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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
4章:『呪術師が導く呪詛の宴』
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195:2ndナイトメアプリペア-1

≪イベント『呪術師が導く呪詛の宴』を開始します≫

 日曜日の10時、『CNP』の第二回公式イベントが始まった。

 日程は前回と同様で、昼から予選、15時から本戦だ。

 ただ、今回は開始直前にペアを組むことになる為か、PvPイベントに参加する予定があるプレイヤーは、予選開始5分前にはログインしておくようにとのことだった。


「……。やっぱり慣れないわね」

『前もそんな感じだったでチュねぇ』

 さて、私はイベント開始と同時にログイン。

 前回と同様の風景が視界に入ってきて、裸足で着地する。

 うん、空中浮遊、虫の翅、増えた目がないので、普段との感覚の差がひどい。


「おっ、タルだ……」

「邪眼妖精だ……」

「相変わらず見た目はいいんだよなぁ……」

 うーん、一応このイベントの空間も悪夢……精神世界の一種であるはず。

 それならば、先日の『恐怖の邪眼・1(タルウィテラー)』習得で訪れた空間と同様に認識を調整することで姿を変えられると思うが……。

 駄目か。

 試してみたが、目の一つすら増やせそうにない。

 まあ、高異形度アバターの存在はゲストには衝撃的過ぎると言うのが、交流エリアでは低異形度アバターに変える理由の一つであった気がするし、これは仕方がないか。


「ま、いいわ。ザリアを探しましょうか」

『例の取引でチュね』

 私は周囲を一通り見渡してから、ザリアを探す為に適当に交流エリアをうろつき始めようとした。

 勿論、歩いて見つからなかった時の為にフレンド機能を利用してメッセージも送ることにする。


「タル」

「あら、ザリア」

 が、数歩もしない内どころか、メッセージを送るよりも早くザリアの方から声がかかった。


「よく見つかったわね」

「少し注意深く見れば分かるわ」

「注意深く?」

「タルに向かって呪詛の霧が流れ込んでいるし、タルの周りだけ霧が濃いのよ。装備品の影響でしょうけど、結構差があるわよ」

「ああ、なるほど」

『納得でチュね』

 ザリアの言葉で分かった。

 私は呪詛纏いの包帯服、赤魔宝石の腕輪、呪い樹の炭珠の足環と言った装備の効果で周囲一帯の呪詛を引き寄せ、留めている。

 ザリアはそれを辿って私を見つけた訳か。

 うん、理屈は通ってる。


「呪詛の霧?」

「言われてみれば……違うか?」

「分からねぇ……」

「でも、その差を見極めているプレイヤーは少数派っぽいわね」

「まあ、今のタルだと分かりづらいでしょうね」

 さてザリアの装備だが……カロエ・シマイルナムンの戦いで見かけた時からだいぶ変わっている。

 肩を出した皮鎧は動きやすさと華やかさを両立している。

 靴は砂漠に合わせてか、砂が入らないように口を絞れるブーツになっている。

 レイピアはナックルガードが付いて、華やかさが増していそうだ。

 一番の変化は首から提げているものが、アップグレードによって花飾りのついた『鑑定のルーペ』だけでなく、武骨なゴーグルが加わっている事か。

 恐らくだが、このゴーグルが呪詛濃度による視界制限を改善するアイテムなのだろう。


「ま、いいわ。早いところ取引はしちゃいましょう」

「そうね。適当に部屋を借りて、そこで交換しちゃいましょうか」

 とりあえず私たちは目的を達するために、適当に部屋を借りて移動。

 備え付けのマイルームから、相手に渡す予定のアイテムをそれぞれに持ってくる。


「調理用アイテム一式、初心者向け量産設備、確かに受け取ったわ」

 私はザリアから予定通りのアイテムを二つ受け取る。

 見た目はどちらもただの箱だが、中身が目的のものであることは確認済みだ。

 と言うわけで、こちらはマイルームに運び込んでおく。


「乾燥した出血毒草50本、生の出血毒草10本、その他……毒草、沈黙毒草、『ダマーヴァンド』の赤豆、白豆、小麦。うん、こちらも問題ないわ」

 ザリアの方も問題なしだったようで、マイルームに運び込む。


「それにしても、茎どころか根っこと土が付いたままの毒草や沈黙毒草を求めたってことは、量産する気があるってことよね。本気なの?」

「本気よ。と言ってもやるのは私じゃなくて、知り合いの生産プレイヤーだけど」

 さて、ザリアが求めたアイテムだが、実はこれ、ザリアだけが求めた訳ではない。

 どうにも間接的にとは言え、私と取引が出来る事を何処かからか聞きつけたプレイヤーが居たらしく、私が求めたアイテムの購入費用を一部負担する代わりに、出血毒草以外のアイテムを求めてきたのだ。

 彼らの目的は状態異常関連アイテムの量産。

 上手く栽培、製薬が出来れば、毒や沈黙、灼熱の状態異常に対する特効薬が作れるかもしれないとのことだった。


「と言うか、タルこそよかったの? 明らかにタルの優位性を崩す事に繋がると思うんだけど」

「そこは大丈夫よ。特効薬と言っても、問答無用でスタック値を0に出来る物が早々出来るとは思えないもの。よくて、スタック値を何十減らすとか、そういう物でしょう。だったら、私の邪眼にとってはそこまで問題にはならないわ」

 後、『ダマーヴァンド』産の全ての植物を出してはいないので、未対策の邪眼をぶち込めばそれで終わりと言うのもある。

 なお、今回の取引の結果として、一時的に耐性を得る薬も出来るかもしれないが、そちらは出来たところで邪眼にとってはカモでしかないだろうから、私は気にしていない。


「それに……」

「それに?」

「『ダマーヴァンド』以外で『ダマーヴァンド』産の植物を育てようとしたらどうなるのか、単純にこの点が気になるのよね」

「ああなるほど。上手くいく保証もなければ、マトモに育つとも限らないものね。場合によってはとんでもない変化を遂げる可能性もあるのか。確かに気になるかもしれないわね」

 とりあえず今回の取引はどう転んでも私の損にはならなさそうなので、問題はないのである。


「じゃ、取引はこれで終わり。イベントまで交流エリアをうろつきましょうか」

「そうね。ブラクロたちとの合流もあるし、前回同様、何処かでNPCとのフラグが立つかもしれないものね」

『楽しみでチュねー』

 そうして無事に取引を終えた私とザリアは交流エリアへと戻っていった。

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