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恋骨!~恋するスケルトン~田中要はVRMMOゲームでスケルトンになって恋をする事にした。  作者: 熊谷わらお
第3章 それは田中ですか? いいえ、これは中田です。 38話~45話【完結】
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39.田中要は販売をする事にした。

一話完結 恋する着せ替えスケルトン 短編シリーズ

 カナメンはウキウキの足取りで走っていた。草原を駆けるスケルトン男子は青春と言わざるを得ない。


 ここはVRMMORPG GGL (ジェネシスガーディアンズライフ)仮想空間で遊べるゲームの中だ。

 だから、スケルトンが走っていても問題は無い。多少の恐怖はあれど問題は無い。骨だって青春や恋がしたいっ。


 スケルトンキャラ「カナメン」を操るのは田中(たなか)(かなめ)。女子だ。一応大切な事なのでもう一度言うが、女子である。


『今日は七味(しちみ)さんにいっぱい話したい事があるんだ。「眠れる(はか)の美女」でしょ「ヘンゼルと()レーテル」でしょ』

 そんな事を思いながら美少女の姿を探す。美少女とは言っても中身は男子だが。


 人間キャラの女子の中身が男子で、スケルトンキャラの男子の中身が女子であるが、意外にしっくりと来てしまうのは、それぞれの性格のおかげだと思われる。


『おっ、七味さん発見って……隣にいるのは誰だろう?』

 七味の隣には見知らぬ人間のキャラクター。これまた美少女がいた。


 美少女2人が並んで楽しそうに話している。いつもカナメンと遊んでくれる七味ではあるが、他に友達がいない訳では無く(むし)ろ七味は人気者である。

 一緒にいる時には断っているようだが、カナメンがログインしない日はパーティーに誘われて遊んでいる。


 アンデッドフェスティバルに向けて仕事が忙しくなってきた要は、最近はログインしない日もあったりするのだ。今日もお話だけして1時間で落ちる予定だった。


『明日お話する事にしよう』

 カナメンはひっそりとログアウトした。


 次の日、スケルトン男子は颯爽(さっそう)と走る。テトラポットがあったら登って、空に向かって叫びたいぐらいの勢いである。


『今日のオススメは「長靴をはいたゾンビ」この出来が素晴らしくって、猫がゾンビに代わってもお話がそのまま使えるんですよ!』

 そんな事を思いながら美少女の姿を探す。


『長靴って、ゴム長靴? だとしたら黒か白かな? 七味さん発見! って……今日も美少女と一緒なのかぁ』

 骨男子の姿は、静かに(きり)になりゲームから消えた。


 さらに次の日、3度目は正直になろうと心に決めてゲームにログインするカナメン。しかしながら、楽しそうな様子を見てしまうと心が(にぶ)ってしまう。


『今日も美少女と一緒だけど、今日こそはお話したいなぁ。こんな時はどうしたら良いんだろ……そうだ! 雑誌で読んだ恋愛マニュアルを思い出すんだ!』


 マニュアル「向こうが気付く位置に回り込み、偶然を(よそお)うべし。気付かれる努力も大事だぞっ」


 カナメンは少し離れた場所を、2人から視線を外し空を見ながら歩く。


『何っ、話に夢中で気が付かないだと! もう一度通るか? いやしかし、分かっていて無視の可能性もある。これは……(ため)されるスケルトンなのか?』


 強烈なスケルトンという個性を持って、他人に気付かれない。それは(すなわ)ち、スケルトン失格!


 草原に座り、(ひざ)を抱えて空を見上げる。次のマニュアルを思い出していると、声をかけられた。

「カナメンさん!」

 この鈴の鳴るような美声は七味である。


 マニュアル「待ったとしても、今来た所と言うべし。全身で喜びを表現して、会えて嬉しいアピールをする努力も大事だぞっ」


 カナメンは目一杯の驚きと喜びをスケルトンで表現する。が、もう一人の美少女の姿が無い事に気付き、つい聞いてしまう。

「七味さん、お友達は良いんですか?」

「あっ、うん、偶然会っただけだから大丈夫」


 しかし、スケルトン探偵は気付いてしまった。

『こいつは……クロだな』


 スケルトン探偵が探りを入れるも、(しら)を切る美少女の鉄壁の守りにより、謎の美少女の正体は分からず仕舞いであった。今度は探偵マニュアルを買う必要がありそうだ。


 アンデッドフェスティバル当日。

 ブランドZs(ゼス)の販売スペースで(みなみ)桔梗(ききょう)と田中要は忙しく走り回っていた。アンフェスでのお客さんの反応や意見を聞いて、今後の商品開発や生産数を決めるため2人は毎年参加をしている。


 アンフェスとはアンデッド関連の即売会(そくばいかい)である。ゾンビやスケルトン、幽霊やヴァンパイアなど、死んでいるのか生きているのか分からないキャラ達が一堂に集まるお祭りなのだ。


 決められた場所にテーブルが割り当てられており、その場所の中で品物を飾って値段を付ける。フェスに来たお客さんが気に入れば、その場で購入する事が可能だ。

 フリーマーケットのような感じだが、売る事が出来るのはアンデッドグッズ。普段は手に入りにくいマイナーなキャラクター達のグッズが大量に集まるとあって、アンデッド好きなら一度は足を運ぶイベントとなっている。


 ゼスのテーブルに並ぶ品物の一部を紹介しよう。


「スケルトン ピアス」

 前の部分が頭蓋骨(ずがいこつ)、後ろのピアスキャッチが体になっていて、合わせるとスケルトンになる。()れるスケルトンの体が(おど)っているように見えて、お洒落なお品。


