54.田中要は設定をする事にした。
一話完結 恋する着せ替えスケルトン 短編シリーズ
アップデートで届けられたモノは倉庫の中。
カナメンが要望を出していたメイドがとうとう実装されたのだ。
VRMMORPG GGL (ジェネシスガーディアンズライフ)は仮想空間の中で遊べるゲームである。このゲームには、何処でも開けるバッグ型の「フィールド倉庫」と、街でだけ入れるウォークインクローゼット型の「キャラクター倉庫」の2つがある。
今回、倉庫ガイドであるメイドが配置されたのはキャラクター倉庫の方である。
キャラクター倉庫は部屋のような場所にキャラクターが直接入る事が出来るものだ。直接アイテムが探せる楽しさもあるのだが、物が多い人にとっての悩みは、見つからないという事。
物作りが趣味の田中要のキャラ「カナメン」の倉庫はもちろんアイテムだらけの方である。これでやっと快適な倉庫になる。
倉庫が綺麗な者達もみんな倉庫ガイドのアップデートを待ちに待っていた。可愛い女子メイド、カッコイイ男子執事がいつでも愛で放題になるのだ。そりゃぁ心躍る。
使っているキャラクターの性別により、倉庫ガイドの性別は決まっている。男子キャラの場合は女子メイド。女子キャラの場合は男子執事が配属だ。
ゲームにログインしたカナメンは、早速キャラクター倉庫の中に入ってみた。カナメンはスケルトン男子のため、女子メイドが出迎えてくれる。
「お帰りなさいませ。ご主人様」
涼やかな微笑みで迎えてくれた女子は、黒のメイド服に身を包み、白のカチューシャを着けた頭を下げ清楚に振舞う。彼女は真っ白で細い指先を持つ。スケルトンであった。
初期設定がスケルトン。メイドや執事の見た目を変更したい場合は……課金となっておりますっ! ニッコリ。
このゲームに常識を求めてはいけない。ゲームマスターの姿だってスケルトンなんですもの。メイドもスケルトンでございますでしょう? ギルド倉庫のメイドは人間型だって? あらっ、そんなこと言われましても会議の結果こうなりましたのよ? オホホホホッ。
スケルトンで喜んだのはゲーム内で一人だけであったであろう。もちろん、カナメン様でございますっ! ニッコリ。
「マリリンッ!」
「はい。ご主人様」
にやけるスケルトン男子。倉庫ガイドのメイドスケルトンには名前が付けられるのだ。カナメンが選んだ名前は、伝説のスケルトン「マリリン」である。
マリリンとはGGLの世界の元になっているファンタジーの物語に出てくるキャラクターなのだ。最強の召喚師が操る召喚獣がスケルトンという物語である。元の物語からしてスケルトン押しなのである。
自分が着る事は無いが、お気に入りで保管しておいた洋服を取り出し床に並べだしたカナメン。マリリンに着せる服を選んでいるのだ。倉庫ガイドは着せ替えも可能となっている。現実世界でスケルトンの服を作っている要にとって、スケルトン女子の着せ替えも燃える所だ。遊びと仕事が一石二鳥で進んでしまうのです。やらぬでどうする!
白衣のスケルトンやゴシックスケルトンも良いモノだぞ!
積まれた洋服の山を崩していると、間から白いタオルが出て来た。ミムロに頼まれていた物だ。
タオルを手に取るとカナメンは倉庫の外へと出る。そして、手紙を書こうとフィールド倉庫に指定しているポーチからメッセージ用紙を取り出した。ペンでメッセージをしたため、カナメンは用紙をクルクルと筒状に丸めると、送信先をイメージして空に放る。手紙は消えて光になり送信が完了となった。
もう一つの嬉しいアップデートがあったのだ。キャラクター倉庫の制限緩和である。ユーザーが倉庫に引きこもらないようにするため、連続使用時間と人数の制限があった。しかし、倉庫ガイドはそれらの心配事を解決する事にもなったのだ。つまり、他の人の倉庫に遊びに行けるようになったのである。
カナメンの目の前にドアが現れた。そこから出て来たのはTシャツとツナギの作業着が良く似合う女子キャラ「ミムロ」であった。
「カナメン入れ。人数拡張済んでるから」
「師匠。お邪魔しますね」
ミムロはカナメンの師匠である。というか、カナメンが師匠だと言っているだけであるが。何の師匠かというと、鍛冶の師匠である。「伝説の鍛冶職人ミムロ」GGLの有名人なのだが、人前に姿を現す事が少なく謎の人物とされている。現在は鍛冶を引退してロクロを回して焼き物を作っている陶芸家となっている。そのため、すっかりゲームを引退したと思われている有様だ。
「師匠、タオルどうぞ」
「ありがとうな、やっぱ綿100%のコレじゃないと調子が出なくて」
カナメンは自分の倉庫で見つけたタオルをミムロに渡した。タオルを受け取ったミムロの尻尾が嬉しそうに揺れた。
