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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
4章:『呪術師が導く呪詛の宴』
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218:2ndナイトメアバトル-7

「決勝進出。おめでとうございます」

「ありがとうアカバベナ。それに他の『光華団』の人たちも。おかげで勝てたわ」

「うん、情報に戦術もだけど、爆弾は本当に助かった」

 私とライトリは打ち合わせ部屋に戻ってきた。

 さて、その打ち合わせ部屋だが、いつの間にか『光華団』団長であるライトローズさん含めて、『光華団』の表裏で主要な面々が集まっているらしく、私たち含めて10人以上居るようだった。

 どうやら、決勝戦は彼女たち全員で私とライトリをサポートしてくれるらしい。


「さて、それでは時間もありませんので、早速ですがザリア・クカタチ組との戦いについて打ち合わせをしましょう」

「分かった」

「そうね」

 私は席に座りつつ掲示板を開くと、ザリア・クカタチ組のこれまでの戦いについての確認を8分割で手早く流していく。


「まずザリアですが、彼女についてはそこまで問題はないと私たちは判断しています」

「と言うと?」

「ザリアは有名プレイヤーであり、砂漠素材の装備品やアイテムを保有していますが、それらは絶対のアドバンテージになるほどではありません。実力についても、集団戦の指揮者としては上の中か下くらいはありますが、個人で見るならば中の上がいい所でしょう」

「なるほど」

 ザリアのこれまでの戦いぶりは……まあ、以前とそこまで変わらないか。

 沈黙の状態異常を付与できる針の投擲。

 出血の状態異常が隠されている細剣による連撃。

 後は煙玉や属性攻撃が出来る投擲アイテム、回復の水くらいか。

 隠し玉を持っている可能性は否定できないが、単純に高威力な隠し玉なら、マントデア・シロホワ組との戦いで切っているはずなので、そちらの方向での警戒度は下げていいか。


「注意するべきはやはり出血付与攻撃ですね。見た目も派手ですが、それ以上に威力が高い。鎧や盾による防御をある程度貫通している節もあります。ライトリは回避中心で動いた方がいいでしょう」

「分かった」

「倒し方については、タルさんが『灼熱の邪眼・1(タルウィスコド)』以外を使えば、簡単に行けると思います。タルさんの状態異常をガードしたり、回復できるほどの呪術やアイテムを持っている感じはないので」

「なるほど。考えておくわ」

 うんまあ、ザリアはやっぱり良くも悪くもオーソドックスと言うか、順当に実力があると言う感じだ。

 それならば、こちらも変な奇策に走るよりは、いつも通りに戦った方が勝ち目は多そうだ。


「問題はクカタチです。彼女については今まで表に出てきていなかった高異形度プレイヤーと言う事もあり、情報が少ないです。現状分かっている範囲では、攻撃面は体にかかっている呪いを利用した隠密と奇襲、拘束。防御面については物理攻撃に極めて強く、火炎系にも強い。電撃系は有効。氷結系はレベル次第。状態異常はものによる。と言うところですね」

「ものによる?」

「灼熱の無効化、毒への抵抗、この辺が見られていますね。沈黙は入りますが、重症化した時は不明です」

 私はクカタチの動きに絞って動画を見ていくが……あー、うん、これは厳しい。

 アカバベナの言う通り、スライム特有の体を生かしての奇襲や拘束も危険だし、普通の攻撃が効いていない様子も見られる。

 だがそれ以上に厳しいのはだ。


「不味いわね。クカタチはこれまで一度も呪術を使っていないわ」

 クカタチが呪術をこれまでに使っていない点だ。


「……。クカタチが呪術持ちの根拠は?」

「私、普段のマップの方で、クカタチに色々と教えているのよ。で、呪術を習得しているのは確実なんだけど、それっぽいのがどこにも見られないのよね」

「「「……」」」

「タルさん、その話……クカタチに何を教えたのかについて、詳しく聞かせてもらっていいですか?」

「ええいいわよ。そんな大したことは教えてないし」

 とりあえず、『光華団』の皆さんが色々と言いたげな視線を私に向けてきたので、私がクカタチについて知っている情報を一通り……ではなく、決勝に関わりそうな部分だけ掻い摘んで話していく。

 で、その結果としてだ。


「こう、何と言うか……プレイヤーとして間違っていないと言うか、むしろ新人を導く先達としては極めて善良な部類の行為をしているのだけど、だからこそ苦しむ事に今なっているという極めて微妙な表情や心境にならざるを得ない感じの……何とも言えない気持ちになるわね」

「まあ、気持ちは分かるわ。勝つために必要な情報は悉く抜けている物ね」

 ライトローズさんが『光華団』の皆さんの気持ちを代表した言葉を発し、私を含めたこの場に居る全員がそれに対して頷いた。

 うん、確実に勝とうと考えるなら、確かにクカタチの呪術については知っておきたかった。

 けれど、ねぇ?

 未知が減ると言うのもあるが、ライトローズさんの言う通り、教えとしては本当にあれで正しいし、今となってはもうどうしようもない事なので、諦めるしかないだろう。


「ちなみにタルさん。クカタチの呪術の習得方法は?」

「私に告げた通りなら、死体にしたモンスターをゾンビ化して踊り食い?」

「「「……」」」

 何故か全員が天を仰いだ。

 いやまあ、言いたいことは分かるが、でも私はアドバイスしただけ……ああでも、システム的にはクカタチも私の弟子扱いだったか。


「ゴホン、なんにせよ、クカタチ対策は決まっています。どの程度効果はあるかは不明ですが、対スライム用を想定して試作したアイテムがあるので、そちらを渡します。奇襲については、周囲の水たまりや熱をどれだけ察することが出来るかですね」

「分かった」

「分かったわ。呪術については?」

「マントデアとの戦いで出していない事から、使用条件に何かあるのか、搦め手の要素が強いものと見ます。油断はできませんが、クカタチ自身の攻撃よりは警戒度は低くしていいと思います」

 アカバベナが話を戻す。

 ちなみに『光華団』が持つクカタチへの警戒度は、今回のイベントの結果、私、マントデア、スクナと言った面々に並ぶことになったらしい。

 おめでとう、クカタチ。


「これに勝てば優勝です。強敵ですが、全力を尽くしましょう」

「そうね」

「分かった」

 さて、決勝の時間である。

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