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恋骨!~恋するスケルトン~田中要はVRMMOゲームでスケルトンになって恋をする事にした。  作者: 熊谷わらお
第2章 笑う門には骨きたる。笑えば肋骨の花が咲く 。 26話~37話【完結】
37/83

37.田中要は封鎖をする事にした。

一話完結 恋する着せ替えスケルトン 短編シリーズ

「スケルトン王を出せ!」

「他の村だけずるいぞ!」

「マフランだけ贔屓(ひいき)だ!」

 あちらこちらの村からやって来たキャラが抗議の声を上げている。


「スケルトン王を村に連れて来ると、商品の開発をするらしい」

 そんな(うわさ)が誰かによってもたらされたためだ。


 ドリームスケルトンランドの扉は閉じられ、開かないように鍵がかけられている。その中で身を小さくして隠れているのはスケルトン男子カナメン。

「この展開前にもありましたよね?」


 ダンジョンでは無くて、ギルド「攻機結戦(こうきけっせん)」ミミミの口を(ふさ)ぐ必要があるのかもしれない。


「やってしまいますか?」

 ファイの眼鏡(めがね)が光る。


 そして、ドリームスケルトンランドの扉が吹き飛んだ。


「橋を落とせ!」

 ファイの言葉に砂浜とダンジョンをつないでいた橋が崩れ落ちる。途切れた橋にスケルトンが連なって、骨の()け橋が出来上がると、その上をファイが渡る。

 渡り終えるとスケルトン達はつながりを断って、ドリームスケルトンランドへの道は閉ざされた。


()りないようですね。プレイヤーと(ゆる)い遊びをしていれば良いのに」

 (あき)れたように言いながらも、ファイの顔は期待に思わずにやけてしまう。何だか悪役度合(あくやくどあ)いが増している!?


「前へ」

 ファイの言葉に応え現れたのはホネタウロスだった。頭に2本の角を持つスケルトン型レイドである。


「レイドとか!!!」


()ぎ払え!」

 ファイが指示を出すと、ゆっくりとホネタウロスは歩き出す。


「レイドを使役(しえき)出来るのが自分だけだと思うなよ」

 エルフ村のMU(ミュー)が手を組み詠唱を始める。

()でよ、ウッドスピリットエコー」

 地面に出来た魔法陣から精霊が姿を現した。それは木で形作られた(けもの)のような姿をしており、背から伸びた枝が羽を形どり、緑色に(しげ)った葉がその羽を(いろど)っている。


 ウッドスピリットエコーはホネタウロスの角を(つか)むと、地面へ押し倒そうと下げおろす。ホネタウロスは右手でエコーの羽を掴み容赦(ようしゃ)なく引きちぎる。

 エコーの背中の羽は急成長をして、ホネタウロスの(うで)(から)みつくと()め上げた。腕は反対方向に(しぼ)るように締め上げられ、骨は鈍い音を立てながら亀裂が入って行く。


 ホネタウロスは左腕を大きく振り上げ、エコーの顔面に振り下ろした。右腕の締め付けが緩んだ所で、左腕を添えて身を(ひるがえ)し回転の勢いを利用して背負うように引き、羽を根元から抜き取った。そして、そのまま身を回転させ向き直ると、勢いを付けたまま奪い取った羽でエコーの顔を殴る。エコーへの大ダメージとなったが、ホネタウロスの右手は腕の途中の亀裂から折れて地面へと落ちた。


