61.田中要は読書をする事にした。
一話完結短編シリーズ 恋する着せ替えスケルトン
「LAMBDAさん。本をありがとうございました。また何か借りたいのですがオススメありますか?」
カナメンが言うと、ラムダは少し困った顔をした。
「全部読んじまったぞ、ほねっこ」
ここはVRMMORPG GGL (ジェネシスガーディアンズライフ)の中。倉庫に戻って来たAIマリリンの為にカナメンはオーク村に来ていた。マリリンはああ見えて本を沢山読む。外に出る事が出来ないので暇を持て余しているのだ。倉庫の整理をやって欲しいと思うのはもう諦めましたよ!
「他の村に借りに行ってみたらどうだ?」
ラムダの言葉にカナメンは目を輝かせる。
「他の村にも本ってあるのですか!」
「ガイドに配られるマニュアル本があるんだよ。その村の歴史だとかが書いてある本で、いわゆる設定本ってやつだな」
「なるほどー! 他の村に借りに行って来ます! ありがとうございます、ラムダさん!」
カナメンは頭を下げると、急いで村を出た。
GGLには沢山の村がある。そして、村はガイドAIによって管理されている。それぞれの村には違う種族のガイドがいて、その種族にまつわる話が村ごとに設定されているのだ。
「オーク村の本、全部読んだみたいだよマリリン」
倉庫に戻ったカナメンが告げるとマリリンは荒ぶった。膨れっ面で腕組みをすると、豪華な椅子に座り脚を組む。主従関係も諦め済みです。
「マリリンは物語が本当に好きなんだねぇ。どういうのが好きなの?」
「何でも読むよー。本屋で働いていた時は片っ端から読んでた」
「ん? 本屋?」
「うん。本屋。クビになった」
マリリンは本屋に就職したが、サボって3日でクビになっていた。
「本が好きで就職したのに読むなとは如何に!」
「仕事でしょうが……」
「真面目か?」
「普通です。どうしようかなぁ? どこの村から行ったら良いのだろう」
悩むカナメンの前にマリリンが地図を取り出した。そして、指を指したのは……エルフ村。カナメンとPHIの天敵MUが管理する村である。
「そこは難易度高いな……」
マリリンは両手を目の前で組み頬杖するみたいにすると、きゃるんっとポーズをとった。エルフのイメージらしい。
実際のエルフはと言えば、カナメンの目の前で怒鳴り散らしている。
「何しに来たんだ! 帰れ!!!」
これが本当のエルフである。
「エルフ村の設定本をお借りしたいのですが……」
カナメンが言うと、ミューの目の色が変わった。
「とうとうエルフの魅力に気が付いたか! バカスケルトンッ」
魅力には最初から気が付いてはいる。ミュー以外のエルフについてではであるが。
「貸してやらん事も無いが、もっと良い物があるぞ!」
そう言ってミューが取り出したのは1冊の本。
『世界樹に護られし最強乙女。超エルフ! ミュー伝説』
内容としては、このようになっております。
超凄いエルフがおりました。名前はミュー。誰がしもが彼女に憧れ、モテモテのキャハハ、ウフフで大活躍。レイドモンスターである精霊獣ウッドスピリットエコーを倒し、服従させる凄腕! カッコイイぞミュー! 素敵っ!
つまりはミューが書いた本という訳です。自分で伝説作っちゃってるんだけど、良いのであろうか……。
「お借りしますね」
カナメンが言うと、ミューは祭壇の後ろから紙袋を取り出した。
「はいっ。これで全部」
全30巻の超大作であった。
倉庫に帰ったカナメンは、恐る恐るミュー伝説をマリリンに差し出す。パラパラとめくって読むマリリン。大丈夫かなぁ、悪影響が無いと良いけど。
「マリリンどう?」
「首を刎ねよ!」
「いったい、どんな物語なの!!!」
「面白いじゃん」
「面白い方かいっ」
ミューとマリリンは感性が近いのか? しばらく読みふけっていたマリリンが堪らなくなり叫んだ。
「マリリンも物語が欲しいー!」
どうやら感銘を受けたらしい。感化されて欲しく無いんだけどね。
「マリリンの物語ならもうあるよ? スケルトンのマリリンが活躍するお話なんだけど、リーベルタースの英雄のお話なんだよ」
マリリンは手を出した。その本を出せという事らしい。
「ゲーム内から読めないのかな? 公式サイトに載っていて読めるんだけどね」
カナメンがそう言うと、マリリンは腕組みをした。
「読めないんだったら無いのと一緒じゃん。じゃぁ、そのお話をゲーム内で書いてよ」
「公式もまだ途中で完成していなくてですね……」
「完成させてよ」
「色々大変なのよ? 作者も」
「だったら、あるとか言うの無しでしょ。期待させて出さないとか何様な訳!」
作者も攻撃するマリリンであった。くっ。
次回「62.田中要は刑事をする事にした。」 スケルトンデカが難事件を解決!? お楽しみに!
そろそろマリリンが登場する「メモリーリトライバル」を出そうと計画していたのですが、勇者が魔王を倒して終わり。みたいな真っ直ぐな物語なので、改めて読んでみると面白く無くて、かなり変えないと出せない感じですorz
7月は時間が取れ無くて10日に1回ぐらいの更新になりそうです。ご迷惑をおかけいたしますがよろしくお願いいたします。




