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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
3章:『サクリベス』

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153:カロエ・シマイルナムン-4

本日四話目です。

『ーーー!?』

「よし、決まったわね」

『発射5、成功3、成功率60%でチュ』

 戦闘開始からおおよそ30分経過。

 カロエ・シマイルナムンはレーザーを暴発させて、自爆。

 大ダウンして、動きを止め、筒の外に出ている触手に向けてプレイヤーたちの攻撃が殺到し始める。


「毒は1,003、沈黙は22、毒の維持がだいぶ厳しくなってきたわね」

 二度目のレーザー阻止からここまでレーザー阻止の失敗はない。

 しかし、カロエ・シマイルナムンの気絶予防能力は確実に高まって来ていて、ザリチュに成功数をカウントしてもらっているのだが、成功率は確実に下がってきている。

 毒についてもスタック値が1,000を超えた辺りから、維持をするのがやっとになってきている。

 これはカロエ・シマイルナムンの対状態異常能力ではなく、現状の『毒の邪眼・1(タルウィベーノ)』に、私の装備と称号ではこの辺が実質的な限界値と言う事なのだろう。

 沈黙は……変わらずだ。

 カロエ・シマイルナムンの絶叫攻撃を防ぐのに必須である都合上、沈黙に対する予防、耐性、無効の能力向上は戦闘が長引いても起きないのかもしれない。


『……』

『カウント開始するでチュ。1……2……3……』

「『毒の邪眼・1(タルウィベーノ)』」

 カロエ・シマイルナムンが大ダウンから復帰して、攻撃を再開する。

 この状態で私がやるべき仕事は三つ。

 一つ目は『毒の邪眼・1』による毒の維持。

 私にとっては貴重なダメージソースなので、欠かす事は出来ない。


「しまっ……ぐぼっ!?」

「はい、ポーションありがとう」

『……!』

 二つ目は触手に捕まったプレイヤーをカロエ・シマイルナムンに食われる前に始末する事。

 これは雑魚敵の出現を防ぐだけでなく、戦線の維持もある。

 なお、駄賃代わりにポーションは貰う。


『……』

「相変わらず攻撃が激しいわね」

『それだけ怨まれているって事でチュよ』

 三つ目は『沈黙の邪眼・1(タルウィセーレ)』による沈黙の付与。

 ただ、こちらは段々とカロエ・シマイルナムンの沈黙回復行動の頻度が下がってきているので、必要性は薄くなってきている。

 恐らくだが、沈黙を回復する薬の元になる薬草が少なくなってきたのだろう。


「他のプレイヤーたちは……まあ、問題なさそうね」

 私はカロエ・シマイルナムンの攻撃を避けつつ、他のプレイヤーの様子を窺う。

 数はたぶん千人ちょっとで、大半は顔も知らないプレイヤーだが、一部は知り合いだ。

 ザリアたちは問題なし。

 地道に筒から出てきている触手を叩いているし、必要に合わせてシロホワが私の回復もしてくれている。

 スクナは張り切っている。

 触手を真正面から切り刻んで、圧倒しており、背後に居る見知らぬプレイヤーはサポートに追われているようだ。

 他は……ああ、『エギアズ』や『光華団』、草原で私に襲い掛かってきた三人組も居るか。

 こちらも堅実に戦っていて、問題はなさそうだ。


『レーザーまで残り10!』

「と、来たわね」

『……』

 カロエ・シマイルナムンが触手を頭上に持ち上げて、光の加工を始める。

 レーザー攻撃だ。

 そろそろ気絶予防能力に頼らず、フェイントの類でも仕掛けてくるかもしれない。

 警戒しておこう。


『1……0!』

「ふんっ!」

 私は『気絶の邪眼・1(タルウィスタン)』を5つの目で発動する。


『発射5、成功3、率60!』

 『気絶の邪眼・1』は成功し、気絶(3)がカロエ・シマイルナムンに付与された。

 だが……レーザーの暴発が起きない。

 つまりだ。


『……!』

『フェイントでチュ!』

「ま、そう来るわよね」

 フェイントだ。

 他のプレイヤーは私が失敗したと判断して慌て始めている。

 うん、私に頼りすぎじゃないかな。

 でもまあ、この程度なら問題はない。


「はいっ」

『!?』

