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恋骨!~恋するスケルトン~田中要はVRMMOゲームでスケルトンになって恋をする事にした。  作者: 熊谷わらお
第4章 恋は、けもの道。そして時々、いばら道。されど足は止められず。 46話~58話【完結】
55/83

53.田中要は獣王をする事にした。

一話完結 恋する着せ替えスケルトン 短編シリーズ

「今回は動物達と戯れるイベントです!」

 イベントアナウンスの元気な声が響く。


 VRMMORPG GGL (ジェネシスガーディアンズライフ)は仮想空間の中で遊べるゲームである。このゲームのイベントは多岐にわたる。モンスターの討伐からアイテムの収集。そして、現実では見る事が出来ない過去の場所や生き物を見るものまで、バーチャルリアリティを余す所無く使った、体験を経験にするイベントが遊べるのが魅力だ。


 アーチ状に作られた看板には「ふれあい動物園」の文字。その奥に広がるのは広大な土地と自由に動き回る動物たち。可愛らしいウサギから大きなゾウまで全てが放し飼いになっている。ノーガードサファリパークといった所であろうか。

 本物の動物では無いため、弱肉強食は考慮しなくて良いのが嬉しい。


「カナメンさぁーん」

 少し泣きそうな声を出しているのは七味(しちみ)。人間の美少女を操る男子「皆川(みながわ)七見(ななみ)」のキャラクターだ。手には空になった箱を持っている。


「七味さんもですか」

 苦笑いしながら言葉を返したのはカナメン。スケルトン男子を操る女子「田中(たなか)(かなめ)」のキャラクターだ。


「私も餌代で大分課金しちゃいましたよ。今月はキャベツでしのがないと」

「僕なんてご飯に醤油ですよ」

 溜息(ためいき)をつきながらも嬉しそうな二人。


 この動物園。見て触れてだけのモノでは無い。きっちり課金要素も盛り込まれている。動物にエサをあげたければ課金すべしなのである。

 エサを持った途端に素っ気ない動物達からの大好きアピールが貰えるのだ。そりゃぁ課金しちゃうでしょう? 人心を良く分かっていらっしゃる訳ですよ。キャベツは日持ちするんでオススメなんですよ。生でも炒めても美味しいんですよ。芯の部分は薄くスライスすると食べやすいんですよ。


 お金も尽きたので、無愛想な動物達を撫でまわして歩く。


「カナメンさん、動物好きなんですね」

 全ての動物に触るスケルトンにニコニコ顔の美少女が言った。


「いつでも倒せるように骨を確認しておこうと思って」

 可愛がっていたのでは無いらしい。骨には骨の愛し方がある。(あい)()()()


 赤色(あかいろ)53号とイヌカイの姿も見える。馬を撫でる赤色の後ろで、狼姿(おおかみすがた)のイヌカイはプレイヤーに撫でられているが、いつもの事なので、そこは気にしない、気にしない。


「サファリデスマッチ! さぁ誰が最後まで生き残るのでしょうかー!」

 元気なアナウンスが響いた。

 GGLのイベントに付き物の破壊タイム発動である。人工知能AIにも破壊衝動があるのではと疑いたくなる所だ。


 さっきまで媚びていた獣が牙を剥く。キラキラと輝いていた目は、ギラギラと敵意をむき出しに、プレイヤー達に襲い掛かるのだ。体からはゆらゆらと黒い煙のようなモヤが立ち上がっている。


 飛び上がり襲い掛かる複数のウサギを器用にかわす七味。カナメンの(むち)がしなった。ウサギをまとめて縛り上げる。

 一方赤色の方では、ゾウとの格闘が行われていた。イヌカイがゾウの足踏みをジャンプでかわしながら気を引いた所を、赤色の剣が硬いゾウの皮膚を切り裂く。そして、牙での攻撃を寸でかわした赤色の背中を駆け上ったイヌカイはゾウの首に噛みついた。(ひる)んだ所を赤色の剣がすかさず振り下ろされたが、倒すまでには至らず、ゾウは赤色に突進して来た。

 その時、巨大な炎の塊が上空から降り、赤色を狙ったかのように降り注いだ。魔法での攻撃を想定していなかった赤色は避ける事が出来ず、まともにくらって光になってしまった。それはプレイヤーからの攻撃であった。


 動物との戦いだけでなく、人間との争いも同時に起こる。


 獣の本能を呼び起こした者が勝つ! 死の戦い! デスマッチ! その名の如く最後の一人になるまで戦う、生き残りをかけたイベントなのだ。そこには動物もプレイヤーも関係ない。最後の一人のみが勝者なのだ。


 カナメンは大きく息を吸った。対人も想定した戦闘モードに切り替えたのだ。


 カナメンの強さは鍛冶技術(かじぎじゅつ)と流れを読む力で出来ている。

 単純なプログラムを相手にしている時は(くせ)を見抜くだけで勝てるが、プログラムが複雑化した時に必要になるのは、外側のプログラムと内側のプログラムを読む力である。


 外側とは体の構造から作り出される可動範囲や威力。内側とは心の動きである。要がそれを習得出来たのは、物を作って売る事を行ってきたからだ。

 常に失敗や敗北を想定し、損失をカバー出来る範囲に収める。小さな会社に勤めるのに必要となる能力だ。守りたい場所。それを守るための力である。


 カナメンの元に七味とイヌカイが集まって来た。協力出来る仲間を得るのも、生き残るのに必要となる。


 そこにリカオンの群れが現れた。20匹以上いるように見える。犬に似た見た目を持つこの動物は集団で狩りをする。リーダーを中心として統制のとれた連携をとり狩りを行う動物なのだ。

