190:メイクアイテムズ-1
「よし、問題なさそうね」
『ふぅ、すっきりした気分でチュ』
さて、イベントまで一週間を切った。
が、これまでに手に入れた素材の処理はまだ終わっていなかったので、引き続き処理をしていく。
その結果として、月曜日から水曜日までの三日間で、私は呪詛纏いの包帯服の改良、おもちゃの望遠鏡の修理、ザリチュの強化を行った。
まあ、何事もなく終わったので、結果だけを示すとしよう。
「じゃ、改めて一つずつ確認ね」
『チュ』
私は腰に提げるようにしたおもちゃの望遠鏡を手に取る。
サイズは縮めた状態では手のひらに収まる程度で、伸ばせば私の手の手首から指先までより少し長いくらいか。
鑑定結果はこんな感じ。
△△△△△
おもちゃの望遠鏡
レベル:3
耐久度:100/100
干渉力:100
浸食率:100/100
異形度:1
子供向けの望遠鏡で、遠くのものが近くにあるように見える。
倍率は2倍~5倍
注意:このアイテムを介して生物を見た場合、見られた生物に使用者の存在が通知されます。
▽▽▽▽▽
「うーん、1キロ先が200メートル先ぐらいに見えるって、かなり強力よね」
『でチュねー』
私はおもちゃの望遠鏡を顔の目に当てると、ビル街の遠くの方で、モンスターと戦っているプレイヤーたちを見てみる。
うん、裸眼では何かが居るくらいしか見えないが、望遠鏡を最大倍率で伸ばせば、一人一人の装備くらいは問題なく見える。
これならば、見られているプレイヤーやモンスターに私の存在が伝わってもなお使い道はあるだろう。
『で、確認でチュけど使えるんでチュよね?』
「ええ、問題なく使えるわ」
なお、望遠鏡越しに狙いをつければ、望遠鏡を当てていない目でも邪眼術を発動、当てることは可能。
『鑑定のルーペ』による鑑定が行えることも確認済みである。
現に今もモンスターに13の目で『恐怖の邪眼・3』を放ってみたのだが、しっかりと効果は出ている。
「じゃあ次ね」
望遠鏡の向こうの戦闘が終わったところで、確認再開。
私はカロエ・シマイルナムンの皮を縫い付けた上で呪った呪詛纏いの包帯服を鑑定する。
△△△△△
呪詛纏いの包帯服
レベル:12
耐久度:100/100
干渉力:105
浸食率:100/100
異形度:6
『毒鼠の首魁』ベノムラードの素材を用いて作られた、包帯を幾重にも体に巻き付けたような見た目の服。
周囲の呪詛を操作し、着用者が生存するのに適した呪詛濃度に近づける効果を持っており、呪詛濃度を最大5まで増減させられる。
毒無効(5)と高い毒耐性と微弱な物理耐性を有しており、外部からのこれらの力に強くなる。
周囲の呪詛の一部を吸収する事で耐久度が回復する。
注意:着用中火炎耐性が低下する(中)
注意:この衣服を低異形度のものが見ると嫌悪感を抱く(小)
▽▽▽▽▽
『微妙に性能も上がっているんでチュね』
「そうね。微妙に防御力が上がっているわ」
一番の変化はやはり自動で耐久度が回復する事か。
これのおかげで、相手が装備破壊能力持ちでもなければ、呪詛纏いの包帯服を失うことによって私が詰む可能性はだいぶ低くなったと言えるだろう。
なお、見た目の変化は皆無である。
「じゃ、最後にザリチュね」
『分かったでチュ』
さて、最後にザリチュである。
ザリチュの強化はダエーワたちの毛皮にブリキの指揮官バッジを使った。
具体的には帽子の内側に触り心地のよい毛皮を縫い付け、外側にアクセントのようにバッジを縫い付けた上で呪っている。
鑑定結果はこんな感じだ。
△△△△△
『鼠の奇帽』ザリチュ
レベル:13
耐久度:100/100
干渉力:112
浸食率:100/100
異形度:12
『毒鼠の首魁』ベノムラードの素材などを用いて作られた三角帽子。
自己意志を持っており、勝手に動き、鳴き、嗅ぐが、使い手以外には聞こえず、望めばたぶん静かにはなる。
微弱ながら物理耐性、毒耐性を有しており、外部からのこれらの力に強くなる。
非生物でありながら動き回るため、ある種のゴーレムでもあるが、成長の余地も存在する。
着用している生物が望んだ範囲、あるいは自分の意志で体を動かせない状態にある時、この帽子の意志で体を動かせる。
注意:着用中火炎耐性が低下する(小)
注意:この帽子を低異形度のものが見ると嫌悪感を抱く(小)
▽▽▽▽▽
「……」
『……』
うん、確認が必要そうだ。
「ザリチュ。包み隠さず話しなさい。どの程度私の体は動かせる?」
『あー……走って逃げるくらいは出来ると思うでチュ。邪眼術はたぶん無理でチュね。アレはたるうぃが覚えているものでチュから』
「喋る事は?」
『たぶん可能でチュ』
「部屋の中で少し試してみましょうか」
『分かったでチュ』
私はザリチュに体の制御権を渡してみる。
するとザリチュは……
「そ、想像以上にきついでチュね……か、体が覚えているから、立つことは出来るようでチュが……」
『ふうん、こうなるのね』
全体的にプルプルしていた。
どうやら、空中浮遊のせいで、私の体を上手く制御できないらしい。
そして、私の精神はそのままなので、視界が激しく揺さぶられるというか、とにかく違和感が激しい感じだった。
「うーん、基本的に逃げる事にしか使えなさそうね」
『そ、そうなりそうでチュね……あ、邪眼術は使える気配もなかったでチュよ』
「分かったわ」
まあ、私が睡眠や気絶の状態異常を受けても、逃げ回ることぐらいは可能になったと考えれば、悪いことではないか。
ザリチュが裏切る可能性は0ではないが。
「さて、これで確認は終わりね」
『でチュね。で、明日、明後日、明々後日の三日間はどうするでチュ?』
「んー、とりあえずイベント中に食べるアイテムと、アイテム交換会に出すためのアイテムの確保は必須。それといい加減に『邪眼術士』の称号についても検証をしないといけない頃合いなのよね。ま、適当に進めましょうか」
『分かったでチュ』
私は頭の中で算段をつけていく。
うん、イベントまでには間に合うな。
「あ、一応聞いておくけど、ログアウト中に私の体を動かすのは無理よね」
『無理だから安心しておくでチュよ』
「運営に質問っと」
『信用してないでチュねぇ……』
なお、念のために運営に確認したところ、ログアウト中は私のアバターと一緒にザリチュも消えているので、操作は不可能とのことだった。
うん、これで安心してログアウトできる。
07/24誤字訂正




