再現世界─英雄譚第二章 灰被りの吸血鬼─その2
──ヵチャリ
静かに、静かに、ゆったりと、何処から来たのかわからない、先の見えない糸を手繰り、あやとりをするかのように作品を作り続ける。
作品が仕上がると──ヵチャリ
まるで糸車を回しているかのような音が静かに響く
──ヵチャリ──ヵチャリ
──ヵチャッ
「おやぁ?糸が終わりを迎えたようだが……この異色な糸は作品に会わないなぁ……ははっ糸を伸ばして♪編んで♪組んで♪タチガタシ♪切って♪ちぎって♪タチワカチ♪」
見た目に不似合いな言葉使いや、突然見た目の年相応な態度をとり、支離滅裂なリズムに合わせ自分の思い通りに作品を仕上げようとする、も
──ゴンッ
彼の指が机を叩く、
カチャカチャカチャと鎧の擦れる音、恐れるようにおそるおそる、慎重に開けられる扉、整列し頭を垂れる白色の騎士達、
日が完全とまでは言わないが、採光があまり取られていない不穏で不気味な部屋の中、
「……行け」
先程まで狂気を含んだ笑顔から一転、人間味を出さない底冷えする視線を自分の気に入らない作品の一部であった糸を握りしめるように見ながら、告げる。
──カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ
「……紡いで♪結んで♪タチガタシ♪絶ちきり♪断ち切り♪タチワカチ……えへぇ。気候変動操作、来場数、風向き、荷物、思考誘導操作、経年劣化、etc.etc.etc.etc.……どうして。どうして結べないの?」
──バンッ、バンッバンッ
空に轟く和平の祝砲、昔見たこの青空の記憶に浸る。
「すみません『──』様、先に進んで頂けるとよいのですが」
前を見ると先に進んだ列があり、自分との間にぽっかりと空間ができている。正規シナリオ通りであれば、主人公は客の一人として招待されており、どの階層の人物もこの入り口をくぐることになっている。物語を進めるにはこの列を進めばよいのだが……
「すみません『──』様、『──』様?」
どうやらこの世界では、ゲームとは違って自由に動けるようだ。このまま進めばゲームと同じような運命を辿ることだろう。設定資料集には、教会の手の者には目印として毒々しい知恵の輪のような印がどこかしら装飾品としてついている。
「おいおい、あんちゃん、こちとら招待されてる客だぜ?そんなど真ん中で立ち止まれちゃあ、困るんだぜ?それとも、私が貴族と知りながらの狼藉かね?」
ちょうどこいつの帽子のように、
流れるような自然の動作で腰から木製の剣を振り上げ殴打する。
「へブルッ、きしゃま、その行動が、この日、この場所で、行ってよいことだと思っているのか!?」
辺りがざわざわとし始める。……人間国の者が人間国の者をぶっ叩いてるだけだぜ?その言葉は少しズレてないか教会さんよ?
目視で知恵の輪を6つ確認、内一人が目の前。何故このような突拍子な行動をするかというと、この知恵の輪がくそ野郎につながる鍵だったりする。
「何をしてるんですか!?『──』様!?」
はい、チェストーっと、自分の獲物もこの世界形式に変わっているようだ。知恵の輪を頂く。彫られた文字は『水』
この時間帯であれば、設定資料集によれば、魔物国のあの二人が見る者に砂糖を吐かせる魔法を使っているのでででおべろろろろ、大丈夫だろう。
「くっ、私に運命の加護をっ紡ぎたまえっ」
焦ったのだろうか、余裕がなかったのか、その言葉は計画ではまだ速すぎるのである。もうゲームとは違う方向に進んでいる。
知恵の輪を外すことができなかった残りの四人が、空から落ちてきた紐に全身を巻かれ、そして縦に断ち切るように紐が落ち、メビウスの輪のような胴体に金属的な異形に変態を遂げる。
辺りに響く悲鳴、喧騒、怒号、爆発音、他の所でもドンパチ始めたらしい。
──目標は一体5分、知恵の輪は全部で9つ、ここに今の敵も合わせ6つ、そしてその鍵を繋げる通称『太陽』は……どうやら会場の中で眩しく光る方向らしい
はい、一体目~
……『太陽』ってのが教会の最後の門であり、中には野郎がいる。
野郎は元々人びとの悪い運命を断ち切る存在であったが、その存在概念からだろうか悪い運命を見ることしかできないために、和平の道の先に運命の糸が見えなくなり、その恐怖に打ち勝てなくて今回の動乱を起こしたという話だ。
……実は、その行動を自分が取ることで自分の命がなくなるから見ることができなくなる、ということらしいのだが。
「『──』っ、貴様!今日という祝祭がどのような吉日であるか、わかっておらんのか!」
お、ラッカスもといラックス、獣人の戦士で脳みそが筋肉の……まぁ、話を聞かない……強制バトルになるのだが……
「この騒動も貴様が招いたことだろうッ!いつもいつも何かあれば貴様がいる!この諸悪の根元めぇ!我が槍に賭けて、打ち砕いてやるッ!」
知恵の輪ゲット!てめぇとは遊んでられる余裕はねぇんだよ!アバヨとっつぁん!入り口に駆け込めぇ!
後ろから極太ビームが飛んでくるが無視だっ今は速く残りの知恵の輪3つを取りに、行くからっストーカーは少し黙っとけぇぇぇえ!」
壁ジャンプ、天井から吊るされた紐に跳び移りいぃいのっ!
体で重心操作からの勢いつけてUターンッキックゥゥゥウ!
うっしっビームは止んだぁあ!吹っ飛んでる間にGoだ!Go!
「……貴様、何を知って……」




