189:タルウィテラー-4
唐突ですが、本日のみ二話更新となっております。
こちらは二話目です。
「ーーーーーーーーーーー!!」
『チュアッ!?』
意識を取り戻した私は思わず絶叫し、悶絶した。
「未知! 未知!! 正に未知!! なんて圧倒的な恐怖! 畏怖! 理解できるからこその恐れ!! でも、なにより凄まじいのは私が理解できるギリギリの範囲でプレッシャーを与えつつも、時折トカゲの体ごと理解できなくなったのはプレッシャーが上振れしたために私如きでは理解できない領域にしていたからであり、その技術! どうやっているのかなんて分からない! 未知! 素晴らしい未知!! あの方の前では呼吸をすることすら許してもらわなければ出来なかったから、今ここで激しく悶え、萌えて、燃えて、心の丈全てを思いつくままに吐露せずにはいられなくな……」
『チュアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァ!! 強制シャットダウンでチュウウウウウウウウゥゥゥ!!』
そして、強制ログアウトを食らった。
「ふぅ……落ち着いて来たわ」
『ソーデチュカー……』
で、1時間ほど経って、落ち着くと共に向こうの雑事を済ませてきた私は再ログインした。
『大丈夫なんでチュね?』
「安心しなさい。大丈夫よ。ええ、ちょっと錯乱していたけど、現実の私の下着を見たら落ち着いたわ」
『よし、大丈夫じゃないでチュね。大丈夫でないけど、いつものたるうぃの範疇でチュ』
さて、色々とやることがある。
まず録画については……流石に精神世界での出来事は録画されていないか。
まあ、それなら少し修正を加えれば、掲示板に上げても大丈夫か。
「えーと、ステータスっと」
次に私は得た物を確認する。
錯乱状態だったので、正確に認識できていない部分があるのだが、精神世界から戻される際に色々と入手していた気がするのだ。
△△△△△
『蛮勇の呪い人』・タル レベル16
HP:1,150/1,150
満腹度:100/110
干渉力:115
異形度:19
不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊
称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・2』、『毒を食らわば皿まで・2』、『鉄の胃袋・2』、『呪物初生産』、『毒の名手』、『灼熱使い』、『沈黙使い』、『出血使い』、『呪いが足りない』、『暴飲暴食・2』、『呪術初習得』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの支配者』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『蛮勇の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『七つの大呪を知る者』、『呪限無を垣間見た者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『大飯食らい・1』、『呪いを指揮する者』、『???との邂逅者』
呪術・邪眼術:
『毒の邪眼・1』、『灼熱の邪眼・1』、『気絶の邪眼・1』、『沈黙の邪眼・1』、『出血の邪眼・1』、『小人の邪眼・1』、『足縛の邪眼・1』、『恐怖の邪眼・3』、『禁忌・虹色の狂眼』
所持アイテム:
毒鼠のフレイル、呪詛纏いの包帯服、『鼠の奇帽』ザリチュ、緑透輝石の足環、赤魔宝石の腕輪、目玉琥珀の腕輪、呪い樹の炭珠の足環、鑑定のルーペ、毒噛みネズミのトゥースナイフ、毒噛みネズミの毛皮袋、ポーションケトルetc.