『発射5、成功2、率40でチュ』

 だって私の目は13個もあるのだから。

 動作キー発動に必要な手だって右手と左手で2つあるのだから。

 と言う訳で、残った8個の目で『気絶の邪眼・1』を使えばいいだけ。


『ーーーーー!?』

「「「ーーーーーー!?」」」

「よし、成功」

 レーザーが暴発してカロエ・シマイルナムンが大ダウンする。

 回避と防御に動き始めていたプレイヤーたちも慌てて攻撃に戻り始める。

 この間に私は急いで豆を食べて、満腹度を回復する。

 そろそろ豆の在庫が怪しくなってきたかもしれない。


『……』

「む……」

『チュア?』

 カロエ・シマイルナムンが大ダウンから復帰。

 だが、これまでとは少し様子が違っている。


「何か来るわね」

『でチュね』

 中央の筒の中へとカロエ・シマイルナムンが触手を引っ込めていく。

 プレイヤーたちはその動きに怪しさを感じて、警戒感を強めていく。

 私も同様だった。

 ただ……その後を考えると、警戒はしてもしなくても変わらなかったかもしれない。

 と言うのもだ。


「ん?」

 カロエ・シマイルナムンの触手である人の腕が連なったものが、金属製の馬上槍のようなものに加工されていく。


『あー、これは……』

「駄目ね。これは……」

 続けて、馬上槍の触手が中央の筒の壁を突き破るように繰り出されて、プレイヤーたちが居る場所にまで伸びる。

 そして、カロエ・シマイルナムン本体は既に体を捻っている。

 槍の突き出しは回避したが、これはもう駄目だろう。


『……!』

「ブゴッ!?」

『チュゴッ!?』

 で、私の予想通りにカロエ・シマイルナムンはその場で横回転。

 中央の筒の壁を粉々に破壊しつつ、生産区画全体を薙ぎ払っていく。

 その数とスピードは嵐のど真ん中に居る私にはどうしようもなく、私は見事に薙ぎ払われて、死に戻りした。


「っつ……たぁ……アレは無理ぃ……」

『チュアアアァァァ……』

「あいたたた……」

「アレは即逃げしかないな……」

 さて、気が付けば、生産区画の扉の外だった。

 周りには一緒に死に戻りしたらしきザリアたちも来ているが、ロックオやシロホワの姿が見えないので、全滅ではないようだ。

 状態異常やペナルティの類はなし。

 直ぐに復帰できる。


「タルっ!」

「悪いけど、とっとと復帰するわよ」

『レーザーまで残り10!』

 私はザリアの呼びかけを無視して、生産区画の中に入る。


≪超大型ボス『加工の海月呪』カロエ・シマイルナムンとの共同戦闘を開始します。現在の参加人数は118人です≫


「へぇ……」

 生産区画の中はこれまでとは様変わりしていた。

 中央の筒を囲っていた透明の壁は砕け散り、他PTとの協力を遮っていた壁も壊され、カロエ・シマイルナムンを自由に攻撃できるようになっていた。

 そしてカロエ・シマイルナムンは生き残りと戦線復帰者を皆殺しにしようと、光の加工を始めている。


『……』

「……」

 読み合いだ。

 フェイントを入れるか、入れるとして何回か、どのタイミングでレーザーを撃ちこむかをカロエ・シマイルナムンは考え、私はそれを読み切って適切に気絶させなければいけない。


「『気絶の邪眼・1(タルウィスタン)』!」

『!?』

『発射8、成功1、率12.5でチュ』

 読み合いは私の勝ち。

 レーザーは暴発し、戦線復帰したプレイヤーたちはこれまでの憂さを晴らすように一気に攻撃を仕掛けていく。


「これはもう詰みね。カロエ・シマイルナムンにはもう未知は無いでしょうし、私は壁際で自分の役目を果たしていればいいわ」

『でチュねー』

 猛攻はカロエ・シマイルナムンが大ダウンから復帰しても続いた。

 当然だ。

 もうカロエ・シマイルナムンをプレイヤーの直接攻撃から守っていたと言っても過言ではない透明な筒の壁はないのだから。

 ブラクロが全体バフを飛ばし、スクナが真正面から触手を切り刻み、ザリアが勢いよく突っ込んでいく。

 ストラスさんに至っては琥珀の風を纏いながら突っ込んで、そのまま反対側に突き抜けている。

 抵抗するカロエ・シマイルナムンの攻撃はロックオたち防御を得意とするプレイヤーが防ぎ、傷を負ってもシロホワのような回復能力持ちが癒し、それぞれの行動の隙間は各々の得意分野を生かす形で様々なプレイヤーが綺麗に埋めていく。


