112:フォレストズセーフティ-3
本日一話目です
「さて、まずは自己紹介と行こうか。俺の名前はマントデアと言う」
異形の巨躯の男性とカーキ色の犬に連れられて、私、ストラスさん、熊ですの三人はセーフティーエリアの中心から少し離れた、木々が無くなって開かれた場所に移動した。
「気が付いているかは分からないが、先日のイベントの予選でタル、アンタに倒されたプレイヤーの一人だな」
「流石に気が付いているし、覚えているわよ。貴方ほどの大きさを持っていながら、この森の中でも問題なく動けるプレイヤーがそう何人も居るとは思ってないし」
マントデアと名乗った男性の見た目を一言で説明するならば、異形の巨人、こうなる。
だが、子細に説明するとなると、少し長くなる。
「タルに倒された、ですか。つまり、ある意味では熊ですのお仲間ですね」
「ある意味はそうね。でも、マントデアが予選で普通のサイズのプレイヤー十数人を一人で相手取っているところに介入したのは、仮に一対一で接近戦の戦いになっていたら、私が負ける可能性の方が高かったからよ」
「ほう。それは嬉しい評価だな。イベントの3位入賞者にそう思ってもらえるとは」
まずデカい、正確な身長は分からないが、8から10メートルはあると思う。
顔はカマキリのそれに近いが、四つある目は人間のそれで、きちんと瞳孔も白目もある。
2本目の右腕が肩から生えていて、元からあるものと合わせて、2本とも自然に扱えているようだ。
背中には先端から電撃を放っている触手のような物が4本生えていて、今はマントデアの感情に応じるようにウネウネしている。
肌は若干白みがかっていると共に硬質で、金属製の武具はともかく、石と同じくらいには堅そうだ。
最後に身に着けている物だが……股間を隠す腰巻と『鑑定のルーペ』以外には、木をそのまま削り出したようなこん棒を一本持っているだけで、体のサイズ故にこの辺は苦労しているようだ。
うん、やっぱり長くなった。
とは言え、これほど異形に全振りしたような見た目でも、普通のフィールドに特別な装備もなく居られるので、異形度に直せば15以下に留まるようだ。
『まあ、戦ったら負けるでチュよね』
「え? タル様が負ける可能性のが高いのですか?」
「負けるわね。私の今の呪術一回では毒の重症化まで持って行けないし、一度追い付かれたらリーチや歩幅の差で逃げる事も叶わないもの」
「俺は見た目相応には耐久力と破壊力があるからな。即席でチームを組んだアイツらの判断は中々だった。ま、それ以上に、きちんと漁夫の利を取っていったアンタの聡さと能力は、俺からしたらトンデモだったな」
なお、マントデアは予選で戦った時は遭遇した状況が良かったので勝てたが、本戦で戦えば確実に負けていたと断言できる。
最初から攻撃の射程内だから、開幕で叩き潰されてほぼお終いだ。
と言うか、マントデアと一対一で戦って制する事が出来るプレイヤーなんて、現状では一人しか居ないだろう。
「で、マントデアさんは分かったけど、そっちのワンコは? プレイヤーなのは何となく分かるけど……」
私が目の一つをカーキ色の犬に向ける。
全身がカーキ色の毛で覆われた大型犬は、首からドッグタグのように『鑑定のルーペ』が提げられているのでプレイヤーだと分かるが、それが無ければ見た目は何処からどう見ても極々普通の……『CNP』では逆に珍しい、現実にも居そうな本当に普通の犬だ。
「俺の名前はカーキファングと言う。たぶん、一度俺の事を遠目に見ているとは思う」
「しゃ、喋ったのです……」
「し、渋い……駄犬さんなのに渋い……」
「最初は驚くよなぁ。これ」
「一度見た? あー……うん、確かに見覚えはあるかもしれないわね」
そんな犬の口からは渋い男性の声でカーキファングと言う名前で告げられた。
で、私は遠目で彼の事を一度見ているとの事だが……カーキ色の犬、四足獣を見た覚えとなると……うん、一度あるかもしれない。
『ネズミの塔』だった頃に、塔の外へ実験と言う事で邪眼術を撃ち込んでいた時にそれらしき姿を見た事がある気がする。
それとイベントの時も見た気がするから、もしかしたら二回かも?
『キエアアアアアァァァァァ! シャベッタアアアアァァァァァ!! チュ』
「あの時は驚かされた。目の前で前触れもなく、致死レベルの毒を撃ち込まれたからな」
「あの頃はまだダンジョンの外に出れなかった頃だったのよね。今となってはちょっと懐かしい話ね」
後、ザリチュ。
ザリチュがそれを言うのは、ネタにしかならないと思う。
ザリチュ自身も分かっているだろうけど。
「なるほどね。二人とも一応私との縁がある事は分かったわ」
とりあえずこうやって近距離で会話をしたことが無くても、関わりがあったのは確かなようだ。
これならば、私に話しかけても不思議ではない。
「でも、それだけが話しかけてきた理由じゃないわよね」
「流石に察しが良いな」
「ありがたい話だ。話がスムーズに進むのは楽でいい」
私が普通のプレイヤーで、他のプレイヤーからどちらかと言えば敵対的な視線を向けられていなければ、だが。
どうにも『CNP』もサービス開始から3週間ほど経って、各セーフティーエリアごとの空気と言うものが出来ているらしく、私と森のセーフティーエリアの空気は相性が悪いようだった。
そんな中で周囲の目を憚ることなくマントデアとカーキファングは話しかけてきた。
ならば、相応の理由があると見るのは当然の事だろう。
「簡単に言ってしまえば、俺たちが進めているダンジョンを共同で攻略する依頼だ」
「それと一部アイテムの回収を手伝ってほしいと言うのもある」
「へぇ」
そして、二人はきちんと理由を持っているようだった。
05/21 文章改稿




