。
駄目でも損はない。
『さて、これにてイベントは終了ですが、メンテナンスが明けるのは18時の予定となっています。それまでは交流マップをお楽しみください。どうかこれからも『CNP』をよろしくお願いします』
おっと、これで閉会式は終了か。
えーと、現在の時刻は17時ちょっと前。
では、ログアウトを……と、思ったが、ある意味丁度いい状況か。
「ライトリカブトさん。今日は貴方のおかげで優勝することが出来たわ。本当に感謝している。ありがとう」
「こちらこそありがとう。タルさん、優勝できたのは貴方の力でもある。また機会があればその時は是非」
「ええ、勿論」
まずはライトリカブトと挨拶し、握手を交わす。
私たちの行為に周囲から改めて祝福の声と拍手の音が鳴り響く。
「タルさん。ザリアとクカタチに伝えておいて、『いい戦いだった。また戦いましょう』って」
「分かったわ。伝えておく」
ザリアとクカタチへのメッセージも受け取っておく。
ザリアに伝えれば、自動的にクカタチにも伝わるはずなので、これはリアルの方で伝えておくとしよう。
「アカバベナ。それに『光華団』の皆さん、ご支援ありがとうございました」
「こちらこそ、感謝いたします。おかげで『光華団』は多くの物を得ることが出来ました」
「そうね。タルさんこそありがとう、『光華団』団長として、改めてお礼を言わせてもらうわ」
アカバベナ、ライトローズさんとも握手を交わす。
さて、後はだ。
「ストラスさん。折角だからこのまま交流マップで私の取材をしてしまいましょう」
「いいんですか? タル様」
「優勝して気分もいいし、向こうで会うのも大変だから、ちょうどいいでしょ」
「分かりました。では、場所を移しましょう。と、録画も始めておきますね」
私とストラスさんは一緒に『光華団』の打ち合わせ部屋を後にすると、別の部屋を借りて、二人でそこに入った。
では、ストラスさんからの取材を受けるとしよう。