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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
4章:『呪術師が導く呪詛の宴』
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173:ストレンジャビジター-3

「此処がそうよ」

 私、マトチ、ドージの三人はビルの地下に到着した。

 掲示板曰く、ビル街の地下は大きく分けて二層に分かれており、上層が地下街、下層が下水道になるらしい。

 どちらも複雑かつ、何時崩れてもおかしくない状況だそうだが、色々とアイテムが手に入るそうだ。

 そして、私たちの前には、無数に存在する下水道の入口の一つが広がっている。


「じゃ入りましょうか」

「分かった」

「分かりました」

 なお、ビルの外では、垂れ肉華シダの花の香りに引き寄せられたモンスター、それを狩ろうとするプレイヤー、どちらも狙っている毒ネズミたちによる三つ巴の戦いが繰り広げられているようだった。

 まあ、放置だが。


「普通に人が入れる上に、風化もあまり進んでいないようです。これなら、ある程度は暴れても大丈夫でしょう」

「へー、珍しいですね。僕は地下街や他の下水道に入った事がありますけど、こんなしっかりしてなかったですよ」

「へぇ。そうなの」

 下水道と言っても、水は流れていないので、私たちは難なく奥に進んでいく。

 ちなみに『CNP』の世界では呪詛の霧が一種の光源となっているようで、呪詛の霧の中ではどんな場所であってもある程度の視界が確保されるらしい。

 だからこそ、呪詛濃度0であるサクリベス地下の聖浄区画では、きちんと暗闇に包まれていたようだ。

 暗闇で呪詛濃度0から呪詛濃度1以上の空間を見た時にどうなるのかは未検証なのか、書かれていなかったが。


「そう言えばタルさん。どうして金属素材を取りに?」

「ん? あー、言ってなかったわね」

 今のところはコンクリートばかりで金属素材は見えない。

 モンスターも見当たらない。

 と言う訳で、私はドージとマトチに細工用アイテム一式のバーナーが壊れて、それの修理に金属が必要である事を伝えつつ、奥に進む。


「そう言う事ならば、サクリベスの神殿に掛け合えばよかったのでは? 聖女アムル様は例の海月の討伐における第一功労者と言う事で、褒賞を渡したがっていましたから、タルさんが望めば、細工用アイテム一式だけでなく、大抵のアイテムは手に入ったかと」

『……!? たるうぃ!』

 ドージの言葉にザリチュがあからさまに嫌そうな声を上げる。

 まあ、ザリチュと聖女アムルの相性を考えれば当然の反応か。


「あー……聖女アムルからお礼を受け取る気にはならないわね。ああでも、私の分の褒章があるって言うなら、私の姿を目撃して、発狂した人たちの救済に当てるのはありか」

「理由を聞いても?」

 だが、ザリチュの件を抜きにしても、私は聖女アムルからお礼を受け取る気はなかった。

 と言う訳で、六つ足の蜥蜴に『灼熱の邪眼・1(タルウィスコド)』を叩き込んで始末しつつ、私はドージに私向けの褒賞を受け取らない理由を告げる事にする。


「利用される気しかしないから」

「利用されるですか?」

「ええ、カロエ・シマイルナムンの件で、聖女アムルは私の存在を察しても動じず、姿を見ても怯えず、それどころか交渉によって自分の都合のいいように動かそうとした。カロエ・シマイルナムンを知っていたから、私の姿を見ても動じなかったんでしょうけど、それ以上に彼女自身の性格として、利用できるものはなんでも徹底的に利用する気がするのよねぇ」

『その意見に賛成でチュ! あのド腐れ聖女なら、たるうぃとざりちゅの事を散々利用しまくった挙句に、利用する価値がなくなると共に始末しにかかるぐらいは普通にやるでチュよ! 絶対に信頼なんてしてはいけない人種なんでチュ! 笑顔で心臓に刃物を突き立てるタイプの女でチュよ! アレは!!』

「……」

 ドージにとって私の答えは想定外のものに近いのだろう。

 どこか遠くを見つめて、戸惑ったような表情を見せている。

 あ、ザリチュの言葉については聞き流す。

 事実だろうけど、内容が濃すぎるし。


「ま、そんなわけだから、機会があったら救済に回してと伝えておいて。一応、被害者が少なくなるように気は使ったつもりだけど、それでも私の姿を目撃したNPCは少なからず居るでしょうから」

「分かりました。今日の探索が終わったら、サクリベスの神殿に戻って伝えておきましょう」

 ドージは微妙に渋々と言った感じで、私の提案を受け入れる。

 内心でどう思っているかは分からないが……まあ、私に迷惑が来なければいいや。

 他の人にとっても良い結果になるに越したことは無いが、第一は自分自身です。


「あれ?」

「どうかしたの? マトチ」

「いえ、水音が微かに……」

「水音? この下水道は完全に枯れているはずだが……」

「こっちですね」

 と、ここで、マトチが水音のような物を聞きつけて、そちらの方向に向かって歩き始める。

 なので、私たちもそれについて行くことにする。


「壁に触れないでください。一部の壁が妙に熱くなっているみたいですから」

「そうみたいね」

「そのようだ」

 やがて水音は私とドージにも聞こえるようになってくる。

 そしてマトチの言うとおり、他の壁に比べて十数度は温度が高くなっている壁が出てきているようだった。


「呪詛濃度も上がってきたようだが、此処は地上だとどの辺なんだ?」

「んー……」

『南にだいぶ進んでいるでチュね。たぶん、ビル街とその次の境界にかなり近いでチュ』

「南の境界付近みたいね」

 これはもしかするともしかするかもしれない。

 私は『鑑定のルーペ』で目の前の空気を観察してみる。

 まだ、ビル街表記だ。

 だが、この感じだともうすぐだろう。


「タルさん、ドージさん。どうやらダンジョンのようです」

「やっぱりね」

「そうか」

 そうして私たちの前に大量の水を貯めておくためであろう巨大な地下空間が広がった。

 ただし、貯まっているのは水は水でも、湯気を噴出しているような熱湯だった。



△△△△△

熱水の溜まる神殿


熱く燃え滾るような想いが溶け込んだ水に沈んだ神殿型のダンジョン。

だが、善良な想いだけが溶け込んでいるわけではない。


呪詛濃度:10

▽▽▽▽▽


≪ダンジョン『熱水の溜まる神殿』を認識しました≫



「さて、どうしたものかしらね」

 うーん、ストラスさんたちが攻略した物と同質のダンジョンではないらしい。

07/07誤字訂正

07/08誤字訂正

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