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プロローグ

初投稿です。よろしくお願いしますm(__)m

空を覆う暗雲の下、俺は一体の化物と対峙する。


 大地を喰らう鉤爪が迫る、亜空より現れる氷塊が押し潰しに襲いかかる、花開く業火が熱烈に呑み込まんと咲き乱れる。氷塊が砕けつぶてに、溶けて水溜まりに、休むことなく地形が変わる。


1を0へ誘う、己の体を貫かんとする稲妻が走る、持ってる初期武器を避雷針代わりに上へと投げる。出来上がった今までの地形をすべてを薙ぎ払い、荒野の塵にせんと尾が迫る、まさに昇れと言わんばかりの岩壁を駆け上がり、落ちてきたこげのついた木の剣を掴み、その尾に乗る。


飛び散る火の粉、つぶてを払い、登り、唯一体力が減る頭部へ、俺のヘボ剣術をぶつける。

ヤツの角が赤紫に淡く光る。体をひねり、対峙する元の位置で仕切り直しになる。


魔王は嗤う


俺は笑う


同じ行動パターンなどなく、前後左右から迫る腕を俺は……














……いつからだろうか、ヤツの角に割れが生まれ、魔素が抜け出し始めてからだろうか、巨大な質量を、遠目で見ればようやく人と呼べる形に姿を変えたときからだろうか、笑いを止め、その目の色を、魔王に似つかわしくない、黄金を溶かしたような燃える目に変えたのは。


……ようやくそのときがきたのだろうか、身に余る理不尽を振るい、体にガタがきたのだろうか、ヤツが動きを止める、俺は次の動作へ身構える。


汝、何故魔ヲツカワズ剣ヲトル、


「汝、何故魔を使わず剣をとる」


それが呪文ではないと気づき、

何故か笑いがこぼれる、

それに応えるため、

一歩、二歩と踏み出す、


ヤツの全力であろう、目で捉えるには厳しい、一つになった力を、


ギリギリで、

仮想の体に、

むちを打ち、

腕一つ分、

軽くなったって、

進む、


進むんだ、

ロールプレイじゃない、

自分の言葉を、

言葉はいらない、


意志を、


剣に、


後ろから、


前に、


上に、


振り上げ、


走り抜ける。


伝わっただろうか、ヤツが動く音が聞こえない、動いていない、俺は動けない、体が強制的に止められている、頭が重い、



背中越しに、聞こえたのは、









「……空は、白いのだな。」















……目が覚める。頭が重い、

窓から差し込む日が体を包む。

ガラスを覗くとうつる景色は冒険の始まりだった村。

扉を開き、草の匂いが風と共に身を包む。

まぶしくて細めた目を開けると、駆け込む彼女の姿が見えてくる。


「……っばか」


紡がれた言葉は愛おしく聞こえ、温かい抱擁と涙目で、でもその瞳の色はどこか優しい、安心できる青、そして肩まで下がった繊細なプラチナゴールドをもつ、女性になった女の子。


「魔力がないのに」

うん。

「精霊にも、好かれないのに」

うん。

「剣しか、振れ、ないのに」

うん。

「むちゃ、しすぎなのよ」

うん。


だんだん震えていく声にどうしていいか分からず、白い空を見る。


「ねえ、 これからも、 会える?」


その言葉に、固まってしまう。現実に戻される。このゲームはエンディング後は遊べない仕様となっている。同じ彼女にはもう会えない。でも、もう少し、もうすこしだけでも、


「許された時間は、少ないけど、一方的になっちゃう、けど、わたしは、エマ。合言葉は、ニゲラ。そんな顔しないで、あなたは笑いなさいよ。また、ね。」


目の前が霞んでいく。


笑えていただろうか。


体を包む、温かい、ぬくもりが消えていく。


視界が、切り替わる。


何でだろう、


ゲーム、


なのに、


嗚咽が、


止まらない。


俺は……













目が覚める。俺の家の天井だ。名前が作中にでないはずの彼女、かわいかった。

そうじゃない。かわいいけど、そうじゃない。『魔なしの英雄』このゲームのEDは全てみたはずだ。ラスボスに初期武器で挑むと容赦ないことで有名なゲームで、既にその条件でクリアが何度もされている。そういえば合言葉ってどんな意味だろう。検索すると花言葉が出てきた。


ニゲラ:【夢の中で会いましょう】


……次のゲームは同じ会社のVRMMOを始めよう。『Dream Medusa』

題名に夢がついているなら、会えるのかもしれない。

ゲームを機体に落とすのにまだ時間がある。このゲームについて調べた。


このゲームでは、今までの不可能と言われた五感すべてで遊べるそうだ。今までにない味覚が実装される。なぜ味覚だけ遅れたのかは現代七不思議に認定されている。他の感覚の実装もうさんくさく、すべて「なんかもう……奇跡ですね。」という言葉で記者会見は終了。今回の記者会見も同じ言葉である。


エマの手料理を想像していると、ゲームの開始の準備ができた。

カレンダーで予定を確認する。夏休みは始まったばかり。

出校日がたまにあるけれど、まだまだ先だ。

冒険を始めよう。











「起動」















……『魔なしの英雄』の特殊ED確認……

……該当する特殊EDの破棄申請……確認……認証……

……lost確認……完全消去……OK……complete……

……該当playerの観測申請……確認……申請破棄……

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