 レイド同士の戦闘は壮絶(そうぜつ)(きわ)めた。しかし、戦闘により折れた腕を利用したホネタウロスの攻撃がエコーを切り刻み、戦況はホネタウロスの勝ちを迎える。


 ウッドスピリットエコーが光となって消えたすぐ後に、ホネタウロスは胴体を斬られ、一瞬で光になった。


「レイドを持ち出すとは、少しやりすぎでは無いか」

 そこには、(はがね)のような黒く光る体に、コウモリのような翼が付いたキャラクターがいた。仮面のようになっている頭部により、表情は読めない。

 それは、ナイトメアと呼ばれる種族であった。


ZETA(ゼータ)さん。来てくれたんですね」

 ゼータと呼ばれた男は軽く手を上げてガイドAI達に挨拶をする。


「少しは出来そうな方が来ましたね」

 ファイはマントを外すと地面に置いた。そして、両手を腰の後ろに回すと、ベルト後ろに固定した二刀の短剣を取り出す。


「短剣アルフレッドにリファルスか……」

 ゼータはファイが手にした短剣を確認すると(つぶや)いた。


「魔剣を持ち出すとは卑怯(ひきょう)だぞ」

 周囲から非難の声が上がる。


「複数を相手にしているのです。そのぐらいは許してくださいね」

 ファイが手にしている武器は、英雄の名が付けられている伝説の武器であった。ドリームスケルトンランドに展示されている物である。勝手に持ち出しちゃってます。


「短剣二刀とはキラービーのゼンキの真似でもするつもりか?」

 ゼータの言葉にファイは微笑んでみせる。

「ゼンキの名を知っていてくれるとは嬉しいですが、手加減はしませんよ」


 ファイの返した言葉に周囲がざわめいた。


 ファイが以前やっていた仕事。それは、ボディを持ったAIを殺す事であった。AIを殺す者はキラービーと呼ばれ、()(きら)われている。何故なら、選ばれるのは殺す事に躊躇(ちゅうちょ)が無い者だからだ。冷酷(れいこく)であり、命令に忠実(ちゅうじつ)であり、それに疑問を持たない者だ。

 知能の発達により人間味を帯びていくAI達の中で、人間味を帯びてなお殺戮(さつりく)が可能な者。それは、狂気を持つ。


「ゼンキとやり合えるとは光栄だな。ライズメーティス25ゼータだ」

 ゼータが名乗ると、ファイはそれに答えた。

「ゼンキフェンリル06ファイです」


 一番最初の名がGWI仮想空間でのキャラ名、次がAI系統(けいとう)名、次が識別番号の下2ケタ、最後がタイプ名である。

 GWIとはAIのみが入出できる仮想空間「ジェネシス ワールド インサイド」の略である。AI達は独自の仮想空間で交流を持っている。


「手合わせ願う」

 ゼータの体は(きり)になり消えると、瞬間移動をしてファイの目の前に現れた。ナイトメアは「ミストムーブ」と呼ばれる瞬間移動を使う。


 ファイの腹部にゼータの一撃が入る。体勢を崩した所を殴りと蹴りが連続で顔面に叩きこまれた。

 ファイの眼光(がんこう)は光を増す。(かま)えた二刀短剣が流れるように繰り出された。短剣はゼータを切り裂くが、ミストムーブを(たく)みに(あやつ)るゼータは霧になりながらその攻撃をかわし、致命傷を避けていく。


 ファイは大きく息を吸った。


「聖なる水の精」

 ファイは呪文を唱え始める。


「聖属性魔法だと!?」

 その詠唱を聞いたゼータは驚きの声を上げた。ダークエルフは闇属性のはずだからだ。闇属性の者が反対属性である聖属性の魔法が使えるはずが無いのだ。しかし、ファイの詠唱は止まらず続く。