「ふふふっ、でもこれはこれで見応えがあるわね。数多のプレイヤーが死力を尽くして、一体の巨大なモンスターを討伐する。正に英雄譚の一節のようね」

『いい攻めっぷりでチュねぇ』

 剣や槍による攻撃だけでなく、呪術による攻撃も飛んでいく、火が、氷が、雷が、あらゆるものが飛んでいって、カロエ・シマイルナムンのHPを勢い良く削り取っていく。

 矢や石も飛んでいくが、これも何かしらの呪いを含むもののようで、カロエ・シマイルナムンに大ダメージを与えていく。


『……!』

「あ、私の邪眼の前で一発逆転は許さないわよ」

『発射10、成功1、率10。低いでチュねぇ』

 そして、攻撃に耐えかねた様子のカロエ・シマイルナムンは触手を上げ、光の加工をして、レーザー攻撃をしようとした。

 が、私がそれを許すわけもなく、『気絶の邪眼・1』によって虹色の目はレモン色で輝き、付与された気絶によってレーザーは暴発。

 カロエ・シマイルナムンは大ダメージと共に大ダウンし、そのままプレイヤーたちの猛攻によってカロエ・シマイルナムンは討伐されたのだった。


≪超大型ボス『加工の海月呪』カロエ・シマイルナムンが討伐されました。共同戦闘を終了します。報酬はメッセージに添付してお送りいたします≫

≪称号『呪い狩りの呪人』、『毒の名手』、『大飯食らい・1』を獲得しました≫

≪タルのレベルが14に上がった≫

「ふふふふふ、楽しませてもらったわ。カロエ・シマイルナムン」

『お疲れ様でチュー』

 ああ、未知が沢山で、既知であっても愉快で、とても楽しかった。



△△△△△

『蛮勇の呪い人』・タル レベル14

HP:825/1,130

満腹度:47/110

干渉力:113

異形度:19

 不老不死、虫の翅×6、増えた目×11、空中浮遊

称号:『呪限無の落とし子』、『生食初心者』、『ゲテモノ食い・2』、『毒を食らわば皿まで・2』、『鉄の胃袋・2』、『呪物初生産』、『毒の名手』、『灼熱使い』、『沈黙使い』、『呪いが足りない』、『暴飲暴食・2』、『呪術初習得』、『かくれんぼ・1』、『ダンジョンの支配者』、『意志ある道具』、『称号を持つ道具』、『蛮勇の呪い人』、『1stナイトメアメダル-3位』、『七つの大呪を知る者』、『呪限無を垣間見た者』、『邪眼術士』、『呪い狩りの呪人』、『大飯食らい・1』


呪術・邪眼術:

毒の邪眼・1(タルウィベーノ)』、『灼熱の邪眼・1(タルウィスコド)』、『気絶の邪眼・1(タルウィスタン)』、『沈黙の邪眼・1(タルウィセーレ)』、『出血の邪眼・1(タルウィブリド)


所持アイテム:

毒鼠のフレイル、呪詛纏いの包帯服、『鼠の奇帽』ザリチュ、緑透輝石の足環、赤魔宝石の腕輪、目玉琥珀の腕輪、真鍮の輪、鑑定のルーペ、毒噛みネズミのトゥースナイフ、毒噛みネズミの毛皮袋、ポーションケトルetc.


所有ダンジョン

『ダマーヴァンド』:呪詛管理ツール、呪詛出納ツール設置

▽▽▽▽▽


△△△△△

『呪い狩りの呪人』

効果:呪詛濃度の高さを感じ取り易くなる(微小)

条件:カースを討伐した


貴方は呪限無の世界にあるべき、この世非ざるものを打ち倒した。その栄誉を祝し、呪おう。

▽▽▽▽▽


△△△△△

『毒の名手』

効果:毒の付与確率上昇(小)

条件:毒(1,000)以上を与え、毒(1,000)以上の効果が残っている間に生物を殺害する。


私の毒捌きは如何かな? ああ、もう返事は出来ないか。まだ先もあるんだけどね。

▽▽▽▽▽


△△△△△

『大飯食らい・1』

効果:最大満腹度増加(10)

条件:1回の戦闘中に満腹度を100以上回復して、勝利する。


もぐもぐ、もぐもぐ、もぐもぐ。食べなければ戦えないのだ。

▽▽▽▽▽

06/18誤字訂正

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― 新着の感想 ―
間違いなく、タルがいなければ勝てなかった。 もしいなかったら、聖女さんも封印を選び、プレイヤーたちが育ってからこいつと開戦になってたのかな。
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