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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
1章:『ネズミの塔』
19/1000

19:タルウィベーノ-2

「あ、キーボード出てきた」

 私はステータス欄に表示された≪名称を設定してください≫の部分に意識を向ける。

 すると、キーボードが表示された。

 求められているのは……私が今後使っていく呪術の総称。

 そして、名前は力であると言わんばかりに、入力した名称に相応しい呪術は習得しやすくなるが、相応しくない呪術は習得しづらくなるとの事だった。

 なお、命名からリアル時間で一ヶ月ほど経てば、再命名も可能だが、その際には習得している呪術に変化が生じる危険があるとの事である。


「……。もしかしなくとも、もっと簡単な手段で呪術が入手できた?」

 呪術の名称を設定するのは別に構わない。

 それによって習得難易度に差が生じるのも問題は無い。

 ただこの様子だと……基本の呪術の習得の難易度はそこまで高くないように思える。

 少なくとも、この世の物とは思えないような経験が必要だとは思えなかった。


「ま、まあいいわ。過ぎた事だし。憶測でしかないし」

 私は声を震わせつつ、念のために掲示板を一通り確認。

 文字列検索も使ってそれらしい話が無いか調べたが、該当しそうな話は無かった。

 まあ、仮にもっと簡単な習得方法があっても、今のダンジョンから出られない私に、その習得方法が使えるとは限らないのだけど。


「気を取り直して名前入力ね」

 自分の呪術に名前を付けるまでは、習得した呪術の詳細を確認することも出来ない。

 なので、現状での名付けはほぼ完全なフィーリングで行う他ない。


「魔眼術……なんか違うわね。呪眼……ない。妖眼……ない。邪眼……うん、いいかしらね」

 私は自分の呪術に邪眼術と名付けた。

 習得しているのは『毒の魔眼・1』だが、私としては善悪あるいは正邪両方を内包しているイメージを持つ“魔眼”という言葉よりも、邪な力に偏っている“邪眼”と言う言葉の方が、より私の望む方向性に近づくように思えたのだ。

 だから、魔眼術ではなく邪眼術なのだ。


「さて、『毒の魔眼・1』の詳細確認ね」

 そうして邪眼術と名付けたことによって、『毒の魔眼・1』の詳細が鑑定できるようになった。

 と言う訳で鑑定。



△△△△△

『毒の魔眼・1』

レベル:1

干渉力:100

CT:10s-5s

トリガー:≪設定してください≫

効果:対象周囲の呪詛濃度×1の毒を与える


貴方の目から放たれる呪いは、敵がどれほど硬い鎧に身を包んでいても関係ない。

何故ならば相手の体内に直接毒を生じさせるのだから。

注意:使用する度に自身周囲の呪詛濃度×1のダメージを受ける。

▽▽▽▽▽



「ふむふむ」

 習得元になった毒噛みネズミの前歯が持つ呪術『鼠毒生成・1』の影響は大きそうだ。

 与える毒の量が一緒だし。


「CTは……チャージタイムとクールタイムか」

 発動を決定してから、実際に放てるようになるまで10秒、これがチャージタイム。

 放ってから、次に撃てるようになるまで5秒、これがクールタイム。

 ただ、クールタイムについては、次に『毒の魔眼・1』が撃てるようになるまでの時間ではなく、次に呪術を使えるようになるまでの時間のようだ。

 つまり、今後私が新たな呪術を習得したとして、『毒の魔眼・1』を撃ったら、5秒経つまでは『毒の魔眼・1』も新たな呪術も使えないと言う事だ。


「ん? ああでもこれ、チャージタイムもクールタイムも目一つ一つで別に計算なんだ」

 私の体にかかっている呪い、増えた目と邪眼術と言う名称の相乗効果(シナジー)なのだろうか。

 どうやら私は13の目を利用した呪術であれば、個別に呪術を発動でき、斉射も連射も出来るようになっているらしい。

 消費するHPの量に気を付ける必要はあるだろうが、使い勝手は中々良さそうだ。


「トリガーは……ああなるほど。一種の安全装置か」

 トリガーについてはチャージタイムが終わった後に発動させるために必要な動作あるいは詠唱のようだ。

 一瞬、必要なのかと思ったが、もしもチャージタイムが終わると同時に自動発動と言う形式だと、望ましくない流れになる場合もあるだろう。

 例えば、チャージタイムが終わる間際に魔眼を放つ対象が消失してしまったら……対象を失った呪いが何処に飛んでいくかなど考えたくもない。


「さて、どうしたものかしらね」

 なお、自分の魔眼の発動を防ぐのに目を瞑るという行為を取るのはただの自殺行為である。

 目を瞑るとは瞼を下ろすと言う事、瞼が降ろされた目が映しているのは暗闇ではなく自分の瞼の裏側。

 つまり、自分自身が魔眼の対象になってお終いである。


「誤射しないようなワードあるいは動作の設定か……」

 トリガーの設定は結構な問題がある。

 詠唱ならば発音しか見ていないので、一般的な単語をトリガーにしてしまうと、折角のトリガーなのに誤射をしてしまうのだ。

 かと言って発しづらい単語を選んでしまえば、実践で使う時に発動したくても発動出来なくなってしまう。

 これは動作でも同じこと。

 つまり……適度な長さで一般的でない単語が正解か。


「『タルウィベーノ』」

≪『毒の魔眼・1』に詠唱式トリガーが設定されました≫

 無事にトリガーが設定されたらしい。

 名前の由来としては……ある意味私のあだ名が基になっている。

 私の本名、樽笊(たるざる)羽衣(うい)

 親しい人間は名字を略してタル、あるいは名前だけを呼んでウイと呼ぶ。

 そして、これは中学生の頃に一部の男子が私に付けたあだ名だが……名字と名前を合わせてタルウィと言うあだ名がある。

 ゾロアスター教の悪魔、タルウィと全く同じ響きのあだ名が。


「口が使えない時に備えて動作設定をしてもいいけど……まあいいか」

 何故、そんなあだ名を男子共が私に付けたのかは分からない。

 知りたくもない。

 中二病と思春期が組み合わさっているのは想像に難くないが、悪魔呼ばわりされた私本人としてはふざけるなと言う思いしかない。

 まあ、だからこそ私の魔眼に付けるには相応しい名前だとは思うが。

 なお、『タルウィベーノ』のベーノは、ベノムのベーノだ。


「さて、試しに使ってみますか」

 私は右手の目に意識を集中。

 『毒の魔眼・1』を使うと考える。

 すると私の視界の一つに円状のゲージが表示され、少しずつ減っていく。

 なるほど、これがチャージタイムか。

 そうしてゲージがゼロになると、トリガーを引くように言われる。


「『毒の魔眼・1(タルウィベーノ)』」

 それなりの声量で発せられた詠唱が終わると同時に、それまで虹色に輝いていた右手の目が深緑色の光を発して輝く。

 そして私を対象として『毒の魔眼・1』が発動。


「む……」

 違和感は……少しだけあった。

 心臓の拍動が一瞬だけ強くなったような感じがした。

 しかし、傷口の類は一切ないし、特定の方向からの衝撃のような物もない。

 上手く使えば、物陰や遠距離から一方的に叩き込み続ける事ぐらいは出来るかもしれない。

 肝心の効果は……しっかり出てて、毒(10)と表示されているし、コストとして消費された分だけHPバーも減っている。


「さてリベンジね」

 うん、これならばきっと第二階層のネズミたちもいける。


「午後からだけど」

 が、時間もちょうどいい頃合いだったため、私は一度ログアウトした。

03/01誤字訂正

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