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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
4章:『呪術師が導く呪詛の宴』
203/1000

203:2ndナイトメアヒート-4

「ふうん、こんな感じに表示されるの」

「前回の予選ラストのサプライズと同じですね」

 さて、予選開始から一時間半ほど経ったところで一つ変化があった。

 周囲のプレイヤーの位置を示す矢印が十数本、私たちの周りに現れ、直ぐに消えたのだ。

 そして、私とライトリの間にも矢印が生じて、こちらは長時間残っている。

 どうやらこれが、ただ引きこもって隠れ続けるプレイヤー対策の追加要素のようだ。


「一時間、碌に動いていないと10分くらい残り続けるようね。距離は……この感じだと半径数百メートルぐらいが表示範囲なのかしら」

「そんなところだと思います。で、こちらに突っ込んでくる影はありますか?」

「現状は見えないわね。南西の森から来られると多少反応が遅れるところだけど、矢印が残り続けているおかげか、逆に攻める気にならないみたい」

「まあ、矢印が残り続ける=長時間その場から動いていない=動く必要がなくなるような備えをしている。と言う判断をするのが妥当です。今はまだ仕掛ける時ではないでしょう」

 現在の残りの組数は225組。

 ただし、ペアの片方が死んで、残り片方が生き残っている場合もあるので、プレイヤーの数としては300人少々と言うところだろうか。

 うん、次のエリア縮小に伴う呪詛濃度上昇で仕掛けるとしよう。

 矢印の方向と長さから、狙えそうな相手が小さくだが見えている。


「呪詛濃度上昇。呪詛濃度6。ここからは私は近距離の警戒に専念します」

「任せたわ。私は集中するわ」

 予選開始から2時間経過。

 呪詛濃度が6に上がる。

 私たちが居る丘はまだまだエリアの範囲内。

 よろしい、条件は整った。


「すぅ……はぁ……」

 私は狙いを付けたプレイヤーの周囲の呪詛濃度を、予選エリア全体の呪詛濃度上昇に合わせて上げていく。

 距離があるので時間もかかるし、集中力もいるが、ビル街で準備の一つとして練習はしていたので問題はない。

 で、無事に彼ら視点では呪詛濃度6のまま、実際の呪詛濃度は8程度になった。


「では……」

 私は望遠鏡を構えて、そのプレイヤーの姿を確認する。

 彼らは……明らかに慌てていた。

 大きく首を振り、何かを叫びつつ、周囲を見渡している。

 まあ、私に見られているというメッセージの表示のためだろう。

 私の邪眼の射程と恐ろしさはよく知られているのだから。


「照射開始」

 そんな彼らの片方に対して私は『出血の邪眼・1(タルウィブリド)』を調整した動作キーで発動して当てていく。

 斉射ではなく、0.6秒ずつチャージの開始をずらすことで、持続的に当てていく。

 これには理由があって、隠密性を考えた時に、一瞬だけ光るよりもずっと光り続けている方が場所が割れづらいからだ。

 まあ、赤と黒と紫の霧の中で、数百メートル離れた場所にある、16センチ四方の物体から放たれた、蘇芳色の大して強くない光を見つけろと言われたら、私なら「ふざけるな」と言うところだが。


「モグモグ。モグモグ」

 私は斑豆を食べて満腹度を回復しつつ、出血の状態異常を付与していく。

 私が付与していく中で、彼らは何もされていないように感じても、このままこの場に留まるのはまずいと判断したのか勢いよく駆けていく。

 そして、勢いよく駆けて行く彼らは進路方向上に居た別のペアと遭遇。

 私は別のペアが望遠鏡の視界内に入ってしまう前に、望遠鏡を目から外す。

 直後。


「爆発音が……」

「結構響くわねぇ」

 爆音と共に戦闘が起きた場所で赤い花が咲き、生き残っているペアの数が2つ減った。

 どうやら上手くいったようだ。


「一応確認。出血の重症化ですね」

「ええそうよ。まあ、本戦で使う機会はないでしょうね。一人爆破するのに1分半は最低でも欲しいところだから」

「なるほど。あ、聞きたいことは、本戦突破決定後の休み時間中にまとめてで。今話すと、放送で漏れますから」

「そうね。気を付けておくわ」

 私は一応望遠鏡で現場を確認。

 うん、小さなクレーターが出来上がっていると同時に、人影は一つもなくなっている。


「さて、もう二回ぐらいは同じように爆破したいところね」

「そうですね。3回目の縮小で仕掛けてくる可能性もありますから、その前にもう何度か仕掛けて、印象を付けておきたいです」

 私は満腹度の回復を終えると、ライトリの頭上に移動して、周囲を一望。

 次の獲物を探す。


「よし、見つけたわ」

 そして、3回目の縮小までに、最初の一組含めて三組を爆破。

 その巻き添えも含めて、七組のペアを脱落させた。

 で、都合のいいことに、二組ほど上手く逃げてくれた。


「仕掛けてきますかね」

「仕掛けてくるわ。仕掛けてこなくても問題はないけど」

 そうして3回目のエリア縮小が起きる。

 同時に私たちの周囲のプレイヤーの位置を示す矢印が現れる。

 その数、18本。


「アハッ」

「っ!?」

 私は思わず笑い声を上げてしまった。

 18本の矢印の内、9本は南西の森から、残り9本は北西から北回りで東の方までに分散して現れた。

 そして、その全ての矢印が、矢印の主がこちらに近づくのを示すように、短くなっていっている。

 また、私の目は南西の森の中で複数のプレイヤーが動く姿を木々の揺れから捉え始めているし、北と東方面のプレイヤーたちが身を隠す気も、他のプレイヤーを気にする気もなく、走って真っ直ぐに突っ込んでくる姿を捉えている。


「いいわぁ。想定通りのチーミングね」

 間違いない。

 この18人は私を倒すという目的の為に共同戦線を張っている。

 まあ、妥当な判断だろう。

 予選マップの広大かつ見通しの悪いフィールドの中で、私と言う予選限定で規格外の化け物を仕留めようと思うのであれば、これくらいしなければ話にもならないだろうから。

 この状況を起こす為に、出血の重症化と言う派手な殺害手段だって使ったのだから。


「タルさん」

「ええ、こちらも動きましょうか」

 そう、ここまでは想定の範囲内。

 だから私もライトリも、事前の想定通りに動く事にする。

 さて、未知はあるだろうか?

 無いなら……全滅させるだけだが。

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