 リーダーと思われる一匹が鳴き声を上げた。それを合図にするかのように走り出すリカオンたち。素早い動きでプレイヤーを弄ぶ。一匹が足を狙い、プレイヤーを転倒させると複数のリカオンが一度に飛び掛かり仕留めた。


 七味の防御プロテクト魔法で防ぎながら、イヌカイが敵を追いかけベストポジションに追い込む。そして、カナメンの鞭は追い込まれたリカオンを光へと変えて消していく。

 しかし、リーダーのリカオンは鞭の動きを読むかのように潜り抜けた。牙はカナメンの首を捕らえた。と思われた瞬間、リーダーリカオンの体は横から噛まれ地面へと叩きつけられる。そして、噛み付いたイヌカイと一緒に地面を転がっていく。お互いに牙を剥き、噛み合う。それは、お互いの体を引き裂き二匹とも動かくなるまで続いた。二匹はゆっくりと光に変わる。


 生き残る。それに意味は必要ない。それが本能だ。


「昔の人って大変だったんだね」

 肩で息をしながらカナメンは鞭を振るった。

「生きるって本当、大変だ」

 七味はMP回復ポーションを一気に飲み干した。


 二人の目の前にへんな顔をした動物が現れた。軽快と言えなくも無いが、ひょこひょことヒョウキンな歩き方をしている。馬でもない、ラクダのような顔だがコブも無い。


「あれ、何?」

 七味が首を(かし)げると、それに合わせて変顔も首を傾げる。

「リャマですね」

 カナメンが言った。


 リャマは襲ってくる様子が無かった。が、カナメンと七味の周りをウロウロとするばかりで、離れる様子も無い。

 襲い掛かって来る動物やプレイヤーを倒していくカナメンと七味。と、周りで走り回るリャマ。まるでパーティーメンバーのようである。


 そして、3人の前に最大の敵が現れた。


 その者、百獣(ひゃくじゅう)の王である。立派なタテガミを持った(おす)のライオンは、落ち着いた物腰で(たたず)んでいる。不用意な動きをしない所を見るとかなりの戦闘の手練(てだ)れだと分かる。


 ライオンはカナメンを見つめたまま、ゆっくりと間合いを詰めて二人に近づいてくる。残念だがリャマはいつの間にか居なくなっていた。


「七味さんは手を出さないでください。私を指名しています」

 カナメンもライオンから目を()らす事無く足を前に進めた。


 お互いの攻撃範囲に入った瞬間、ライオンは加速した。カナメンは鞭を振るったが、それに怯む事無く、真っ直ぐ進むライオン。その目はカナメンの首だけを狙っている。

 大きな体を跳ね返す武器や魔法は持っていない。残されているのは攻撃をかわす事だけだ。カナメンがライオンの攻撃をかわしたように見えた瞬間、ライオンの()はカナメンの(ほお)を強く打ち付けた。かわされる事を想定しての攻撃である。体勢を崩したカナメンに、すかさず襲い掛かるライオン。爪がカナメンの服と体を切り裂く。地面に叩きつけられながら、鞭の()で噛み付きを防ぐ。蹴りつけながら転がり攻撃をかわすカナメン。体勢を整えるために間合いを取る。


 カナメンは鞭を両手で持つと、大きく息を吸った。


 カナメンの目の奥に赤い光が宿る。


「ステイッ!!!」


 鞭は振り下ろされ地面を激しく打った。


 呼吸音だけが静かに場を制圧する。


 カナメンの左手が魔法の光を帯びた。そこにはボーンフラッシュが作り出されていた。ただ光るだけの骨。ボーンフラッシュは宙を舞う。ライオンも宙を舞う。骨だーい好き。本能である。勝負あったである。ライオンは宙を飛びながら光になった。


「怖かったぁ」

 へなへなと座り込むカナメン。

「カナメンさん! かっこよかったです!!!」

 カナメンに近づく七味。とリャマ。まだ生きていたらしい。


「何かこいつ、動きおかしくないですか?」

 七味の言葉に、リャマは首を振って否定する。そして、何かを察したのか走り出した。


「待てーっ!!!」


 七味に追い回されるリャマ。走り回って逃げるリャマ。魔法で縛り上げられるリャマ。観念した顔をするリャマ。自爆する七味。光になるリャマ。


 こうして楽しい動物園はカナメンの生き残りで終わった。


 その裏では。


TAU(タウ)惜しかったね。今回は運営側の勝利だと思ったんだけどな」

 その声をかけたのはゲームマスターのEPSILON(イプシロン)だ。ここは運営の控室(ひかえしつ)。モニターを見ながら残念そうにしている人工知能AIのゲームマスターやガイドたち。普段はスケルトン姿で過ごしているゲームマスターや狩場で案内をしているガイドがイベントでは動物の中に入っていたのでした。


 リャマの中から転送されたタウはスケルトン姿に戻って、床に座り頬杖(ほおづえ)をついた。


「七味の野郎……」


 イベントはAI達のストレス発散を()ねているのでした! この事は内緒だよ?


 お待たせしました。次回とうとう3人目の刺客。じゃなかった、新キャラが登場です! 今度の新キャラはどんな奴だ! 「54.田中要は設定をする事にした。」お楽しみに!

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