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『Curse Nightmare Party』-邪眼妖精が征くVRMMO  作者: 栗木下
1章:『ネズミの塔』
1/1000

1:プロローグ

お久しぶりの方はお久しぶりです。

初めましての方は初めまして。

新作です。

暫くは6時、12時、18時の3話更新態勢となります。

人によって合う合わないが極端に分かれそうな物語ではありますが、楽しんでいただければ幸いです。

「ふうむ、二択かぁ……」

 VR空間でのネットショッピングを行っている私の前には二つのゲームのパッケージ……いや、ポスターのようなものが浮いている。

 片方は国民的RPGの最新作にして初のVRMMO作品として、製作発表当時から話題に上がっていた大手会社のソフト。

 ジャンルとしてはライトでオーソドックスなファンタジーと言うところか。

 もう片方はどちらかと言えばマイナーな部類に入る会社が製作したVRMMOのソフトで、事前情報は碌に無い。

 公開されている情報をざっと見た限りで判断するなら、ジャンルはダークファンタジーに属するだろう。


「んー……」

 私はゲームが好きだ。

 より正確に言えば、未知なるものと物語が好きだ。

 だから、ゲームはするし、漫画と小説は読むし、アニメも見る。

 ガッチガチではないが、世間一般的にはオタクに属する人間だろう。


「そうだなぁ……」

 そんな私は今年から大学生になった。

 そして現在は六月で、リアル事情が一通り落ち着くと共に、夏休みに備えてリアルでもVRでも色々と動き始める時期である。

 現に先ほど挙げた二本のソフトにしても、明日の金曜日の正午からサービス開始が予定されている。


「ライトでオーソドックスなファンタジー自体は悪くない。悪くないけど、多少食傷気味ではあるんだよね」

 私は大手会社のソフトを見る。

 シリーズ作となると……ファンサービスと言う名の過去作との繋がりが事前知識として知っておけと実質的に強要されたりだとか、往年のファンと言う名の懐古厨がウザったいパターンがあったりとかが無いとは言えないんだよねぇ。

 ついでに大手の作品になると、非効率な効率厨・些細な事で付きまとう粘着・頭がパーンな奴は必ずと言っていいほど沸くし、ギルドだのフレンドだのの人間関係のしがらみがリアル関係すら崩壊させる勢いで突っ込んで来るパターンもある。

 そうでなくとも国民的RPGの最新作と言う時点で恐ろしい量の人間で溢れかえるに違いなく、そこにはMMO特有のリソースの奪い合いと言う名の苛烈な競争が発生する事は確実だ。

 で、それらを乗り越えた先に見られるのが、ライトでオーソドックスな安心して見られる感動的なストーリー……って、これは別に悪い点じゃないか。

 私も別にライトでオーソドックスな物語は嫌いではない。

 ちょっと世の中に溢れかえり過ぎていて、食傷気味なだけで。


「無しかな」

 とりあえず、大手特有の人の多さから生じる、関わり合いになりたくない方の数の増加を考えると、私には合わない可能性の方が高いかもしれない。

 と言う訳で、私は大手のソフトを排除する。


「ダークファンタジーかぁ……」

 私はどちらかと言えばマイナーな会社のソフトを見る。

 同時に、この会社が据え置き機でゲームを出していた頃を思い出す。

 確か独特な世界観と高目な難易度で、人によって合う合わないがはっきり分かれるような作品を作っていた。

 ほぼ間違いなく、このゲームもそうだろう。


「呪いに満ち溢れた世界。異形の者が闊歩する世界。呪詛によって汚染された道具でリスクを負いながら戦うスタイル」

 私は改めて公式サイトでゲームの内容を確かめる。

 ジャンルはダークファンタジー。

 舞台はポストアポカリプス、つまりは滅びた後の世界。

 いや、見方によっては今正に滅びつつある世界であるとも言えるかもしれない。


「へぇ、プレイヤーも異形の姿になるんだ」

 一般的なファンタジーによくあるようなエルフやドワーフそのものは居ない。

 しかし、ゲーム開始時にプレイヤーはその身を呪いによって侵すことで、人ではない異形の姿を手にする事が出来る。

 公式サイトには、その一例としてエルフのように耳を長くしたアバターや、鬼のように額から角を生やしたアバターが載せられている。

 それだけでなく、普通の人型でないアバター……腕が四本ある人間やら、片腕がタコの脚のようになっている人間、腹に第二の口が生じている人間なども紹介されていた。

 私は興味を惹かれたが、人によってはこの時点でブラバ(戻るを押す)しそうだ。


「ん? 返金サービス?」

 そして、運営も自分たちの尖り具合をよく分かっているらしい。

 初回プレイ開始からリアル時間で72時間以内であれば、ゲームデータの削除と引き換えに返金に応じる他、アバターについても自由に取り換える事が許されているとの事だった。

 つまり、合わないなら、無理に留まる必要は無いと言う事だ。


「へー……面白いね」

 私は公式サイトを端から端まで念入りに読み込んでいく。

 ああ、実に楽しそうだ。

 この世界ならば、これまでに見たことが無いものにも出会えるかもしれない。

 もう私に迷いはなかった。


「うん、決めた。私はこのゲームを始めよう」

 ポスターに触れて入金。

 マシンへソフトのダウンロードが始まる。


「明日が楽しみだ」

 ゲームの名前は『Curse Nightmare Party』、略称は『CNP』。

 和訳するならば『呪われた悪夢の宴』。

 海月ロゴのトップハント社が製作運営する、少々普通ではないVRMMOである。

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― 新着の感想 ―
この話から読み始めて、過去作を遡って読んでいる最中。二週目に新たな発見を見つけることが楽しみ!
[一言] 俺もフロムゲーをVRMMOでやりてえ
[良い点] 1000話とはボリュームが素晴らしい [気になる点] 出だしから面白そうです睡眠時間が心配 [一言] 黄金の経験値からのコメントで知りました
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