表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋骨!~恋するスケルトン~田中要はVRMMOゲームでスケルトンになって恋をする事にした。  作者: 熊谷わらお
第5章 本を開けば恋になる。恋を閉じれば本になる。 59話~67話【話数追加予定】
70/83

66.田中要は盆栽をする事にした。

「なるほど」

 腕を組みながら床に置いた本を読みふける人物が1人。その名はミムロ。床には「植物図鑑」が置かれている。獣人娘のライオンの尻尾がパタンパタンと床を打ち、頷くように規則的な時を刻む。


 ここは街でだけ入れるウォークインクローゼット型のキャラクター倉庫の中。本来であれば武器が並ぶはずの棚には、様々な焼き物が並ぶ。現在陶芸家として日々器作りに勤しむミムロであるが、良い器が出来たらそれに似合う物を乗せたいのが心情であり、自慢の器に似合うモノとしての候補が植物。つまりは盆栽(ぼんさい)である。盆栽、それは素晴らしき趣味。己の意思と植物の意思を合わせた芸術である。しかし、ゲーム内で盆栽が可能なのか? という問題はある。

 VRMMORPG GGL (ジェネシスガーディアンズライフ)はその辺りが良く出来ている。仮想空間を人工知能AIが作っているのだ。複雑なデータもお手の物なので臨機応変に遊べるのが魅力となっているゲームなのである。


「採りに行くかな」

 そう呟いて向かったのは崖。絶景かな。とか言っている場合では無い。落ちたら即死である。と思ったが、ミムロはグリフォンに変身して飛べるから死なないや。一気に緊張感が無くなってしまったが、それならそれで……飛ばしてみるか。ミムロは走り出し勢いを付けると、グリフォンに獣化して空へと飛び立った。


 グリフォンは大きな翼を持つ架空の獣である。わしのクチバシとカギヅメ、ライオンの後ろ脚と尾を持つ。簡単そうにミムロは空を飛び回っているが、本当は難しい事であり、普通のプレイヤーは浮く事は出来ても高く飛ぶ事は出来ない。瞬時に最適な行動が取れなければ、体勢を崩して落下してしまうからだ。高度が上がれば風が強く変化も激しくなる。より高く飛ぶには、恐怖に動じず風を読み、臨機応変に翼を操る技術が必要となるのだ。


 目の前を遮るように、四方が削り取られ断崖絶壁となっている岩山が現れた。周りの崖から離れてポツンと大きな岩がそびえ立ち、その上には立派な大木が生えている。岩の上の小さな草原に降り立ったミムロは、手を腰に当てて木を見上げた。曲がりくねった幹が、味わい深い大木である。

「良い感じじゃないか」

 ニンマリと笑みを浮かべた。お目当てはこの大木。この木を盆栽にしたいのだ。しかし、こんなに大きな木をそのまま持って帰る訳にはいかない。そこで風呂敷包みの中から取り出したるは丸い緑の物体。マリモのようであるがマリモでは無い。コケ玉である。正確には丸い苔の「コケマル」というモンスター。

 20センチぐらいのボール状のモンスターには大きな口があり、食べた物に擬態をして変身する性質を持っている。擬態相手を探すために、ポヨンポヨンと飛び回って移動している所を捕獲して持ってきたのだ。コケマルは食べた物が背中から生えてくる。しかし、アイテムを食べさせても複製は出来ない。相手は生きているモノでないとダメなのだ。強い者を食らい、強者へと変化をする処世術とでも言うべき特技なのだ。


 ミムロが次に取り出したのは、魔法で文字が書かれたリンゴ「アップルーン」これは食べた者の体を一定時間の間、大きくする効果を持っている。コケマルの口にアップルーンを5個ほど放り込むと、プクプクとコケマルの体が巨大化していった。そして、飛び上がった。コケマルは大口を開けて目の前の大木を丸ごと飲み込む。すると、背中から芽が出て育ち、食べた大木が生えて来た。アップルーンの効果が切れるのを待つと、コケマルは元の大きさまで小さくなり、苔玉の上に木が生えた盆栽らしい見た目の物が出来上がった。これで完成! と言いたい所なのだが、このままではモンスターなので倉庫には入れられない。盆栽にして飾るには、もうひと手間必要なのだ。


 ミムロがスキルを発動すると、目の前に現れたのはクッキングヒーター付きオーブン。その上に乗せるのは大きな鍋。そして鍋に入れるのは……ミムロが作った自慢の器と木と化しているコケマル。蓋をしてスイッチを入れたら調理開始である。中に入っているのは料理からは程遠い物なのだが、モンスターとアイテムを結合させるのに最適なのが料理スキルなのだ。普通は丸ごとモンスターを入れたりはしない。お肉を取って来て、合わせたい材料と一緒に投入して調理する。調理と言っても出来上がるまでの時間は一瞬。その辺がゲームらしい所だ。ぽわんっと湯気が上がり、消えた鍋の代わりに器に盛り付けられた盆栽が現れた。

 モンスターを生かしたまま調理済みと判定されるだけの工程を経るのは難しい。ある意味「騙す」に近い。正しさは正しさを生む。間違いは間違いを生む。無いモノは間違いを正しいと判断した時に生まれる。

 ミムロは出来上がった盆栽を両手で持ち上げ、掲げるようにして仕上がりを見た。中々満足のいく出来である。片手で太もものポーチのフタを開けると、盆栽は消えて倉庫の中に納まった。


 キャラクター倉庫に置かれた盆栽は、味気ない場所に緑色の華やかさを加えた。倉庫の中の世界は密やかに変わっていく。1人にしか知られず変わっていく。小さな倉庫の中の変化が、大きな世界を変える事は無い。みんなの世界は変わらず過ぎていく。誰にも何も届かない。だけれども、倉庫の世界は変わっていく。自己満足により、足りない倉庫に無意味は増える。


 モノに意味を足す事が出来るのは、無意味だと思っている者だ。自分にも世界にも意味は無い。無いから決めても良いのかな? 人間、そんなに簡単じゃないけれど。無いから作っても良いのかな? 人間、そんなに器用じゃないけれど。無意味を抱えて意味を探す。


 足りない自分に無意味は増える。その無意味が心を叩く。


 本に関係するシリーズのミムロ編でした。このお話は前半が以前に書いていた物。後半が症状が出てから書いた物になります。予測で後半を書いたのですが、友人に読んでもらい「前半も後半も同じ意味が書いてあるから大丈夫」と言われたので良かったです。

 次のお話から全部書くので時間がかかってしまうかもしれませんが頑張ります。


 6章は「メモリーリトライバル」というお話を変形させて恋骨と合体させる事にしました。ミムロが読んでいた「図鑑」はメモリーリトライバルのキャラが武器として使用していた物だったりします。どこで出て来るかお楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