ミムロはライオンの尾を持つ獣人だ。選んだ動物はグリフォンである。ライオンと鷲を合わせた架空の獣を選べたので選んだ強者である。ゆえに、やんちゃそうに見える獣人女子にはライオンの耳は無い。
ミムロの倉庫内に入ると、スケルトンの執事が出迎えてくれた。
「俺の執事、カナメン2号だ」
「もーっ、師匠! 私の名前付けたんですか!」
このラブラブっぷりである。
「骨と言ったらカナメンだろ。倉庫拡張はやったか? 滞在時間24時間まで増やすとスキルが発生して倉庫内に工房とか作れるようになるぞ」
「そうなんですか!?」
「山小屋閉めてきたわ。これからは街に住む事にする。設置に面積使うから棚数も関係あるかもな」
ミムロの倉庫はかなりの広さがあるが、壁一面に作られた棚には、ミムロが作ったと思われる焼き物が所々にあるぐらいでアイテムがほとんど入っておらず少し寂しい感じだ。それなのに、奥にはロクロを回す場所。そして、焼き物を焼く窯まで置いてあった。必要になったら作る。そんなミムロの性格が見て取れる。
このゲームは生活する事でスキルが発生する。それはプレイヤーに限ったものでも無いようだ。課金の他にどう使うかによって倉庫の使い勝手も変化するらしい。
ミムロの倉庫を出ると、カナメンは声をかけられた。
「お前なぁ、儲かる企画は俺に持って来いよ。昇進のチャンスだったのに……」
声をかけてきたのはゲームマスターのTAUであった。
「儲かってるんですか?」
「ほぼ全員が課金してんだよ」
今回実装された倉庫関連は90%のユーザー課金率を叩き出したのである。ホクホクのウハウハである。
「そっかぁ、何か褒美貰えますかね?」
「プロパイから貰えよ。あいつの手柄になってんだから」
不服そうにタウは溜息をついた。
皆、スケルトンが嫌だったのである。ほとんどのユーザーが倉庫ガイドの見た目変更に課金したのだ。だって、人間、エルフ、ネコ耳娘などがラインナップにあるのだ。可愛いから美しいまで選べるのだ。課金さえすればスケルトンに好みの肉が着せられるのである。やるしかねぇ!
「みんなの倉庫見て来ます!」
そう言ってカナメンが訪れたのは。
七味の倉庫。
出迎えてくれたのは老紳士の執事「一味」綺麗に整頓されている感じが中身の皆川七見らしい。落ち着いた装飾が、何とも過ごしやすい空間となっていた。キャラクターは美少女であるが、倉庫はシンプルで少し男っぽいのが面白い。
赤色53号の倉庫。
出迎えてくれたのは淑女メイド「メイド」誤解の無いように言っておくが、名前が「メイド」のメイドである。しかも、ギルド倉庫に居るのと同じ見た目である。中身の橘瑞稀らしい適当さである。しかしながらお洒落な空間となっていて、センスの良さは本人譲りだ。性格が適当で無愛想なだけで、センスは良いんだ、センスは。
ヒヨコの倉庫。
出迎えてくれたのはマッチョな執事「カゲロウ」この名前は、ヒヨコと赤色が前にやっていた対人サバイバルゲームの時のヒヨコのキャラ名である。このマッチョ、執事なのに迷彩服である。倉庫の中にびっしりと並ぶ武器。きっちりと等間隔に並べられた武器たちにより、倉庫というよりは処刑場のようである。中身の小田珠子は可愛らしい女子だが、とても女子の倉庫には見えない。絶対に本人には言えないが。
イヌカイの倉庫。
出迎えてくれたのはケモ耳娘のメイド「モフモフ」獣の垂れ耳と尻尾。可愛らしい仕草。そして、立派な巨乳をお持ちである。中身の犬飼真の趣味が垣間見える。物だらけな所はカナメンの倉庫を思わせるが、モフモフの周りだけは綺麗に飾られていて愛が感じられたので良しである。
カナメンの倉庫。
出迎えてくれるはずのスケルトンメイド「マリリン」は……寝ていた。カナメンが並べた服の上で寝ていた。メイド失格である。
「マリリン?」
マリリンの肩がビクッと動いた。が、どうやら寝たままを決め込むらしい。仕方が無いのでカナメンは倉庫の外に出た。そして、もう1回入る。
「ただいまー!」
勢いよくドアを開け、ちょっと大きめの声を出した。
「お帰りなさいませ。ご主人様」
マリリンは今度はちゃんと起き上がって挨拶をした。何事も無かったように……。しかし、服にシワが寄っている。誤魔化し切れていない。
その後も……。面倒だと聞こえないフリをするなどの不具合が発見される。どうやらカナメンの倉庫には不良メイドが配属されてしまったらしい。
「主人が居ない間に荷物を並び替えてくれる機能があるのかぁ。使ってみようかな」
倉庫の棚に置かれていた本「倉庫使用マニュアル」を読んでいたカナメンが指示を出す。
「マリリン、整理整頓機能オン!」
微動だにせず、今日も聞こえないフリをするマリリンであった。
最強の新キャラ「マリリン」が登場しました! お気に入りです! 果たしてカナメンはマリリンに働いてもらう事は出来るのでしょうか。
次話はおまけ企画のキャラ紹介になります。お楽しみに!