「聖なる風の精、聖なる土の精、聖なる光の矢をもって、我が意思を示せ」


 ゼータは攻撃の速度を上げた。ナイトメア族は闇に属する。そのため、聖魔法は弱点となるのだ。

 しかし、絶え間なく繰り出される攻撃を全て受けつつ、ファイは詠唱を完成させると、身を翻し後ろに回転して距離を取った。


セイント(Saint)フォール(Fall) ライト(Light)レイン(Rain)!」

 ゼータの真上に現れた光の魔法陣は下へと降りて、足元まで落ちた。それは相手の動きを拘束(こうそく)する効果を持つ。そして、光の矢が雨のように真上から降り注いだ。

 光の矢はゼータの身を幾度(いくど)(つらぬ)く。


「エルフの身に闇の属性を付与しているんです。聖闇属性とでも言えば良いのでしょうかね」

 ファイは2つの属性を持っていた。それは、エルフからダークエルフへの変更がもたらした物だった。


 ファイの右手の魔剣アルフレッドの青白い刀身が、オーラを(まと)い青い揺らめきを見せる。


 ゼータの手中から漆黒の闇が伸び、大型の長剣が作り出された。そして、間髪をいれずにその剣はファイへと振り下ろされた。

 魔剣アルフレッドで受けると(すべ)らせ、すれすれの所でかわす。しかし、長剣の作り出した空気の(やいば)は、ファイの腕を裂き、赤の花弁(かべん)を散らす。


「リボルト」

 左手の魔剣リファルスの鈍く光る赤色の刀身が、赤いオーラに包まれた。続けて詠唱が行われる。

「光を集め、聖なる加護を。その身を持って、目の前の者に否定を」

 魔剣リファルスは周囲から集めるかのように、(きら)めきを渦巻(うずま)かせながら光を刀身へと集約させていく。

 赤いオーラが散るように弾けると、魔剣リファルスのオーラが白へと変わる。


 ゼータは攻撃の手を休めずに、剣を次々と振り下ろした。その度にファイの体を斬り裂いていく。


 ファイが右腕を大きく振った。ゼータの剣が魔剣アルフレッドを受ける。

走天剣威(そうてんけんい)!」

 受けられた短剣の刀身から分離するかのように、剣の威力だけが長剣の刀身をすり抜け、ゼータの身を切り裂いた。


 左手の短剣がゼータの腹に突き立てられる。

ディヴァイン(Divine) インテンション(Intenstion) リロード(Reload) イグジス(Igujisu)タンス(tansu)!」

 リファルスはその身に魔法を込める事が可能な魔剣だ。突き立てられた短剣から魔法が開放される。

 発せられた聖なる魔法はゼータを内部から破壊して、その身を光に変えた。


「火を放て」

 ミューの声が響く。


「炎の意思!」

 ヒートモフの呪文により、ファイの足元に炎が現れる。周りを囲むように炎の渦が地面に描かれて、ファイの移動を不可能とした。


「投下!」

 ミューの指示により、ガイドAI達が一斉にスケルトンフラッシュを火に投げ入れる。が、何の変化も起こらない。


「何で爆発しないの!?」


「スカルフラッシュは我が王の情熱が入っているのだ。店で買えるスケルトンフラッシュと一緒とお思いか!」


 眼鏡をギラつかせながら、ファイが魔剣を構えた。


 逃げ惑う人々と、闇度(やみど)が増したファイが元気に走り回っている。


「スカルフラッシュは爆発するのに、スケルトンフラッシュは爆発しないのか……成分が違うのかなぁ?」

 不思議そうに眺めながらも呆れ顔のカナメン。

「またやってんだって?」

 その横にゲームマスターのTAU(タウ)が現れた。


「困りました。タウさんどうしましょう、これ」

「俺は(うらや)ましいけどな……ゲームマスター同士が喧嘩(けんか)する事は無いし、ガイドとマスターでは要望や不満を言ったとしても喧嘩にはならない。ガイド同士だけだからな、こんな事になるの」

 笑いながらガイドAI達を眺めた。


「みんな活き活きしているし、ゲームの売り上げも上ってんだよね。上としてはしばらくは静観って方針らしいよ、って事で仲裁(ちゅうさい)よろしくな」

 タウはカナメンに向かって言った。


「何で私が仲裁なんですかっ?!」

 カナメンの悲壮な顔に対して、満面の笑みでタウは返した。

「お前がダンジョンを欲しがったのが原因だろ」


 この勝負、今回は「タウの勝ち」かな。


 ブックマークありがとうございました! お楽しみいただければ幸いです。このお話で2章完結となります。お読みいただきありがとうございました。


 10日ぐらいお休みをいただいた後、3章を開始いたします。現実世界が多めになる予定ですので、お仕事を頑張る要の様子を楽しんでいただけたらと思います。

 お休み中にGGGの方をラストに向けて進めていきますので、そちらも読みに来てくださると嬉しいです。

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