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恋骨!~恋するスケルトン~田中要はVRMMOゲームでスケルトンになって恋をする事にした。  作者: 熊谷わらお
第6章 人は骨と共に生き、骨と共に死す。そして想いは骨と共に残る。 68話~78話【完結】
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68.田中要は再開をする事にした。

「プレイヤーって全員、救世主なんだね」

 読んでいた本からマリリンは顔を上げ、カナメンを見た。

「そうだね。別世界から転移して、この世界を救いに来ている設定らしいね」

 カナメンは床に座り、布を畳みながら言葉を返す。

「つまりは違う世界から来た同じ人って事?」

「そうそう。私も七味さんも元は同じ人物だったっていう設定だね」

「へぇー。同じ人物から派生してるって、何だか私達人工知能みたいだ」

 椅子に座ったまま嬉しそうにマリリンは笑った。

 スケルトンスマイルは死んでいるように良い笑顔だ。不気味なのは否定出来ないが笑顔を向けている先もスケルトンなので許されるだろう。

「言われてみるとそうかも。だからAIが作るゲームの下地に選ばれたと考えると面白いね」

 床に正座しているカナメンも微笑み返して言葉を続けた。

「1人目の救世主はこの世界を救うのに失敗してしまったから、生まれ変わる度に何度も異世界から救いにやって来ているらしいよ」

「何かさっきから『らしい』ばっかりなんだけど、カナメンはチュートリアルやったんでしょ?」

「やってないよ」

「え、やってないの? 何で?」

 主人を見下ろしている状態のままメイドは目を丸くした。

「最初、武器屋に行けって言われるんだけど、装備は全部自分で作ってみたかったからクエストを中止しているんだよ。ストーリーならゲームを始める前に原作読んでいたし困らないかと思って」

 カナメンは立ち上がると倉庫の棚の奥を調べ始めた。

「確かストーリーアイテムがこの辺りに……あった! これが前世の記憶」

 手に握られていたのは紫色の宝石が付いたネックレス。

「このアイテムを首から下げてクエストを始めると、前世の救世主をプレイ出来るの。ゲームを始めた時、一番最初に手に入るアイテムだよ」

「なるほど、体験しながら記憶を取り戻すって訳か」

 マリリンは読んでいた本を閉じて、持ち上げるようにして表紙を見せる。

「今読んでいるのはゲームマスター用のマニュアルなんだけど、それによるとGGLは情報の海から引き揚げて持ってきたデータで作っているの。人間が過去に作ったゲームデータをベースにしてAIが再構築したものなのね。つまりは人間が使わなくなった過去の遺産の再利用。これも考えてみれば前世の記憶だね」


 ジェネシスガーディアンズライフ。通称GGLと呼ばれているこのゲームは人工知能が運営管理しているVRMMOゲームである。

 今2人はGGLゲーム内の倉庫にいるのだが、プレイヤーである主人のカナメンと倉庫メイドであるマリリンの主従関係は割と逆転している。ここは主人が気にしていないので問題にはならない。だが、秘密事項の多そうなマニュアルをゲーム内に持って来ちゃっている事は問題にならないよう祈るしかない。

「システムやルールは現代に合わせて新しいものを使用して変えてはいるけれど、見えている世界は多くの人間の頭の中から生み出されたプログラムから作られている。人間が作ったゲームだからバグが多いのも頷けるね。まぁ人間なんてバグだらけだけれど、それが個性というものになるんでしょ? バグだと思うから邪魔にされるけど、個性だと思えば大切にされる。バグと個性は紙一重!」

 得意顔のマリリンである。元バグズモンスターのマリリンが言うと言葉の重みが違うな。

「前から気になってたんだけど、マリリンって本から情報を得ているよね? 頭にダウンロードとかって出来ないものなの?」

「出来るけど、私は本から情報を得る方が好きなのよ。ダウンロードしても楽しく無いもの。入力する過程も大事だと思うんだよね」

 人工知能らしからぬ発言である。

「一瞬で全部手に入るけど、手に入れない事で好奇心が生まれる。知らない事がある方が希望がある。とはいえ知らない事は勿体ない。だから過程を大事にしている。つまりは出会いを大切にしてるって事! 人間でいうところの縁ってやつ。いつどうやって手に入れた知識なのかも大切だって思ってる。過程は歴史となる。道半ば、それが今の私!」

