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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
3章:『サクリベス』
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158:アフターカロエ-2

「灰を集めて、少量の毒液に溶いてっと」

『当たり前のように毒を混ぜるでチュね』

「だって、他に手軽に使える水気なんてないもの」

 私は手近な器に『加工の海月呪』カロエ・シマイルナムンの灰を集めると、そこへいつも通りに『ダマーヴァンド』の毒液を入れる。

 それから掻き混ぜて、灰全体に毒液が行き渡るようにする。

 そうして出来上がったのは、泥のように粘り気を持った深緑色の物体だ。


「じゃ、これを歯の方に塗っていくわ」

 私は出来上がったそれと『加工の海月呪』カロエ・シマイルナムンの歯をマイルームに持ち込むと、歯の表面へと丁寧に塗りつけていく。


『細工用のアイテムなのに、細工以外でも結構使われているでチュよね』

「うーん、これも細工と言えば細工な気がするけど?」

『これは細工よりも芸術だと思うでチュよ』

 なお、この作業には時間がかかるのが目に見えていたので、カロエ・シマイルナムンの他の素材……触手、目、皮、声帯については、適当に道具を使って、解体用広場の天井から吊るすようにしておく。

 所謂、陰干しとでも言えばいいのだろうか。

 とりあえず、過度な劣化は防げることだろう。


『それにしても大きい歯でチュねぇ』

「まあ、人間の頭を噛み砕ける口に付いている歯だもの。人間サイズじゃ話にならないわ」

 歯に灰を塗っていく作業は……まあ、地味な物である。

 いつも通りと言えばいつも通りだが。


「じゃあ、一度灰を焼き付けてっと」

『何気にこのバーナー、何時も活躍してるでチュよね』

「マイルームでしか使えないけど、『灼熱の邪眼・1(タルウィスコド)』よりも火力があるし、扱い易くて便利なのよね」

 私は細工道具のバーナーを使って、歯に塗った灰を乾かし、焼きつけていく。

 白い歯の表面が僅かに深緑色がかった物になる。

 これで完成……ではない。


「マイルームでしか使えない系統のアイテム、もう少し増やしたいところではあるのよね……」

『具体的には?』

「調理用アイテム一式と、量産用アイテムが欲しい。たぶん、今後は満腹度補給をもっと手軽にこなせるようにしておく必要があると思う」

 私は二度、三度と同じ作業を繰り返して、カロエ・シマイルムンの歯に灰を重ね塗りしていく。

 勿論、灰を塗る量は出来るだけ均等に、塗られる前は歯であったと分かるように凹凸を残しつつだ。


『サクリベスで購入できるんじゃないでチュか?』

「たぶん、出来るわね。後はノーマキさんのような行商人の誰かに購入を頼んでもいいかも。手数料込になるから、倍の値段になるくらいは覚悟しないといけないかもだけど」

『面倒でチュねぇ』

 うん、本当に地道な作業だ。

 ただ、これはこれで結構面白いし、気を使う作業でもある。


『あ、行商人で思い出したでチュけど、結局レンズの確保と言うか、望遠鏡の作成、していないでチュね』

「する暇がなかった。と言うのが正解よ。『邪眼術士』の称号で出来るようになった、邪眼術を他人に教える際の諸々も未検証なのよね」

『カロエ・シマイルナムンの素材の処理は時間がかかるでチュよねぇ』

「呪限無の探索計画も未だに立っていないのよね。ああそうだ。『呪い樹の洞塔』だっけ。あそこもブクマだけして、未攻略状態だったわ」

 そろそろいい感じだろうか。

 均等かつそれなりの厚みを持って、歯全体に灰を塗る事が出来た。


「まあ、順番に処理していくしかないわね」

『そうして、また問題が積み重なっていくんでチュね。分かります』

「否定できないのが悲しいわー」

 私は塗り残し、乾かし残しが無い事を確認すると、呪いをかけて一つのアイテムにするべく、マイルームからセーフティーエリアに移動する。

 そうして移動した瞬間だった。


『チュアッ!?』

「あ、こうなるのね」

 灰を塗りたくった『加工の海月呪』カロエ・シマイルナムンの歯が砕け散って、呪怨台へと吸い込まれていく。

 同時に周囲の呪詛も呪怨台へと吸い込まれて行き、深緑色の光によって宙に幾何学模様を描きつつ、呪怨台がまるで生きているかのように拍動。

 やがて、濃い赤と黒と紫の霧によって呪怨台全体が包まれる。


「うーん、プレイヤーを関与させる気はないって事かしらね」

『まあ、たるうぃのように変な事をする奴は絶対に居るでチュからね』

「え? 変な事をする気なんてないんだけど……」

『どの口がソレを言うでチュか』

 元々呪怨台のアップデートに使えそうだと思い、その為のアイテムとして加工をしていたので、自動でアップデートをしてくれるのなら、楽ではある。

 プレイヤーの自由にさせないのは……まあ、ザリチュの言う通りなのだろう。

 ここを自由にさせると、最悪詰みが生じてしまうのだろう。

 世界観的にはヤバい何かと繋がっているのかもしれないが。

 まあ、なんにせよ、関与できない以上は見守る以外にない。


「あ、出来上がったみたいね」

『でチュね』

 やがて反応が収まって、新しくなった呪怨台が私たちの前に現れる。


「ふむ、緑色ね」

『毒液の色でチュね』

 新しい呪怨台は、台全体が綺麗な深緑色に塗られ、台の中心には目を凝らさないと分からない程度に違う緑色で幾何学模様が描かれている。

 この幾何学模様は……私が呪術習得用アイテムを作る時に出現するものによく似ているか?

 とりあえず鑑定をしてみるとしよう。



△△△△△

呪怨台弐式・呪術の枝


レベル:10

耐久度:∞/∞

干渉力:100

浸食率:100/100

異形度:1


周囲の呪詛を集めて、台の上に置かれた非生物を呪う事が出来る。

呪術の習得に関係するアイテムの作成にプラスの補正がかかる。

▽▽▽▽▽



「あー、私にとって使い易いようにカスタマイズされた感じかしらね。まあ、悪くはなさそうね」

 特化、専門化と言うほどではないが、特定の分野で用いるのに向くようになるのが、呪怨台のアップデートと言う事だろうか。

 この分だと、武器、防具、薬品、食料などなど、さまざまな分野に同様のアップデートが存在している事だろう。

 必須ではないが、やっておいて損になる事もない。

 現状ではそういう風に見える。


『そう言えば、『鑑定のルーペ』の鑑定もしたことないでチュね』

「ああうん、今度ザリアに頼むわ。まあ、これからこっちもアップデートになるでしょうけど」

 なんにせよ呪怨台のアップデートは出来た。

 ならば次は『鑑定のルーペ』だ。

 加工の類が一切できない正体不明のアイテムであるが、私の想像通りなら……きっと、自動でアップデートされる事だろう。

 私はカロエ・シマイルナムンの目を取りに行った。

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[気になる点] >「まあ、順番に処理していくしかないわね」 『そうして、また問題が積み重なっていくんでチュね。分かります』 「否定できないのが悲しいわー」 態とでしたらすいません。 ザリチュのセ…
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