所有ダンジョン
『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール設置
呪怨台
呪怨台弐式・呪術の枝
▽▽▽▽▽
「……。とりあえず運営にチェックをお願いしましょうか」
『明らかにおかしいのが混ざっているでチュから、その方がいいと思うでチュ』
私は設定から運営へバグ・不具合と思しき事項を報告する。
すると、私が報告してくるのは想定の範疇だったのが、メッセージを送ってから1分もしない内に、きちんとした内容のメッセージが返ってくる。
で、その内容をまとめるとだ。
「ログを精査しましたが、バグ・チートの類は確認されませんでした」
『呪術と称号の取得判定、並びにNPCなどの情報についてはプレイヤーには明かせない情報となりますでチュ』
「何かありましたら、また連絡をお願いします。今後も『CNP』をお楽しみください。んー、無罪放免ってことかしら?」
『そういう事だと思うでチュ。あ、ざりちゅの認識にも修正が入ったでチュね。明確にセーフ判定が下ったようでチュ』
「なるほど」
とりあえず問題はないらしい。
では、得た物について一つずつ確認していくか。
△△△△△
『恐怖の邪眼・3』
レベル:35
干渉力:120
CT:5s-5s
トリガー:[詠唱キー][動作キー]
効果:対象周囲の呪詛濃度×3の恐怖を与える
貴方の目から放たれる呪いは、敵がどれほど堅い守りを心に施していても関係ない。
全ての守りは破れずとも、相手の守りの内に直接恐怖を生じさせるのだから。
注意:使用する度に満腹度が1減少する。
注意:レベル不足の為、与える恐怖が(推奨レベル-現在レベル)÷2(小数点以下切り捨て)だけ減少します。
▽▽▽▽▽
「圧倒的レベル不足だけど……」
『なんか、精神的には問題なく扱えるけど、ゲームの仕様と肉体的に無理だから抑えられている感があるでチュね』
「そうね。そんな感じだわ」
まず、『恐怖の邪眼・3』。
何故か1と2をすっ飛ばしていきなり3になってしまったが、レベル不足のペナルティはコストの増大ではなく威力の低下に表れたようだ。
えーと、私のレベルが16、推奨レベルが35、となると現状では対象周囲の呪詛濃度が10なら、目一つにつき恐怖(21)を理論上は与えられることになるのか。
うん、現状でも馬鹿みたいに強いのがよく分かる。
流石は第三段階と言うところか。
△△△△△
『???との邂逅者』
効果:効果なし
条件:???と遭遇した。
貴方が何と出会ったのかは貴方にしか分からない。
しかし、貴方が出会ったそれは、ほぼ間違いなく出会わない方が幸福であると大多数の者が考えるものだろう。
▽▽▽▽▽
「まあ、普通の人がアレに出会いたいとは思えないでしょうね……」
『ざりちゅが思っている以上にヤバい奴でチュね。これ……』
『???との邂逅者』は……まあ、考えても仕方ないか。
誰かに見せる称号でもないし、後追いを出したいと思えるものでもない。
秘匿するとしよう。
では、どう転んでもヤバい奴である。
△△△△△
『禁忌・虹色の狂眼』
レベル:1
干渉力:100+(効果対象となっている邪眼術の数)
CT:10s-60+(効果対象となっている邪眼術の数÷10)s
トリガー:[発動キー]
効果:効果対象となっている邪眼術を、全ての目で、同時に、単一対象へ、コストとCTを無視して発動する(対象呪術:『毒の邪眼・1』、『灼熱の邪眼・1』、『気絶の邪眼・1』、『沈黙の邪眼・1』、『出血の邪眼・1』、『小人の邪眼・1』、『足縛の邪眼・1』、『恐怖の邪眼・3』:総数8)。
使用者の周囲の呪詛濃度が高いほど、効果に上方修正がかかる。
貴方ノ眼ハ 虹色ニ 輝ク。
貴方ガ 力ヲ 積ミ重ネル毎ニ 輝キハ 増シテイク。
マルデ 狂イ咲ク 彼岸花ノ如ク。
注意:使用者の周囲の呪詛濃度が16以上なければ使用できません。
注意:全ての目の視界で対象を捉えている必要があります。
注意:使用すると最大HPの(周囲の呪詛濃度)%分だけHPが、最大満腹度の(発動した際の目の数×3)%分だけ満腹度が減少します。
注意:一度使用するとリアル時間で24時間経過するまで『禁忌・虹色の狂眼』は再使用できません。
▽▽▽▽▽
「強い」
『強いでチュね』
やっぱりヤバい奴だった。
なんだこの性能。
制限やコストは大きいが、それ以上に性能が凶悪すぎる。
しかも現時点でも十分すぎる性能を持ち合わせているのに、私の今後次第で凶悪さが跳ね上がっていく素敵仕様。
やっぱり、あのトカゲは別格などと言う次元ではない。
「ん? あれ? てか、もしかして呪術名のゲイザリマンって……gaze Ahrimanを縮めてそれっぽくしたものなのかしら」
『あ……』
私の推測が正しいなら、あのトカゲはアーリマン、アフリマン、あるいはアンラ・マンユと呼ばれる神であったという事だろうか。
そしてアンラ・マンユであるならば、私は被造物であるので、無縁の存在と言うわけではなくなる。
もしかして、こういう縁があったからこそ、精神世界の奥でとは言え、会えてしまったのだろうか。
「……。まあ、会いたいと思って会える相手じゃないし、記憶の片隅に覚えておくぐらいにしておきましょうか」
『でっチュねー……』
とりあえず今日はもう疲れたので、ログアウトするとしよう。