棺型(ひつぎがた) 箸箱(はしばこ)

 棺を()した真っ黒な箸箱の中には真っ白な骨、いえお箸が入っております。ちなみに、ゾンビバージョンもございます。一見迷彩(めいさい)柄に見えますが、腐敗(ふはい)柄です。

 箸箱を開く度に脳内でRPGごっこも出来るのでオススメです。

『腐った箸が現れた。コマンド選択、使う』


「スケルトン リングスタンド」

 土から()い出した手をモチーフに、骨指にリングを付ける事により紛失を防ぐアイテム。インテリアとしても()える逸品(いっぴん)となっております。

 ゾンビバージョンも、もちろんございます。


「開封厳禁。スケルトンが入っていますのステッカー」

 開けて欲しくないダンボールに貼って牽制(けんせい)しよう。はみ出し指先シール付き。


「恐怖入魂お手紙セット」

 封筒のフタ部分にスケルトン指先シールを貼るだけで、あら不思議。普通の封筒が恐怖に早変わり。

 スケルトンバージョンは真っ黒な棺色。ゾンビバージョンは濃いグレーの墓石色の封筒と便箋のセットになっております。

 魂の叫びが書き込めるホワイトのペン付きでございます。


 もちろん、桔梗の作った美しいゾンビフィギュア「ブライトゾンビ」も並ぶ。


 人の波が切れて一息ついた時、スケルトン探偵は見てしまった。


『あらっ、まぁ』


 そこには現実世界での七味、つまりは皆川(みながわ)七見(ななみ)がいたのだ。


「ななみん、こっちー!」

「ユキノさん、ありがとうございます」

 七見の隣には可愛らしい女子の姿。


『ななみんですか……そうですか』


「買い物終わったら、ご飯どこ行くぅ?」

 ユキノと呼ばれた可愛い女子は、七見の腕にしがみ付いた。


『これは……完全に彼女でございますね。がんばれーななみん』


 ユキノがゼスのスペースに軽やかな足取りで駆けてくる。


「これ、可愛いよ!」

 ユキノはスケルトンやゾンビのアクセサリーを指差す。

 後を追って来た七見は、要の姿を確認すると目が横へと泳いでいった。


 ニッコリとほほ笑む要。


 七見はユキノの腕を掴むと早足で遠ざかる。


「ななみーん、あれ買うのー」

 抵抗するユキノも引きずられながら遠ざかっていった。


『ななみん、買ってってー』

 ユキノにも要にも、ねだられる七見であった。


 フェスの片付けが終って、ようやく家に帰って来た要が携帯電話を見ると七見からメールが来ていた。


『ご飯食べた後にメールくれたのかな?』


 そういえば一緒にご飯を食べに行った事が無かったのに気が付いて、少し落ち込んでしまった。要は何だか白ヤギさんな気分なので読まずにメールを返す。

 そしてベッドに倒れ込むと、そこに横たわるスケルトン型抱き枕を強く抱きしめた。


『別に何ともないもん』



~おまけ童話~ 長靴をはいたゾンビ


 昔々ある所に、貧しい粉ひき職人がおりました。ある日粉ひき職人が死に、彼の3人の息子には、長男「粉ひき小屋」次男「ロバ」三男「ゾンビ」が遺産として分けられます。


 自分だけ価値のないゾンビをもらった三男ががっかりしていると、ゾンビは言うのです。

「私に長靴と袋を下さい。私が必ずあなたを立派にしてみせます」


 長靴と袋をもらったゾンビは、ウサギを捕まえ王様に献上しました。

「我が主人、カラバ侯爵(こうしゃく)からの贈り物です」

 カラバ侯爵というのはゾンビが考えた(うそ)の名前でした。ゾンビは贈り物を繰り返して、王様と親しくなります。


「お礼に出かけるから伝えておくれ」

 王様から言われたゾンビは、王様とお姫様が通りかかる場所で三男に水浴びをさせました。

「大変です。カラバ侯爵が水浴びをしている最中に、服が盗まれてしまいました」

 ゾンビは嘘を王様に伝えて立派な服をもらい、カラバ侯爵の城まで馬車に乗せてもらう事にします。


 馬車を先導したゾンビは、道端で会う人達に言いました。

「ここは誰の土地かと聞かれたら『カラバ侯爵の土地です』と言わないと頭から食べてしまうぞ」

 

 本当は怪物の土地でしたが、人々は「カラバ侯爵の土地です」と答えたため、王様は領地の広さに感心をします。


 ゾンビは豪華な城に先回りをすると、その城の持ち主である怪物に飛びつき食べてしまいました。

 そして「カラバ侯爵の城にようこそ!」と王様を迎えます。


 お姫様が三男を好きになったため、王様はお姫様と結婚をさせる事にしました。こうして、三男はゾンビのおかげで幸せになりましたとさ。おしまい。


 ゾンビを猫にすると、そのまま「長靴をはいた猫」のお話になります。ゾンビがこんなに喋るものか! と読んでいて思うのですが、そういや猫も喋らない……と何だか最後には納得出来てしまうのでした。


 次話、スケルトン冥王が堕天使と戯れる?! お楽しみに! 評価や感想をいただきましたら急いで更新いたしますので、お寄せいただけると励みになります。

 少しずつ3章を進めていきたいと思います。現実世界のお話で10話ぐらいになる予定です。気が早いですが4章はカナメンのゲーム内師匠など新キャラが沢山登場します! ゲーム話派の方は楽しみにお待ちください。


 あまり時間が取れなさそうで3月は週に1回ぐらいの更新となる予定ですが、よろしくお願いいたします。GGGの方はもう少ししたら開始いたします。

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