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恋骨!~恋するスケルトン~田中要はVRMMOゲームでスケルトンになって恋をする事にした。  作者: 熊谷わらお
第2章 笑う門には骨きたる。笑えば肋骨の花が咲く 。 26話~37話【完結】
31/83

31.田中要は変更をする事にした。

一話完結 恋する着せ替えスケルトン 短編シリーズ

「あのさーやめてくれる?」

 そう言ったのはエルフの少女だった。


 VRMMORPG GGL (ジェネシスガーディアンズライフ)の仮想空間。

 ガラス張りの100階建てダンジョン、ドリームスケルトンランドのカウンターで、そのエルフ少女は長身のエルフ女子を見上げながら言った。


 GGLでプレイヤーが選べる種族は「人間」「獣人」「スケルトン」の3種類である。つまり、このエルフはプレイヤーでは無い。

 何でエルフでは無く、スケルトンがプレイ用キャラなのかというのはGGL7不思議の内の1つで、残り6つは思い付かないので後で書こうと思う。


「どちら様でいらっしゃいますか?」

 長身のエルフ女子、PHI(ファイ)は困り顔で聞いた。


「私の事知らないの??? エルフなのに???」

 非常に高圧的な態度のエルフ少女は、呆れ顔で言った。


 この少女、高圧的なのは態度だけでは無い。片耳に10個ずつ、合計20個ものピアスを付けている。ピアスの重さで()れ耳エルフという貴重な存在となっている。垂れ耳の可愛さを相殺(そうさい)するだけのイカツイピアスたちは、エルフ少女が動く度に音を(かな)でる。


「そっちから名乗りなさいよ」

 他人のフィールドに来ての、この態度である。


「ファイと申します」

 ファイは丁寧に頭を下げた。


「エルフ村の超有名優秀なエルフ、MU(ミュー)でーす」

 ミューと名乗ったエルフは、頭を下げずに言った。


 長い金色の髪、ミニスカートと、それを(おお)う優美な布の服、ロングブーツ。申し分の無い清純派エルフなのに、中身のAIの性格が(ともな)っていないため、すっかりワイルドに改造されている。


「エルフ()めてくんない? こっちに苦情が来るんだよね、迷惑なんだけど」

 (にら)みをきかせたエルフは、おもむろにファイの乳を両手で揉み上げる。


「エルフのくせに乳()り込みやがって……イメージってもんがあるんだよ、エルフは貧乳って相場があるっつの」

 ミューに言われると説得力が皆無(かいむ)だが、エルフの貧乳は良いというのには納得だ。


「何か言えよ根暗。こんなのがエルフとかマジ迷惑」

 ファイに迷惑をかけているミューの方がマジ迷惑なのだが、口答え出来ず、顔を真っ赤にしながらファイは(うつむ)くしか出来ない。


「あの……止めてくださいませんか」

 そう言ったのはファイでは無く、隣でオロオロするスケルトン。


「は? AI同士の喧嘩に口(はさ)んでんじゃねーよ」

 喧嘩というにはどうにも滑稽(こっけい)だが、カナメンとしてはファイを守りたい。


 カナメンは田中(たなか)(かなめ)が操作するプレイヤーキャラクターだ。スケルトン男子ではあるが、中身は女子なので、(こぶし)で片を付けようという発想にはならない。向こうが拳で来るなら話は別だが。


「ってか、あんたこれ作ったゲームマスター?」

「作ったのは私という事になるのかもしれませんが、ゲームマスターでは無いです」

「ふぅーん。ゲームマスターに()び売って作らせたプレイヤーって訳か」


 媚びは売っていないが、売られた喧嘩を買って手に入れたとは言えるかもしれない。


「これもあんたの指示?」

 腕組みをしながら、頭を(かし)げるようにしてファイを指す。


「はい。エルフが好きなので」

「好きなのは嬉しいんだけどさ……エルフじゃなきゃ、こっちは問題無いのよ、うん」

 カナメンの言葉に少し照れたのか、態度が柔らかくなるミュー。


「どういう種族だったら大丈夫でしょうか?」

「どういうってなぁ……んー、ダークエルフとか?」

「ダークエルフも良いですね!」

「白はエルフ村のエルフと勘違いされるからさ、赤でも緑でも良いんだよ色が違えば」

 赤いエルフに、緑のエルフ……いや、何でも無いです。


「勝手に村から出てくるなよ、ミュー」

 その声はゲームマスターのTAU(タウ)だった。

「お前! ゲームマスター呼ぶとか卑怯(ひきょう)だぞ!」

 ミューはファイに食って掛かる。


「エルフは俺が許可したんだよ。あっちとこっちは違うって言っておけば良いだろ」

「そもそもエルフが骨の手下ってのが納得いかねーんだよ! こっちに相談も無くエルフをこんな所に置く方が悪い」

「置いちまったんだから仕方が無いだろ」

「リニューアルするって聞いた! だったら、こいつもリニューアルしろ!」

「誰だよ……その話()らしたの」

「ミミミって奴が言ってた!」

 ミューは一歩も(ゆず)る気は無さそうだ。


「ミミミさん……エルフ村で一体何を話したんでしょう……」

 カナメンは肩を落とした。


 ミミミとはギルド「攻機結戦(こうきけっせん)」の『影の』リーダーである。ミミミの盛った話によって、前にも迷惑をかけられている。


「ダークエルフで譲歩(じょうほ)するからさー、こいつを闇堕(やみお)ちさせてよー」

 ミューは可愛らしく泣き真似をした。多分絶対、泣いてはいない。


「そんな事言われてもなぁ。ファイはどうなんだ? ダークエルフでも良いのか?」

 タウの言葉に困った様子を見せたファイは

「聞いてきます!」

 そう言って走って行った。

「聞くって……誰に……」


 突然やって来たファイに戸惑(とまど)う人物に、ファイは息を切らしながら聞いた。

「エルフとダークエルフ、どっちがお好みですか?」

「どっちも好きでは無いが……」

「どっちかと言ったらで良いんです!」

「じゃぁ……ダークエルフ?」

「ありがとうございます!」

 そう言うとファイは赤色(あかいろ)53号を残して走って行った。


 ドリームスケルトンランドに戻って来たファイは満面の笑みで言った。

「ダークエルフOKです!!!」


 こうして1人のエルフが闇に堕ちた。誰かの一言で……。


 恋するスケルトンはサクサク読める1話完結の短編集です。評価や感想をいただきましたら急いで更新いたしますので、お寄せいただけると励みになります。

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