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恋骨!~恋するスケルトン~田中要はVRMMOゲームでスケルトンになって恋をする事にした。  作者: 熊谷わらお
第4章 恋は、けもの道。そして時々、いばら道。されど足は止められず。 46話~58話【完結】
54/83

52.田中要は収穫をする事にした。

一話完結 恋する着せ替えスケルトン 短編シリーズ

 イチゴ畑で美少女は、赤く輝くイチゴを手に取った。


「これどうかな?」

 七味はイチゴを顔の横に持ち上げてカナメンに見せる。


「似合いますよ」

 隣にいるスケルトン男子はホクホク顔で微笑んだ。イチゴと美少女はとても良く似合う。


「そうじゃなくてっ」

 頬を赤くしながらイチゴのように照れる人間の美少女七味(しちみ)、中身は男子。


「私はこれが気になるんですよ」

 そう言ってカナメンは、ピンク色というかむしろ白とも言えそうなイチゴを手にして見せる。食べたら酸っぱそうだ。


 ここはVRMMORPG GGL (ジェネシスガーディアンズライフ)のゲーム内。二人の目の前には青空と畑が広がっている。イベント用に設置された畑だ。今回のイベントは収穫イベントなのである。


(いびつ)な方が良さそうな気がするんですよね。緑色のこれはどうでしょう?」

 スケルトンの手のひらには青々として(ゆが)んだ形のイチゴが乗っていた。中身の田中(たなか)(かなめ)は女子ながら赤やピンクとは縁遠(えんどお)いようだ。


「うーん。意外に良いかもだけど、ダメだった時に悲しい気持ちになっちゃうかも」

 カナメンのセンスに少し困惑気味の七味は、残念そうな顔をして答えた。


 七味はハサミを取り出すと、真っ赤に熟れたイチゴの実につながった枝を切る。


『ポンッ』


 軽快な音と共にイチゴは「10」の文字に変わって消えた。


『10ポイント獲得!』

 アナウンスが頭の中に鳴る。


 今回のイベントは、畑で果物や野菜を集める「収穫イベント」なのである。

 イベント会場に並んだプレイヤーは100人ずつのグループに分けられて別空間の畑へと誘導される。畑では様々な実が生っているのだ。イベント用に配布されたハサミを使ったり、身に着けた状態で収穫するとポイントが手に入る。

 制限時間は1時間。または、HP体力ゲージが0になるまでである。回復は出来ないようになっている。


 カナメンが緑色のイチゴの枝を切ると『ボフッ』っという音と共に爆発した。


「ハズレでしたぁ」

 悲し気な声のスケルトンは顔を真っ黒にしながら(なげ)いた。

「でもHP5減っただけで済みました」


 そう、収穫イベントはハズレの実を選ぶと爆発してしまうのだ。そして、爆発の規模により体力を奪われる。

 ポイントの傾向としては、大きな実はポイントが多く、小さな実はポイントが少ない。しかしながら、失敗した時のリスクも少なくて済む。大きく稼ぐのかコツコツ稼ぐのか、ユーザーの性格と運が試されるイベントなのだ。


「次は大根にしましょう」

 色気の無い事を言いながらスケルトンは立ち上がった。


 ブドウ、リンゴ、ナシ、ミカン、キラキラとカラフルに実る可愛いには目もくれず、大根、カボチャ、キャベツ、白菜に心惹かれる要。

 1人暮らしとしてはお高い果物より、買い求めやすい野菜の方が視界に入るのである。むしろ果物は見てはいけないのだ。買えないんだもの。

 買うイベントでは無いのだが、普段の習性は変えられない。


「これは良い大根」

 カナメンは土に半分埋まった大根の、茂る葉を掴むと迷わず引き抜いた。

『20ポイント獲得!』


 そして、次々と大根を引き抜くカナメン。

『25ポイント!』『30ポイント!』『50ポイント!』


 野菜の目利きはお手の物である。生活感を楽しむイベントでは無いわけなのだが……。


 木に実って垂れさがるレモンを手にした七味。フレッシュである。それを遠目で見ながら大物のネギを引き抜くカナメン。


 オレンジ色と鮮やかな緑色が映えるニンジンを手にした七味。キュートである。その横でジャガイモの葉を掴み荒ぶるように左右に揺らしながら引き抜くカナメン。


 本人が良ければ良い。良いんだ!


