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恋骨!~恋するスケルトン~田中要はVRMMOゲームでスケルトンになって恋をする事にした。  作者: 熊谷わらお
第1章 スケルトンは恋の夢を見るのか? 1話~25話【完結】
8/83

8.田中要は落下をする事にした。

一話完結 恋する着せ替えスケルトン 短編シリーズ

 田中(たなか)(かなめ)は歩く。偽物(にせもの)の上を歩く。

 この世界は偽物だ。仮想空間VRMMORPG GGL (ジェネシスガーディアンズライフ)はゲームだ。作られた世界だ。


 田中要は歩く。偽物が歩く。

 この体は偽物だ。「カナメン」という名前のスケルトンの体は、ゲームの中に作られたキャラクターだ。


 田中要は安心する。そして、偽物は安心する。

 この偽物の全てが、自分を自分らしく居て良いのだと受け入れてくれるからだ。


 本物の肉体は自分の心を偽物にして、本物の心は自分の体を偽物にする。


 田中要は歩く。ほんの少し、冒険がしたくなったからだ。知っている世界の、知らない景色が見たくなったからだ。


 田中要は穴を見付ける。真っ暗なポリゴンの世界の隙間だ。プログラムの欠落した暗闇だ。そして、その穴に落ちる事にした。


 美少女キャラクター「七味(しちみ)」と出会ったのは、穴に七味が(はま)って動けなくなっていたからだ。七味こと、皆川(みながわ)七見(ななみ)と出会えたのは、彼が穴に嵌っていたからだ。

 だから、この穴に嵌ったら、あの時、彼が見ていた景色が見れるかもしれないと思ったんだ。


『ヒューン』と、スケルトンはポリゴンの穴に落ちてしまいました。

 穴に嵌るどころか、そのまま下へ。


 落下するスケルトンは、空を飛んで落ちていきます。


 ポリゴンの洪水がスケルトンの体を通り抜け、服も帽子も波に融けて骨だけになってしまいました。


 全部が偽物です。でも、怖いと感じる心は本物です。スケルトンの見た目が怖いのも本物です。


 目を閉じて、再び開いた時、落下していたスケルトンは、暗闇に浮いていた。


 手を伸ばすと、目の前の暗闇に指先が触れる。すると、指先から正面にスケルトンが形作られていく。向かい合ったスケルトンは、鏡を見ているかのように同じ動きをした。


「あなたは誰?」 カナメンの声が響く。


『私は田中要』 ()()()()()()()()が響く。


「私が田中要」 男性キャラクターである、カナメンの声が響く。


『あなたはカナメン』 女性の声は響いた。


「私はカナメン」 男性の声が響いた。


『私は田中要』 女性の声が響く。


「カナメンは七味が好き」 悪戯心(いたずらごころ)が騒いだ。


『田中要は皆川(みながわ)七見(ななみ)が好き』 女性の声が(こた)える。


「カナメンは赤色53号が好き」 ちょっとした好奇心。


『田中要は(たちばな)瑞稀(みずき)が好き』 女性の声は応える。


「カナメンはヒヨコが好き」 みんなと同じぐらい好きなんだ。


『田中要は小田(おだ)珠子(たまこ)が好き』 名前がタマコというのは知っていた。だけど……苗字までは知らない……。


「カナメンは夜桜(よざくら)桜子(さくらこ)が好き」 会ってみたいと思ったんだ。私の知らない、みんなが()がれる相手。


『田中要は……ジッジジジジ』 名前の部分が良く聞こえなかった。


「カナメンは」

 もう一度言いかけた時、「カナメンさん!」 聞きなれた声が聞こえた。


 目の前には七味がいた。そして、穴に嵌ってしまっているカナメンを見下ろしている。暗闇もスケルトンも消え、自分の体はポリゴンの穴に嵌っていた。


「助けてください。何でもします」

 初めて会った時に、七味が言った言葉を言ってみた。


「僕と一緒にいてください」

 美少女はとびっきりの笑顔で言って、手を差し伸べた。


お待たせいたしました! 次話でタキシードとシルクハットのカナメンが登場いたします! かっこ良く仕上げましたので、是非とも雄姿をお読みいただければ嬉しいです。

 次話「第9話 田中要は遠恋をする事にした」お楽しみに!

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