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遭遇その2

踏み入れた足が黒の領域に触れたとき、体がなぜか前のめりになる。泥に足を踏み入れたように、沈んで、触れた先から引っ張られていく。反射的に伸ばした手は虚空を掴む。虚空であるはずの空間に体が引きずられる。理解の追い付かない現状に困惑しながら、視界が、黒に染まる。



──ユメヲマタ見ニキタノカナ──


子供の声が聞こえてくる


──ココニユメナンテ在ルノカナ──


虚空の中を沈んでいく


──ココデユメヲ叶エルノカナ──


別の声


──ユメ見ガチナノカナ──


誰かの声


──ユメニ捕ワレテルノカナ──


──ユメニ溺レテイルノカナ──


──夢ニ──


──夢にね──



体は沈み込んでいく、けれど、視界は目が暗さに馴れてきたように、だんだんとはっきりしていく。その声も、



──これから見るのはたぶん、ね──


──この夢には何が在るの?──


──物語は読んでからのおたのしみ、ね──


足場が見えてくる。その中心には渦が巻いている。




『リスポーン地点が特殊変更されました』




足が地面につく。体の浮遊感がなくなる。目の前の渦からナニカが産まれようとしている。這い出るように、右手、左手を、体をその爪で引っ張り出す。


〔……ねばならないっ〕


一言で表すならば狼。その体には一本槍が刺さっており、そこから煙を燻らせている。あれがたぶん探し物だ。煙の勢いはその思考の間にも増していく。


〔……仲間と共に、《---》を〕


その眼が開き、燃える。


〔……我は輝く者、太陽の証をもつ者だから〕


その体を中心に爆発的に煙が立ち込めると共に、自分の周りの風景が創られる。足裏から岩を蹴る感触、むせかえるような空気が肺に入る。火山のように黒い岩の所々に赤く熱をもつ光が見える。煙の合間に炎が見えては消えるを繰り返す。


気がつけば、体に三本線が走っていた。



「リスポーンしました」

「リスポーンしました」

「リスポーンしました」



……息が上がる、腕を上げる、死が濃密に溶かされた鋭利な爪が横切る、牙が向く、創られた地形を駆け上がる、刺さった一本槍がより深く刺さるよう、細心の注意を払い、素早く振り下ろす、怯む、その間に立ち位置を立て直す、が、


髪が逆立つ、熱風が肌を焦がす、目の前で、死が踊る、



「「「「リスポーンしました」」」」



……打ち込んでも打ち込んでも、その目から闘争を止めようとはしない。コイツを倒すことはできるのだろうか、槍を押し込むだけでは勝てない、決め手が欲しい、なぜ俺はここへきたのだろうか、、、少し、弱っていたか、冷静に……


〔---〕


ふと声が聞こえるのに気づく。


狼は正面から飛びかかる。炎のように逆立った剛毛から伸びた爪が、地に三爪で抉られた跡を残す。


〔……アノ在リシ日二得タモノハ〕


体を発火させ、飛び込んでくる。


〔……ソノ手二モツモノハ何ダ〕


体から出た蛍火が連続で今のいる位置へ放たれる。


〔此所ハ夢〕


吸い込む空気が肺を焼く


〔想イノ強サガ糧トナル〕


その熱さに肌が痛む


〔想イヲノセヨ〕


しかし、ある叫びが、聞こえる


〔意志ヲ〕


体の奥底から、湧き出ている


〔ソノッ魂ヲ〕


気がつけば、叫んでいた。



「Revival」



棒は反映する、その記憶を、その想いを、夢を、


右手には、かつての木製の剣、


纏う焔は白と黒、


混ざり者は笑う


狼は吼える、その眼に理性を抱え、


振り下ろされた爪と振り上げた剣、


その炎爪を押し返す、


〔……ソノ想いが〕


攻守の合間に、


鋭い剣線を入れる、


〔……我のチカラ、紅焔を越えねばならない〕


狼はギアを上げるように体を燃やし、


熱風を放ち、


跳躍する、


〔……越えて!魅せよ!証よ!我が願いを届けよ!〕


額の紋章が紅蓮に輝く



「英証解放、Aguni Calore」



体全体はさらに輝きを増し、口元から焔が溢れはじめる、


剣を両手で構え、助走をつけ、足に踏ん張りをつける、


目の前が光に包まれる、


俺の両手は突き出しはじめている、


俺は叫ぶ、




「エェクッッリィィプスゥッッ」




迫る光焔を覆うように、熱線を喰らう、白黒の蝕




堕ちた太陽は次の日の出を見れるのだろうか





〔……ソナタならば、託してもよいのか〕












『昏きに囚われし夢 を解放しました』

『称号:渡り人 を手に入れました』

『実績解除:禁忌1』

『リスポーン地点が元の位置に変更されます』




『おやすみなさい』




……暖かいぬくもりに触れるように、次第に体は眠りに入ろうとしていた

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