 急に空が大きな影に(おお)われた。空を見上げるとそこには白い大きな物体が浮かんでいる。というか落下中だ。

 逃げ惑うプレイヤーの真上から落ちて来た大きな野菜は土にめり込んだ。


「ボーナスタイム! 大きなカブです!」


 白々とした大きなカブは、その葉を地面に広げた。


「このカブを引き抜くと、一万ポイント山分けです!」

 畑に流れたアナウンスを受けて、カブに嬉々として集まるプレイヤー達。その中にスケルトンも勿論いた。葉を掴んで引っ張る。


 カブをスケルトンが引っ張って「うんとこしょぉ」

 スケルトンを美少女が引っ張って「どっこいしょー」

 美少女を人間の少年が引っ張って「うんとこしょぉ」

 少年を狼が引っ張って「どっこいしょー」


『それでもカブは抜けません!』


「5分以内に抜かないと爆発して全員にダメージが出ますよー! 頑張れー!」

 非情なアナウンスに慌てて列に並ぶプレイヤー達。


「カナメンさん! 手を離しちゃダメですよ!」


 カブをスケルトンが引っ張って「うんとこしょぉ」

 スケルトンを美少女が引っ張って「どっこいしょー」

 美少女を人間の少年が引っ張って「うんとこしょぉ」

 少年を狼が引っ張って「どっこいしょー」

 狼の尻尾を後ろの人が引っ張って「うんとこしょぉ」


『それでもカブは抜けません!!!』


「私、先頭は嫌です!!! 何か嫌だーーー!」

 責任重大な位置についてしまったスケルトンの悲痛な叫びがコダマした。


 カブをスケルトンが引っ張って「うんとこしょぉ」

 スケルトンを美少女が引っ張って「どっこいしょー」

 美少女を人間の少年が引っ張って「うんとこしょぉ」

 少年を狼が引っ張って「どっこいしょー」

 狼の尻尾を後ろの人が引っ張って「うんとこしょぉ」


『それでもカブは……』

 スケルトンの手が滑る。


『それでもスケルトンは……』

 カナメンは七味の手を掴むと、カブの葉を七味に握らせた。そして、身を翻しカブを肩に担いだ。


「ファイトおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 スケルトンに筋肉はない。心の筋肉はモリモリだ。そして、カブが宙を舞った。


『ポンッ』


 軽快な音と共にカブは「10,000」の文字に変わって皆の上に光を降り注いだ。


「おめでとうございます! 一万ポイント獲得です!」


 歓声に沸くユーザー達の真上から、次のカブが落ちてきていた……。終わりなき戦い。というか嫌がらせ? 続くカブ地獄に疲れ果てたプレイヤー達はとうとうカブを爆発させてしまう。巻き込まれて体力は大きく削られ、生き残っている人もまばらになってしまった。


「カナメンさん……」

 声の主、七味の方を向くと、そこには2つの真っ赤なトマトの枝を持った七味がいた。そのトマトは腰の高さまである巨大なものだ。枝にハサミを当てる七味。目がいってしまっている。


「七味さん落ち着いて……ゆっくり手を離して」

 カナメンの説得に首を振って拒否を示す七味。


「僕は決めたんだ。この一発にかける。もう僕のHPは10しか無いんだ。どちらかが爆発しても片方の得点は手に入る」

 恐怖に震えながら目に涙を貯めて決心したように語る七味。ハサミが思いっきり握られると、彼は星になった。


「両方ハズレでしたよ。七味さん」

 カナメンの言葉は、イベント会場の外にワープした七味には届かないだろう。


 制限時間の1時間も差し迫った頃。カナメンの目の前に真っ赤なトマトと真っ緑なトマトが現れた。その大きさは七味を星にした残虐トマトと同じぐらいの腰まである大きさである。

 さっきは赤が両方ハズレであった。今あるのは赤と緑。今回も両方ハズレとは考えにくい。カナメンに残された選択肢は赤を切るか、緑を切るかだ。


 残り時間のカウントが始まった。


『ピッ、ピッ、ピッ、1分前』


 カナメンのハサミを持つ手が震える。赤か、緑か。赤の枝にハサミをかける。が、握れず息を吐いた。


「はぁ、はぁ、はぁ」


 緑色のトマトの枝にハサミをかける。


『ピッ、ピッ、ピッ、10秒前』


 ハサミの刃が重なった。


 ブラックアウトしていくカナメンの目に「10」の文字が映っていた。


「10ポイントかーい」


 薄れゆく意識の中で「野菜は熟れてから収穫しよう」そんな教訓がカナメンの頭の中に浮かんでいた。


王の階段を駆け上るスケルトン! 『私、獣王になります!』 骨ある者の頂点を目指せ!

次回「53.田中要は獣王をする事にした。」お楽しみに!

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