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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
4章:『呪術師が導く呪詛の宴』
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200:2ndナイトメアヒート-1

『盛り上がっているかあぁぁ! 化け物共おおおぉぉぉ!!』

「ふうううぅぅぅ! あれ?」

「うえええぇぇぇぇい! 知ってた!! 他の皆が乗らないのは知ってた!!」

 予選開始までゲーム内であと30分ほど。

 小部屋で待機しつつ、装備品の最終チェックと掲示板情報の確認を行っていた私の耳に前回と同じようなノリの声が聞こえてきた。

 あ、ブラクロとクカタチの盛り上がりについてはスルーで。


『はい。知っている方はお久しぶり、知らない方は初めまして。私、『CNP』運営、イベント・広報担当の万捻(まんねじ)と申します』

「えっ、皆さん乗らないんですか? お姉ちゃんも……」

「趣味じゃないわ」

 その声と共にテレビに表示されたのは、前回と同様のデフォルメされた海月アバターを操る運営の姿だった。

 今更だが、此処で海月アバターを使う運営が海月モチーフの『カース』であるカロエ・シマイルナムンを出した理由とかあるのだろうか。

 理由などない気もするが、少しだけ気になる。


『さて、早速ですがイベントの概要について話していきましょうか。前回からの変更点もありますし、ここで説明する以上、知らなかったと言う言い訳は通じませんからねー』

 万捻さんが予選についての説明を始める。

 まあ、公式サイトで確認したとおりだし、ぶっちゃけて言ってしまえば、とにかく最後の一組として残れればそれで問題はない。


『以上がルール説明となります。さて、続いて今回の参加人数ですが……21,728人となりました。幸いなことに偶数です。誰かのトラウマを刺激するようなことにはならずに済みました』

「誰かのトラウマ……」

「ああ、好きな子と二人組作ってとかそういう……」

「元が奇数の組でもやったりするらしいですよ。あれ……」

 参加人数は2万人ちょっとか。

 前回と比べるとだいぶ減った気がする。

 発売から一か月半経って、PvPに興味がないプレイヤーや実力に不安があるプレイヤー、それからペア戦と言うことで退いたプレイヤーも居そうか。


『さて、参加人数が21,728人と言うことは、AIによって作られるペアの数は10,864組となります。現在、この画面の裏ではペア組とグループ分けが急ピッチで行われていますねー』

 ペアは1万組ちょっと。

 さて、誰と組むことになるのやら。


『で、ペアの数が10,864組と言うことで、これを16分割しますと、679組となります。これが1つのグループの中で貴方たちが生き残りをかけて戦う相手の数となります。結構な数ですねぇ』

「ゴクリ……」

「……」

 ま、事前の打ち合わせ時間で合わないと判断したら、単独行動でライバルを始末して回ろう。

 『小人の邪眼・1(タルウィミーニ)』を事前に使っていけば、隠密で敵を始末し易くなるはずだ。

 実は1グループ内のプレイヤーの数は前回よりも多いのだが、ペアの都合上、遭遇頻度は前回より下がるだろうし。


『はい。準備完了です。ペアとグループの割り振りが完了しました。選手の方々はカウントダウン終了と共に準備室に転送され、そこでペアの相手と顔を合わせていただきます』

 どうやら今回は一斉転送らしい。

 テレビには1分ほどのカウントダウンが表示されている。

 うん、ペアを組む相手との打ち合わせを考えたら妥当な処置。

 はっきり言えば、打ち合わせの時点で予選は始まっていると言っても過言ではないのだし。


『では最後に少しだけ。ペアの相手と仲良くしろとは言いません。しかし、足の引っ張り合いほどナンセンスな物もないです。ですので、お互いにお互いの事を利用しましょう。それぐらいでないと、この先生き残れませんよ』

 言われるまでもないと言えば、言われるまでもない事であるが、運営が堂々とお互いに利用し合えとは……相変わらずのトップハント社と言うべきだろうか。


『ではではー、転送でーす』

 テレビのカウントダウンが0となって、私を含め、小部屋に居たメンバーたちは打ち合わせ部屋に飛ばされた。


「さて……」

 打ち合わせ部屋は全面コンクリート張りの出入り口がない部屋で、椅子が二つ、机が一つ、ロッカーが二つ置かれていた。

 私の姿は交流エリア用の低異形度アバターではなく、普段のアバターに戻っている。

 そして、部屋の中には私以外にもう一人の姿がある。

 どうやら彼女が私のペアであるようだ。


「プロゲーマーチーム『光華団』所属。ライトリカブト。久しぶりと言った方が正しいかな? 邪眼妖精のタルさん」

「そうね。久しぶりと言った方が正しいと思うわ。これで顔を合わせるのは何度目かになるし。でも、初めましてでもあるわ。私は貴方の名前を知らなかったから」

 ライトリカブト。

 光る花の頭を持った女性で、手には騎馬槍(ランス)、首から下は全身くまなく金属鎧に覆われている。

 あ、光で眩しいから分かりづらかったが、よく見れば頭の花は光る花が何十本と生えている結果なのか。

 そして髪の下には金属製のパーツのようなものが見えている。


「覚えていたの」

「覚えているわよ」

 さて、先述の通り、彼女の名前は今知ったところだが、彼女の顔自体は何度か見たことがある。

 一度目は前回のイベントの予選終盤。

 二度目はイベント終了後のビル街のセーフティーエリアの一件だったかな?

 カロエ・シマイルナムンとの戦いにも彼女は参戦していただろうから、その時を含めれば三度は顔を合わせていることになるだろうか。

 なんにせよだ。


「さて、勝ちを狙いにいく為に、お互いの手札をある程度公開してから戦術を考えましょうか」

「分かった」

 彼女は確実に当たりの部類だ。

 だからこそ油断なく戦いを進めるとしよう。

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