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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
4章:『呪術師が導く呪詛の宴』
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205:2ndナイトメアヒート-6

「ふぅ。始末完了ね」

「お疲れ様です」

 最後の一人……出血の重症化による爆破を凌いで生き残った一角の女性を無事に毒殺した私の前に、小人状態を解除したライトリがやってくる。

 そう、チートだの透明化だの叫ばれたが、何と言う事はない。

 真実は私の『小人の邪眼・1(タルウィミーニ)』によって私とライトリを小人化、私は木の中に姿を隠し、ライトリは倒されたプレイヤーたちとは入れ替わりになる形で丘から離れることによって、やり過ごしただけである。

 きっと今頃は大いに掲示板が賑わっている事だろう。


「そうね。モグモグ、流石に疲れたわ。モグモグ、想定外が二つほどあったし」

「想定外ですか。まあ、確かにありましたね」

 さて、実を言えば、先ほどまでのプレイヤーとの戦いだが、私とライトリにとっての想定外が二つ程あった。


F(フレンドリー)F(ファイヤ)を嫌って遠距離攻撃をしないのはまさかでしたね」

「呪術でなくとも、槍や斧、石に矢、バクチクの実ぐらいは飛んでくると思っていたんだけどね。」

 一つは遠距離攻撃による先制攻撃が一切存在しなかったこと。

 まあ、これについては仕方がない部分はあるのだろう。

 今回倒したプレイヤーは18人、倒したペアの数は9組。

 彼らは9人9人の二手に分かれて仕掛けてきていたので、本来ならば倒したプレイヤーは18人10組となるのが妥当だ。

 なのに9組だったのは、それぞれの方面からやってきた集団のリーダー……『エギアズ』の誰かともう一人がペアだったからだ。

 私を始末するためとはいえ、単独で動いて他プレイヤーを説得するとは、実に大胆な動きである。


「おかげでつまらなかったわ」

「そこは楽に終わってよかったで流しましょう」

 で、だからこそ遠距離攻撃は出来なかった。

 逆方向から来ているであろう仲間を攻撃してしまう可能性があったから。

 うん、ライトリの言う通り楽にはなったが、見たことがない遠距離攻撃手段が見られないという点ではつまらない。

 なお、戦術面から見た場合、前方を走る仲間へ誤射する可能性を鑑みてもなお、先制して私たちに痛打を与えられる可能性、丘に張った罠を潰せるメリットが存在するので、遠距離攻撃をしない理由はない。

 これは単純に向こうの手落ちだ。


「彼女が生き残った理由は何だと思います?」

「咄嗟の判断力による部分が大きいわね。他にも色々と要因はあるけど」

 私たちは丘に散らばった正八面体を回収していく。

 うん、アイテム18個は実に美味しい。


「呪術による地面の隆起、壁となった他プレイヤーの体、彼女自身の体勢と耐性、位置、判断力。素晴らしいと言う他ないわね」

「なるほど」

 想定外の二つ目は私が最後に『毒の邪眼・1(タルウィベーノ)』で始末した女性が、最初の爆発を生き残ったこと。

 ただこちらは一つ目と違って、思わず微笑んでしまう程度には嬉しい想定外だ。

 なにせ、地面を隆起させるという未知の呪術を見せてくれたのだから。

 しかも、使用の仕方や判断も素晴らしかった。

 今後が楽しみなプレイヤーと言う他ない。


「ちなみにその女性の手を掴んだ男性プレイヤー、彼を先に『沈黙の邪眼・1(タルウィセーレ)』で黙らせたのは?」

「時間稼ぎがメインね。彼が冷静で、あの炎でも躊躇わず逃げ出そうとしていたと言うのもあるけど」

「時間稼ぎ……ああ、『出血の邪眼・1(タルウィブリド)』ですね」

「そうそう。ライトリに『小人の邪眼・1(タルウィミーニ)』を使った都合上、彼らが丘に来るまで、邪眼術は使えなかったのよ。で、彼らを始末するには出血の重症化が必要なのだけど、それの準備には時間がかかる。だから、『灼熱の邪眼・1(タルウィスコド)』による火計、そこに加えて一人倒れてもらうことによる口論と内輪もめで時間を稼いだの」

 ちなみに『灼熱の邪眼・1(タルウィスコド)』の熱量で火計が出来たのは、周辺呪詛への干渉によって着火点の呪詛濃度を上げていたのと、事前に『ダマーヴァンド』の小麦の藁を乾かしたものを丘の至る所に仕掛けておいたからである。

 『ダマーヴァンド』の小麦は灼熱の状態異常に関係するためなのか、実は乾燥させるとよく燃えるのだ。


「つまり、最初から最後までタルさんの手のひらの上だったというわけですね」

「おおよそはね。あ、観戦者への説明はそろそろいいかしら?」

「たぶん大丈夫です」

 さて、アイテムの回収は完了。

 減ったHPと満腹度の回復も完了。

 観戦者への必要な説明も完了。

 では、そろそろ次の行動と行こうか。


「残りのペア数は100組を切っています」

「3回目のエリア縮小に合わせて、他プレイヤーの居場所が通知されたからでしょうね」

 既に残りのプレイヤー数は200人以下。

 となると、今後を考えてここに改めて拠点を設営して、一時休息と言うのも手の一つではあるだろう。


「攻めますか?」

「攻めましょう」

 だが私たちは攻めることにした。

 理由はシンプルだ。


「ここで勝負が停滞すると、サプライズイベントが起きて、碌でもない事になりかねないもの」

「そうですね。サプライズイベントは私たちにとっては起きない方が都合がいい。積極的に動くべきでしょう」

 一刻も早く勝ちを決めにかかった方が、結果的に勝率がよくなると判断したからだ。

 と言うか、サプライズイベントと言う名の運ゲーは御免被る。


「あ、でも、私はしばらく肩の上で寝てるわ。何かあったら起こして」

「では、落ちないように紐で結び付けておきましょう」

 ライトリは何処かからか細い紐を取り出すと、脇に紐を通し、鎧の肩の上で寝転がった私の腹の上で軽く紐を結ぶ。

 そしてライトリはゆっくりと移動を開始。

 私はしばらくの間、休憩することにした。

08/07誤字訂正

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