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恋骨!~恋するスケルトン~田中要はVRMMOゲームでスケルトンになって恋をする事にした。  作者: 熊谷わらお
第1章 スケルトンは恋の夢を見るのか? 1話~25話【完結】
4/83

4.田中要は相談をする事にした。

一話完結 恋する着せ替えスケルトン 短編シリーズ

(かなめ)さんは俺の所に来るんだ」

 ミフネが言った。

「カナメンさんは渡しません」

 七味(しちみ)が言った。

「カナメンは俺の言う事だけ聞いとけ」

 赤色(あかいろ)53号が言った。


 VRMMORPG GGL (ジェネシスガーディアンズライフ)。この仮想空間で事は起こっている。

 何でこの様な事になっているかというと、話は長くなる。何で長くなってしまったのかと要は自分を責めたいが、なってしまったものは仕方がない。

 そう、カナメンこと田中(たなか)(かなめ)は失敗をしたのだ。

 最初はこうだ。ミフネこと御船(みふね)健吾(けんご)からメールが来た。本当は1週間も前から来ていたが、確認したのが昨日なのだ。

 それを見て気持ちが悪くなった。一応、御船を擁護(ようご)すると、多分これは普通の内容なのである。しかし、要にとっては甘いババロアに甘いクリームがたっぷりかかったようなとでも言えば伝わるであろうか、単品で食べれば美味しいと感じる物も、一気に食べれば胸焼けを起こす。元々甘い物が得意では無い者にとって、押しつけられた甘い物を無理やりに口に入れられた不快感だった。口の中に広がる気持ちの悪さで、頭が痛くなった。

 ()まりに溜まったラブレターにも似たメールの言葉達が、一気に脳内に押し入ってきた。ゲームがとても好きなのは共通している。悪い人じゃないのも分かる。だけど、その熱意が、甘い言葉の羅列(られつ)となって襲い掛かり、脳を酔わせる。気持ちが良すぎて、気持ちが悪い。


 頭が痛くて冷静な判断が出来なくなった。そう言い訳したいが、選択肢(せんたくし)が2つしか無かったのだ。

『ゲームを一緒に、ってかそうなったら人生も一緒に?』

 そんな口説き文句を説明して理解できるのは、ゲームを遊んでいる人間だけだ。スケルトンを選んだが(ゆえ)に、要がゲーム内で仲が良いのは2人しかいなかった。選択肢は七味に相談するか、赤色53号に相談するのかの2つだ。

 冷静で優しく親身に考えてくれる美少女キャラクターを(あやつ)る七味と、冷酷で優しくなく他人の不幸を面白がる少年キャラクターを操る赤色と、どちらに相談したら良いのかなんていう選択肢はあって無いようなものではあったが、一応2つ選択肢があって、真っ当に考えたら正しいと思われる方を選んだらこうなってしまった。

 つまり、選択を失敗した。


 七味に相談したら、「僕が話をします」そう言った。そんでもって、「カナメンさんを守るため、僕もミフネさんのギルドに入ります」って事になってしまって、そしたら、赤色が「カナメンはいらないが、七味は俺のだ」ってことを言い出して。だめだ、上手く説明できない。


「要ちゃん、女の子キャラクターにしない?」

 ミフネの言葉に七味は声を(あら)げた。

「カナメンさんに失礼ですよ」

「嫌なら断ればいいじゃない」

「断っても付いてくるのは何でなんですか」

 ミフネの返した言葉に、カナメンがツッコミを入れる。

(あきら)めるかどうかは俺の自由だもん」

 ミフネは悪びれず言った。

「なぁ要、どうすんだ要」

「名前を連呼するの止めてください、赤色さん」


 こんな調子で何の解決にも向かわないまま、(ひざ)を抱えて床を見つめるスケルトンの横では、青年と少年と美少女が喧嘩(けんか)をしている。この状態がもう1時間も続いている訳で、取り合われているはずのスケルトンは割と蚊帳(かや)の外である。


「とにかく! これは俺が最初に見つけたのだから、俺に最初の交渉権がある」

 そう自慢げに言う赤色。

「次に七味で、最後がフネで良いな!」

 相手に何も言わせず、スケルトンにも何も言わせず、赤色はスケルトンの手を取り、引きずった。

「重いから歩けバカ」


 しょんぼりと肩を落として歩くスケルトン。その前をイライラしながら不機嫌そうに歩く少年。

「しっかりしろ!」

 時々投げかけられる罵声(ばせい)は、優しさの欠片(かけら)も無いが、あの場から救い出してくれたのは事実で、これ以上の優しさを求めても赤色からは出てこないのは分かっている。


「ギルドは断れ」

「断ってます」

「七味を巻き込むな」

「ごめんなさい」

「お前はどうしたい?」

「わかりません」

「はぁ……」

 赤色は大きなため息をついた。


「座れ」

「はい」

 カナメンは正座をした。正座する骨格模型のようなスケルトンは、何の冗談だと言いたくなるが、至極(しごく)真面目(まじめ)に要のお気に入りだ。


 仏頂面(ぶっちょうづら)の少年のキャラクターは、自分より長身のスケルトンを正座させる事でようやく目線を下げる事に成功した。腕を組み見下すように見ながら言う。

「合コンをしている暇があったら……」

 言いかけて口をつぐんだ。

「あああああ、本当に! 面倒な奴に(から)まれてんじゃねー!」

 スケルトンの頭を乱暴(らんぼう)()でこする。

「一応気を付けろって言っておいただろ! 一応女なんだから! 一応お前みたいのでもさぁ……」

 あまりのスケルトンの落ち込みように語気(ごき)も落ちる。

「大丈夫。何とかするから……な」


 しばらく悩んで赤色はミフネに通信連絡を入れた。

「合同イベントの進行役、代わるからこいつ諦めてくんない?」

『ほんと? じゃぁ諦める』

 ミフネからあっさりと引き下がる返事が返ってきた。

「カナメン、貸しだからな」

 そう言って赤色は肩を落とした。


『デートいつにする?』

 御船健吾からメールが着いた。

『行きませんよ。諦めるって約束しましたよね』

 仕方がないので田中要からメールが送られた。

『ゲーム内では諦めるって言っただけで、ゲーム外では諦めないよ?』

 御船健吾からメールが着いた。


 田中要は読んだけど捨てた。白ヤギさんみたいに、お手紙だったら食べていたかもしれない。


 スケルトン女子「カナメン」と美少女男子「七味」の恋物語です。1話完結でサクサク読める短編にしています。楽しんでいただければ幸いです。

 評価や感想をいただきましたら急いで更新いたしますので、お寄せいただけると励みになります。

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