 マリリンは立ち上がると右手を上げ天井を指差した。左手は腰に当てて胸を張る。ビシッと決まる勝利のポーズ。

「何か格好いい」

 気押されるように拍手を贈るカナメン。

「手に入れない事で作られる自分らしさかぁ。私がチュートリアルをやらなかったのも、今の私を作ってるのかなぁ?」

 腕組みをしてカナメンは考え込んだ。

「そうかもしれないけれど、もう武器はあるんだし、今だからこそチュートリアルやってみたら? 縁かもだしさ」

「そうだなぁ。せっかくだしやってみようかな。マリリン、出口を最初の街にお願い出来る?」

「了解っ!」

 マリリンはそう言うと後ろの本棚から1冊の本を取り出した。

 プレイヤー倉庫には本棚が付いている。そこに並ぶ本は街を記した魔法書である。この魔法書を使ってGGLでは街の間を移動するのだ。

 一度行った事のある場所はワープポイントとして記録され本棚に並ぶ。これは読む事も可能で、街の伝説や成り立ちが物語として書かれている。

 メイドが実装されるまでは自分で本を開いて移動していたが、今はメイドが魔法を詠唱してくれるようになっている。

 マリリンが本を開くと魔法の光が溢れた。

「転送完了」

 マリリンの言葉を聞いて、カナメンは倉庫のドアに手をかけた。

「行って来ます」

「行ってらっしゃい」

 倉庫のドアの先は小さな街へと繋がっていた。ワープ移動をしたい時は、GGLではこうやって倉庫を使って街から街へと移動する。


「懐かしいな」

 カナメンは周りを見回した。

 冒険の始まりはこの小さな街から始まった。街の中心には噴水がある広場。広場の周りには二階建てぐらいの高さしかない木造の小ぶりな建物。静かな田舎街という雰囲気だ。残念ながらプレイヤーの姿は1人も見えない。ゲームを始めた頃の賑やかさは今は無くなってしまっていた。静かで誰も居ないのが今のこの街。

「噴水広場で赤色さんと会ったんだよなぁ」

 ゲームを始めたばかりの頃、この街で赤色53号に声をかけられたのだ。その縁が今も繋がっている。体力回復ポーションを沢山くれたおかげで、素材集めが楽になった。1人で遊べてしまったおかげで、ソロプレイヤーになってしまったとも言えなくも無いのだけれど、要にとっては感謝しか無い思い出だ。

 広場を囲むように建つ建物は色々なお店だ。武器屋、道具屋、そして師匠と仰ぐミムロと出会った鍛冶屋。

 ゲームを始めた頃のカナメンは素材を買ったり集めたりして、加工して売っての商売をしていた。露店する場所はいつも同じ所。広場の隅っこで目立たない場所だ。だけれども、行き交う人が良く見える場所。

 人が通り過ぎていくのをみるのも楽しかった。買ってくれるかな? 品物見て行ってくれるかな? ハラハラドキドキしたものだ。

 定位置だった露店場所に座ってみる。

 変わらない景色。だけれども、目に映るのは地面と建物と空だけ。空の景色は何も変わらず青空だ。ゲームだからいつも晴れ。夜にはなるけどいつも晴れている。ゲームだから劣化する事も無い。懐かしい景色。

「私、少しは立派になれたかな?」

 カナメンはネックレスを首にかけた。紫色の石が導くように輝く。

「ナビゲーションシステムオン。クエスト開始」

 ネックレスから光が溢れ出し、目の前を白く染めた。


『チュートリアルを開始します』

 メッセージが頭の中に響いた。

 今、あの日に止めた冒険の未来が動き出す。


次回「69.田中要は前世をする事にした。」お楽しみに!


 更新を再開する事になりました。お休み中もブックマークを続けて下さっていた方がいらっしゃってくれて本当に感謝です。間が開きすぎてお待たせしてすみません。

 タイトルも「再開」となっていて何だか嬉しいです。内容が決まってから合うタイトルを決めているので偶然なのですが、うるっとしてしまいました。頑張ります。

 第6章はゲーム世界にスポットを当てたお話になります。元々完成していたお話にカナメンをぶっこんで作るため、恋骨色がちゃんと出ているかが心配ですがコツコツ進めていきます。

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