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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
3章:『サクリベス』
119/1000

119:ハニーアンバー-6

本日二話目です

「タル。解体の結果はどうだった?」

 解体が終わったところで、火事場漁りが済んだらしいマントデアとカーキファングが近づいてくる。

 マントデアが何かを抱えていて、カーキファングが微妙に喜んでいるところを見ると、何かしらはあったようだ。

 まあ、まずは私の方から話すとしよう。


「色々と取れたわよ。針、翅、甲殻、複眼、触角、口辺りがだいたい共通素材ね」

 共通素材は琥珀大蜂の何とかで名前が統一されている。

 用途は……まあ、何かしらはあるのだろう。

 私は針以外は確実に使わないし、針にしても一本あれば十分だろうが。


「面白い所だと、静音琥珀大蜂の毒腺、蜜腺。砲撃琥珀大蜂の蜜袋、針。観測琥珀大蜂の脚、口。世話琥珀大蜂の蜜珠なんてのもあったわね」

「直接の与ダメージのない毒だけを与えるタル様の呪術、最大のメリットと言ってもいいかもしれませんね。全てのモンスターが完璧な状態で残っているので、きちんと解体できれば取り逃しがありません」

 個別素材については色々と手に入った。

 特に静音琥珀大蜂の毒腺は沈黙状態を生じさせる毒が混ざっているとの事なので、是非とも上手く活用して新たな邪眼習得に繋げたいところである。

 それ以外で個人的に興味深いのは、世話琥珀大蜂の蜜珠だろうか。

 直径10センチほどの黄色い球体を鑑定したところ、こんな表記だった。



△△△△△

世話琥珀大蜂の蜜珠

レベル:1

耐久度:100/100

干渉力:100

浸食率:100/100

異形度:3


世話琥珀大蜂の体内に存在している蜂蜜の塊。

大量のエネルギーを秘めており、このエネルギーを開放する事によって世話琥珀大蜂は変態を遂げる。

『金の蜜珠』と呼ばれることもある。

▽▽▽▽▽



「『金の蜜珠』? 『黄金の蜜珠』じゃなくてか?」

「金止まりよ。けれど、これのエネルギー量が多かったり、サイズが大きかったりすれば、『黄金の蜜珠』になるんじゃないかしら」

「なるほどな」

 これはこれで実に活用のしがいがありそうなアイテムである。

 どうやって開放するのかと言う問題はあるが、使い道は必ずあるだろう。


「で、そう言うマントデアとカーキファングの方は? 表情からして何かしらはあったと思っているんだけど」

「おう、色々とあったぞ。よく焼けた琥珀大蜂の子の肉に卵、蜂蜜、蛹。この辺は直接食っていい物だな。それと解体でも得られる物だが、針が大量だ」

 マントデアが抱えていたものを下ろす。

 そこには見るからに美味しそうな食べ物に、無数の針、それに状態のいい巣の壁も幾つか混ざっている。


「とりあえず肉は早い所食っておこう。時間経過で直ぐに悪くなると鑑定結果に書いてあった」

「分かったわ」

「蜂の子の肉……よく焼けているなら……まあ、問題は無いですよね」

「美味いとは言っておく」

 とりあえず琥珀大蜂の子の肉を食べる。

 うん、実にジューシーかつクリーミーで、美味しい物だ。

 『灼熱の邪眼・1』で消費した満腹度も、減っていたHPも簡単に回復していく。


「で、カーキファングの方は?」

「不完全だったが、目的の物があった」

 そう言うとカーキファングは何処からともなく、少しだけ焦げてくすみつつも、なお黄金色に輝く球体を取り出す。

 ああなるほど、これならば確かに黄金である。

 そして、鑑定するまでもなく、膨大な量のエネルギーを有していることが分かる。


「正式名称は王女琥珀大蜂の蜜珠。どうやら、見込みのある一部の世話琥珀大蜂に与えられるもので、これを無事に消化する事が出来れば、新たな女王蜂になれるらしい」

「現実の蜂と違って、成虫になってから女王になれるかどうかが分かれると言う事ですか」

「みたいだな。大層大事な物だったみたいで、巨大な蜂を含めた何十匹もの蜂の焼死体が守るように上に積み重なってた」

「ふうん。つまり、場合によっては女王蜂自身の命よりも大事なアイテムなのね」

 だが、ダンジョンの核ではないらしく、そういう反応は見られない。

 まあ、ダンジョンの奥に繋がる道がまだまだあるのだから、当然の話なのだけれど。


「さて、こうなると悩みどころね」

「そうですね」

「だな」

「まあ、そうなるな」

「熊ですも悩みどころなのは分かります」

 さて、こうなってくると私たち全員分かっている事だが、悩みどころである。

 目的達成に必要なアイテムが回収できた以上、この先に進むか、それとも退くかは考えないといけない。

 そして、巣を落とすまでに得たアイテムの分配をどうするかも考えるべきだ。


「「「熊です!?」」」

「あら、気づいてなかったの?」

「有能な熊である熊ですは増援を全部仕留めたので、こちらに来ました。臭いを嗅げば、森の中を抜けるのもそう難しくはなかったです」

 なお、熊ですがやってきたのは、カーキファングが王女琥珀大蜂の蜜珠を出し、他の面々の視線がそちらに集まった瞬間の事である。

 音や匂いで気づいていると思っていたのだけど……気付けていなかったか。

 もしかしたら、王女琥珀大蜂の蜜珠には注意力散漫にさせる効果などもあるのかもしれない。


「まあいいわ。アイテム配分はどうしましょうか」

 とりあえず話を進めよう。


「俺は王女琥珀大蜂の蜜珠さえあればいい。これの為に来たんだからな」

「俺はこれまでに大量の毛皮を貰っているしなぁ。可能なら針を何本か貰いたいくらいか」

「私は出来れば観測琥珀大蜂の素材一式が欲しいです。検証班として便利な予感がするので」

「色々とあるけれど……とりあえず毒腺や蜜珠かしらねぇ」

「熊ですは殿の結果得られたアイテムをそのまま貰えれば十分です。後はそこの美味しそうな肉に興味があります」

 うーん、全員案外欲がない。

 とりあえず各自が必ず欲しい物だけは取り分けて、後は等分でいいか。


「熊です。虫とか大丈夫なんだな」

「まず大事なのは美味しさです。アレに比べたら、見た目なんて大した問題ではないと熊ですは悟ったのです」

「アレか。アレはなぁ……観戦していて哀れに思ったぞ」

「他に手が無かったのは分かりますけどねぇ……」

「ん?」

『たるうぃはたるうぃと言うだけの話でチュから、気にしなくていいでチュよ』

 うん、分け終わった。

 何故か全員揃って私の方に生暖かい目を向けているが……話の内容からして先日のイベントの私対熊ですの時の話だろうか。

 アレについては戦いなのだから、情報を漏らした方が悪い、それだけである。


「じゃ、進むか退くか考えましょうか」

 それよりも今考えるべきは、琥珀大蜂の巣を越えた先に広がっているのが見える第三階層、琥珀色一色に染め上げられた森へと進むか、それともここで引き上げるかについてだ。

 まあ、どちらを選ぶにせよ、まずは第二階層と第三階層の境界として設置された大岩に存在している結界扉に入るべきなのだろうけど。

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